「藤原征爾君追悼特集に寄せて」ネタバレ感想です。


この気持ちは何があっても隠し通す




【あらすじ】

入社3年目の書籍編集者・宮本(みやもと)は仕事に対する情熱を失いかけていた時、担当作家・藤原(ふじわら)宅で薔田(そうだ)と遭遇する。

わずか3冊の本を出版した後、消えてしまった幻のカリスマ作家・薔田は宮本が編集を志したきっかけとなる憧れの作家だった。薔田の新作を世に出すという目標ができた宮本は、熱心に執筆依頼を始めるが――。

担当の人気作家と憧れの元カリスマ作家の恋を静かに見守る若手編集者、3人それぞれの想いを丁寧に描いた一筋縄ではいかない感動ラブストーリー。

藤原征爾君追悼特集に寄せて (吉池マスコ)



元作家×人気若手作家

元作家×若手編集者




薔田(攻)は、カリスマ性のある作家としてかつて3冊だけ本を出版後、作家業を廃業してしまった44歳。

藤原(受)は、若手の人気作家として活躍。昔、薔田に世話になりそれ以来10年間恋人同士。

宮本(受)は出版社勤務の3年目の漫画編集者。藤原の担当になり、薔田と知り合う。


この3人が出てきますが、厳密にいうと三角関係ではありません。そうなる前に、藤原が亡くなってしまいます。

半分ほどが薔田と藤原の昔話なので、藤原訃報が読んでいるこちらにまでズッシリのしかかってきてつらかった。でも何回か読み返すうち、じわじわと良さが心に沁みてくるような、温かくて優しい三角関係のお話です。

藤原がいったい生前何を考えて宮本を見ていたのか、薔田に対する想いの深さや、時分の病状をどの程度把握していたのか。

半分ほどのページを割いて語られた薔田と藤原の関係が心地よすぎて、いろいろと想像したり考えさせられるお話でした。

上半期のお気に入りBLにランクインさせたくらい好きな作品です。

2015年上半期BLマンガおすすめランキングベスト20

読んでしばらく感想も書けなくて、何回も読み返してしまいました。死ネタなので避ける人も多いでしょうが、隠れた名作の予感がします。



宮本の片思い



廃業してしまった憧れの作家・薔田にもう一度作品を描いてほしいとアプローチするも、まったく相手にされない編集者の宮本。

人気作家の藤原の担当として偶然薔田と知り合い、なんとか作家業を再開してほしいと一生懸命動きます。

しかし薔田は、親の残したアパート経営や土地の管理で食べていくことができていて、作家は廃業した状態。まったくその気がなく、つれない態度を貫きます。

しつこい宮本に、口でご奉仕してくれたら考える、と脅かす薔田。覚悟の表情の宮本に対して、薔田は直前でやめさせてしまいます。

薔田に執筆をお願いするべく追いかけまわしているうちに、いつしか恋に落ちていた宮本。だけど、自分が担当する藤原の恋人だということを知っているから、気持ちを隠し通すという決意をします。



宮本の気持ちに気づく藤原



作家と編集者として淡々と仕事を進めていく日々のなかで、藤原はそんな宮本の気持ちに勘付いていますが特に動じることもありません。

藤原は自分の病状などを知っていたのでしょうか。自分の恋人に思いを寄せる、若くて健康な宮本を見て何を思っていたのでしょうか。

藤原のまなざしが優しすぎて、亡くなるのを知って読んでいるというのに、いっそう哀しみが押し寄せてきて切なくなってしまいますね。。。

隠しているつもりの宮本も、見る人が見ればすぐに分かる状態だったのだと思います。薔田はなんだかんだ、鈍感で藤原にしか興味がないのでまったく気づいていませんが。



薔田と藤原の昔話



薔田と藤原が出会ったのは、まだ薔田が作家だったときで、藤原はかけだしの新人作家でした。出版社の新年会で出会い、藤原を介抱したのがきっかけで飲み友達になります。

家族に作家業を反対されていた藤原は、相談に乗ってくれた薔田の言葉に勇気をもらって実家を飛び出し、家が決まるまでの間、薔田宅に居候をすることに。

そしてつき合うようになった2人。

亡くなる前日まで10年間共に過ごし、そろそろ一緒に暮らそうという話をした矢先の、藤原の早過ぎる死でした。



突然の藤原の訃報



タバコを買いにいった隙に、亡くなっていた藤原。同棲話に照れた表情の薔田の顔も、見直せば見直すほど切なくて胸を締め付けられてしまいます。

藤原の死後ぼんやりと釣堀でたたずむ薔田ですが、藤原の家族には藤原をたぶらかした男ということで嫌われ、最期の時にもそばにいられなかった。

10年来の恋人の死すら今朝の朝刊で知ったという薔田に、立ちすくむ宮本・・・。


藤原の遺品としてパソコンを受け取った薔田ですが、必要ないと編集部に送りつけます。それを返しに行く宮本は酔った薔田に、「また泣かされたいのか」と追い払われますが、めげません。

