デビュー作の「片恋家族」に続いて、ちしゃの実先生2冊目のコミックです。今作は、擬人化された鹿が治める「奈良まほろば」を舞台にしたファンタジーで、鹿×ヒトBLです。
例えるならジブリの大人版のようなふんわりした絵柄と作風で、ファンタジーによく合うかんじです。
メインキャラ以外の描き方も愛があって、でもこなれた感じがして新人さんとは思えません。背景の描き方や小話も含めて手抜きがない感じで好感度大です。
先生はきっと昔からお絵かきが好きなんだろうなあと、なんとなく思いました。
ファンタジーですが摩訶不思議な設定も難しくもなく、スンナリ溶け込むようにこの世界観に入って行けました。文句なしにおすすめです。
サンプル後が予想に反してぐっと深い話になっていっておもしろいので、サンプルを読んで合いそうなら読んでみて正解だと思います。
これって発情?鹿×人BL
久鹿家の次の家長である人型の鹿・白羽(攻)と、その使用人の子である人間の草介(受)の鹿BLです。白羽は人の姿ですが角があるので角BLでもあります。
神鹿が治める「奈良まほろば」では久鹿家は長でもあるので、身分差BLともいえますね。白羽と草介は幼馴染なので幼馴染BLでもあり、いろんな方面で満足できる1冊かと思います。
なんといっても私は人の形をした獣の中でも、白羽のようなビジュアルが好みで好みで(告白)
「白髪のやわらかそうな髪質の長髪で、耳(角)がある美しい青年風の獣」という容貌に弱いんです。強いという設定があればなお良し。
というわけで、この白羽のビジュアルには大満足で、ツボりながらニヤニヤと読みました。
切な苦しい両片思い
ポイントは両片思いです。この2人はどう見ても両思いなんですが、お互いがお互いに遠慮したり自制したりと、なかなかくっつかない。くっつけない。
草介のほうは、白羽は家長なので家の繁栄のために女性と結婚しないといけないし、そもそも使用人と次の家長という身分差がある。
そのため白羽に対してそっけなかったり突き放したり、ちょっと嫌な奴に見えるようにふるまっています。ひねくれた性格ですが、本当は白羽のことを大切に想っているというツンデレ。
対して、白羽のほうは自分の感情を持て余し気味で、草介に尽くしながらもつい襲いかかってしまったり、でも強引なことはできないしすぐ反省するし、不憫なヘタレです。
喧嘩したりすれ違ったりしながら、切なくなるほどに2人は葛藤し苦悩します。この2人の距離感が最高で、きゅんきゅんするわ萌えるわで心をもってかれます。
苦しむ姿になぜか妙な色気を感じるのも不思議なところです。苦悩する姿はエロスと繋がっているのでしょうか。謎です。
イロイロあったワケありラブ
草介は捨て子で、白羽の父親に拾われて使用人の息子になったんですが、幼いころから白羽のほうはズケズケ真実を言う草介に惹かれています。
幼少期に「なんでついてくるんだ、ドMなのか?」とか言われながらも、チビ草介にくっついていくチビ白羽がかわいいです。
がしかし!実は昔、草介を助けるために白羽がその力を失ってしまったという過去がありました。草介はこの時の記憶があいまいなのですが、草介の額の傷の秘密として作中でそれが明らかになります。
これ、一番嫌なやつですよね。自分のせいで誰かが犠牲になるという。真実を知った草介はある決断をしますが白羽はそれをもちろん拒みます。
最後には2人とも素直になって激甘エロに突入しますが、ここに行きつくまでの過程が丁寧に描かれていたのでストレートに感動しました。
よかったよう、2人とも。これから今までお互いに抑えていた分、散々エロいことするがいいよ。
草介には弟の景太郎がいますが、この景太郎がお兄ちゃん大好きっ子で、白羽と競うように草介になついているといういい味のキャラもいました。
恋愛だけじゃなくて家族愛も描かれているし、まるごと1冊表題作で非常に読み応えのあるお話でした。
ちしゃの実先生、この寒い時期にあったかい気持ちをありがとうございました。個人的にすっごく好きなお話で、お気に入りの1冊になりました。
3冊目のコミックスも楽しみにしています。
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— 日高(ちしゃの実) (@hidaka0104) 2015, 12月 17
ちしゃの実先生のデビュー作。
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