「はきだめと鶴」のネタバレ感想です。

デビュー作の「ジェラテリアスーパーノヴァ」が鮮烈だったキタハラリイ先生の2冊目のコミックスです。

あまりにも前作がヒットしたためハードルが上がりすぎている中で、さすが驚異の新人作家さん。引き出しの多さを見せつけてくれました。

デビュー作とはまた違った重めのシリアス。だけど決してそれだけではなく曇天の雲の隙間から光が差すのが見えたお話でした。

まさかバッドエンドパターンなんじゃ…と心配しながら読むうちにページをめくる手が止まらなくなります。

それでは以下キタハラリイ先生の「はきだめと鶴」の感想です。

はきだめと鶴 電子書籍



はきだめと鶴 ネタバレ感想


年下ワンコ×訳あり元AV男優


映画館で働く螢(受)に一目ぼれして、毎週日曜のレイトショーに足しげく通っていた準太(攻)

少しずつ言葉を交わすようになり、螢の仕事終わりに待っていた準太はまっすぐに告白します。

一回りも若く純情そうないかにもノンケの準太をホテルに連れ込み、自分が35歳の元AV男優であることを告げた螢。

百戦錬磨の螢のリードでなだれ込むもどこか投げやりな螢は、自分を傷つけるかのように早く準太に幻滅してほしいと内心願っていました。

螢に漂っているあきらめの雰囲気


過去のAV男優の仕事、そこから堕ちていった生活。

何もかもに疲れて無気力に生きてきた螢は、もう人を愛することにも意味を見いだせなくなっていたのでしょう。

螢の年齢は35歳ですが決してそうは見えず、どこか飄々としていてつかみどころがありません。

愛想はいいけれど人を踏み込ませない。人当たりは悪くないのにどこかよそよそしい。

品行方正とは言い難い生き方をしてきた螢の過去と抱えるものの大きさから、今この時を生き生きと生きるということへのあきらめが漂います。

しかし、どんな辛い状況でも決して死を選ばなかった螢の根底にあるの強さには拍手を送りたいです。

壮絶な過去を聞いた準太


過去を打ち明け目の前で淫らに啼く螢に、準太は「綺麗だ」と伝えました。元AV男優であることを知っても一緒にいたいと想ってくれる準太に、螢はさらに自らの過去を語り始めます。

螢は両親との絶縁、さらにホスト時代を経て組のトップの藤場との蜜月関係を築くようになります。仕事も辞め、ペットのように囲われて暮らす日々。

世話役の裏切りからAVの現場に売られ、借金を背負いならが働き堕ちて行った生活。

共に過去を背負いたい。そんなふうに言ったものの、螢の過去があまりに壮絶なもので茫然とする準太。

螢はいつだって生きることそのものには疑問を持ちませんでした。自分で選んできたことがどんな結果になろうとも、それを受け入れる強さがあった。

準太はそんな螢だから「綺麗だ」と思い、どうしようもなく惹かれたのでした。

存在と人生を肯定された螢の涙


死を考えない強さ。どんな底辺の生活にあっても、それでも生きることそのものからは逃げなかった螢のことを肯定してくれた準太に、螢は美しい涙を流します。

裏切られたり捨てられたりして酷い生活を送ってきた過去も含めて、選んできた人生を肯定されたこと。

もう誰かに捨てられることに怯えて暮らさなくてもいい、裕福ではないけれどそこそこな今の生活に新しい彩を添えられる可能性。

準太という希望の光を見つけたことで今度こそ、今まで得られなかった平凡な幸せを螢が手にできると思うと感無量です。

過去を知っても否定せず、人生を肯定して共に生きてくれるパートナーを見つけられたことが、螢の人生の再生となることでしょう。

「この世がはきだめだというのなら、誰かの鶴になりたい」

美しい涙を流す螢と準太の静かな幸せを心から祈りたいと思いました。

はきだめと鶴 感想まとめ


壮絶な過去を抱えて淡々と今を生きるもどこか浮世離れした雰囲気の螢が、準太と出会ったことで大きく揺さぶられました。

準太が離れても決して会わないほうが良かったとは思わない螢は、そうせざるを得なかった過去の自分の選択を悔いてはいません。

準太と螢、お互いがお互いにとって、はきだめでも生きていく価値があると思えるような鶴になれたらいいですね。

裏切られても捨てられても、また誰かを信じられるってとても素敵なことです。

人との出会いやめぐりあわせは縁と運でしかありませんが、人は何度でもやり直せるんだなとしみじみ思いました。

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