三崎汐先生の「ゴクラク305」ネタバレ感想です。

子供向けの童話ですと言われても違和感のない、ほんわかした雰囲気の表紙の通り優しいお話でした。

大学寮の同じ部屋で一緒に暮らす、高校からのつき合いのカップルのほっこりラブストーリーです。

また、スピンオフでもない限り、当て馬くんはだいたいかわいそうなまま放置されることも多いですが、ここでは後半でしっかり愛を見つけるので、みんなが幸せになれてホッとできます。

三崎汐先生の5冊目のコミックスですが可愛らしい絵柄は健在で、みーくん(受)の弟たちがぎゃんかわでした。ちなみに先生のお名前は「みさきうしお」とお読みします。

三崎先生は子どものキャラ絵がとってもかわいいのでファミリーものなんかも向いてそうですね。



地元を離れ大学寮の305号室で一緒に暮らすおーすけ(攻)とみーくん(受)は、高校時代からおつき合いしてもう3年目。

2人が知り合ったのは小学生の頃。綺麗な顔立ちとは裏腹に人と話すのが苦手なおーすけに、明るく人気者なみーくんが優しくしたことがきっかけで、おーすけはみーくんを好きになります。

高校時代におーすけの押しもありなんとなく流れでつき合いが始まりましたが、みーくんの意向によって2人の関係は周囲には内緒。

みーくんは頑なにカミングアウトするのは避けていますが、おーすけのほうはもう隠したくない。だけどみーくんの気持ちを大切にしてみーくんに合わせています。


寮の305号室の部屋の中だけが、誰の目も気にせずに恋人としていちゃつける、2人だけの秘密の空間。

幸せをかみしめるおーすけですが、そこへやってきたのが面識はないけど同じ高校の後輩だった樹くん。

2人部屋だったのが3人部屋になってしまい、さすがに同室の子には隠せないとおーすけは思いますが、みーくんはやっぱり渋い表情です。

樹くんが案の定みーくんを好きになり、おーすけのライバルになるわけですが、樹くんの登場によりこれまで抑えてきた感情と向き合うことになるおーすけとみーくん。


おーすけの方は、みーくんを好きな気持ちが強すぎるがゆえに、何があっても一緒にいたいのに遠慮したり、気を遣いすぎたりしてしまうようなところがありました。

人間だから不安も感じるし不満もあるはず。ましてや他人同士のつき合いだから、気持ちはことばにしないと伝わらない。

だけどみおーすけはみーくんのことを失いたくないから、つい自分の気持ちを抑圧してしまっていたのでしょう。

みーくんの方も「同性愛者になるのが怖い」「男が恋人だと認めたくない自分がいる」という本音が溢れ出てきたり、これまで閉じられた空間で暮らしていた2人がお互いの本音に向き合いはじめます。

2人きりだった時にはお互いにうまく自分の気持ちを伝えきれていなかったおーすけとみーくん。

樹くんという第三者の介入により別れの危機にも直面しますが、図らずして樹くんの登場がいっそう強く2人を結びつける結果になったのでした。


そしてこうなるとかわいそうになるのが樹くん。

実は樹くんは高校の頃にビッチな恋人(男)との辛い恋を経験して以来、特定の恋人を作らずに適当な人と遊ぶ日々を送っていました。

その元カレの登場により、樹くんはズルズルとまた引きずり込まれそうになるのですが、樹くんは今度は選択を誤りませんでした。

新しく好きになった人(バツイチ子持ちの砂木さん)にぶつかって受け入れられ、ようやく幸せになれそうな樹くん。

なんかこういう薄幸キャラは不憫で、ついつい頑張れと祈るような気持ちで応援したくなって感情移入してしまいますね。

もうフラフラしないと決めた樹くんは周囲の人の愛情にも気づきはじめて、1歩も2歩も成長した姿を見せてくれました。

今後砂木さんとだってきっといろいろあると思いますが、砂木さんは大人だしきっとうまく樹くんを導いてくれるはず。

どの漫画もそうですが、悪い子じゃない当て馬くんに少しでも感情移入しちゃうと、本編ではその後が描かれないことが多いので、幸せに向かってくれるとホッとします。


ところで今回、樹くんの双子の姉の衣都子も出てくるんですが、大学生にしてもうひとり焼肉できちゃうとか、15歳以下の男の子にしか興味がないとか、弟の相手が男かどうかということよりも相手の体毛の量が気になるwとか、なかなかファンキーでいいキャラクターでした。

最初はおーすけとみーくんを邪魔する典型的なBLによくいる女の子かと思いましたが、そうじゃなかったところがおもしろいです。

正直、はじめの頃は若干イラッとしましたが実際のところが分かってくると、こちらはくすっと笑えて実は弟思いのお姉ちゃんということで好感度アップ。

弟ラブすぎてちょっとやりすぎなところもありますが、高校時代の暗黒の弟を知るがゆえの愛情だったんですね。。。

あと、好きだったのが歯磨きシーンが多いところ。私は食事とか洗濯とか歯磨きとか生活感を感じさせるシーンってけっこう好きです。

おーすけが歯医者さんの息子ということでの歯磨きシーンなのですが、やっぱり歯医者さんの息子なんだなあと微笑ましくなりました。

子どもの頃のおーすけが、父親のところに歯の治療に来たみーくんと一生懸命おしゃべりしているのもわいかったです。話すのが苦手なおーすけが、メモ帳にネタを描きとめておいたりとかいじらしくて素敵でした。


また今作ではカミングアウトについても少し考えさせられたりしました。なんでもかんでも公にするのが幸せではないけれど、言うべきことなのか伏せておいた方がよいのかは誰にも正解が分からない。

きっと、おーすけとみーくんも今後学生から社会人へと人生のステージが進むにつれ、まだまだ葛藤して模索していくことでしょう。

ただ唯一ハッキリとしているのは幸せになる権利は誰にも等しくあるものだということ。

結局おーすけとみーくんはまだカミングアウトしていませんが、本編にあった2人の心境の変化や雨降って地固まるような関係の変化は、まわりの人達にも伝わっていくと思います。

2人を傷つける人が今後現れても、味方になってくれる人もきっといる。そんな人がおーすけとみーくんの周りに1人でも多くいることを願ってやみません。

三崎汐先生の次回作にも期待しています。

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