「僕を泣かせて、それで薔田先生の気が少しでも晴れるならどうぞ」藤原の死に自暴自棄になり、宮本を乱暴に抱く薔田。

ひどい抱き方をするのに、愛などないことも分かるのに、泣く宮本を見ているとまた切なさがこみ上げてきます。



差出人の名前のないメール



その後、宮本にメールが届くようになります。差出人は不明ですが、宮本はすぐに薔田だと気づきます。藤原の追悼特集に寄せてへの、短い文章でした。

急いで宮本が薔田の家へ訪れるも、家はからっぽ。だけどリハビリのように、宮本へのメールは届き続けます。

1年後、ふらりと帰ってきた薔田。なんとか執筆業を再開し、順調に作家として再スタートをきるも、宮本が編集部から人事異動になってしまいます。

つながりがなくなってしまう2人。



薔田と宮本の再会



ある時、偶然宮本は本屋の前で薔田に会い声をかけますが、思いが溢れて思わず泣き出してしまいます。

作家と編集者という関係がなくなってしまった今、会う理由がなくなり疎遠になってしまうことが、宮本には相当つらいことでした。

理由がなくても会いたい。顔を見たい。話したい。だけど宮本はそれを許された関係ではありません。薔田にとってはただの、元仕事関係者。

自分だけが一生懸命好きで、気持ちの持っていき場のない宮本。何があっても隠し通すと決めていたはずなのに、コップの水があふれ出すように大粒の涙があふれ出してとまりません。

藤原が亡くなって、なおいっそう気持ちを隠し通さざるを得なかったのか。薔田を見て、これまで伏せてきた感情が爆発してしまった宮本。

なんで泣くのかわからないまま、宮本を家に連れて行って泣き止むまで肩を貸す薔田は、そこでようやく気づきます。宮本は自分のことが好きなのだと。

宮本のこれまでの言動がすべて理解できた薔田。藤原の訃報から1年以上が経過して、やっと結ばれる2人・・・



よけいなものはいらない



もう少し宮本くんとのことが知りたいとも思いましたが、でももうスピンオフとかはいらないような、不思議な感覚です。この1冊で完結で、よけいなものはもう必要ないのかなって。

藤原先生の死から、宮本くんと一緒に再生していった薔田先生が見られたから、もう満足というか。削ぎ落されていたから胸いっぱいというか。

若かりし藤原先生と薔田先生の過去話がステキだっただけに、いっそう藤原の死が真に迫ってくるものがあって、1度読んだ時は凹みました。

だけど決してそれだけじゃない。

残された人たちがどう生きていくのか、人を失った喪失感はまた人によって埋められていくのだということが、薔田先生と宮本くんを通して伝わってきました。

宮本の話が中心ではなく、まぎれもなく薔田の喪失と再生の物語です。小説を1冊読み終えたような満足感。死ネタは苦手な人にもぜひお勧めしたい良作でした。



得意の深読みをしてみた。



薔田先生、44歳にしては若々しいですね。おじさん攻めというには若い。でも時々おっさんwだけどすごく魅力的です。

薔田が、藤原先生の背中を押したとき、家族の目などを気にしてよそ見しながら書いたものでは何も伝わらない。自分がすべてをぶつけて創作しないと・・・というようなことを言ったのが、とても印象的でした。

もしかしたら著者の先生も、同じようなことを誰かに言われたことがあるのかなあ、とか思ったり。

創作に携わる人って、なにかを突き詰めてゼロからクリエイトするわけですが、それを人に理解されないことだって多々あると思うんですよね。

BL作家さんならなおのこと、まわりの人の理解を得られなかったこともあるのかも。。。

世代が上がれば上がるほどBLなどは理解しがたく、偏見持つ人も多いでしょう。それでも、ありったけをこめて吉池マスコ先生は作品を作ってこられたのかな、とかいろいろと考えながら読みました。



吉池マスコ作品が好きだー!



従来の吉池マスコ先生ファンならぜひ読んでほしいですが、今回初めて吉池マスコ作品を読むのなら、ここから入るとちょっとシリアスでつらいかもしれません。

「俺が世界を救う」「永遠のボーイフレンド」あたりから入るとマスコワールドに合うか合わないかが分かりやすそうです。

「お父さんは悩ましい」も、私は最近のマスコ作品の中ではすごーく好きなお話です。超おすすめです。大好きだー!

はっきりした線の絵と、エロも意外としっかりあってぴりりと切なく、マスコ先生独特のコミカルさがハマる人にはぜったいハマると思います。


藤原征爾君追悼特集に寄せて (吉池マスコ)






吉池マスコ先生のBLコミックス。

お父さんは悩ましい

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永遠のボーイフレンド

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