まず雨降る中に1つの傘に収まる黒瀬くんと城谷さんの2ショットの扉絵は、ブルーカラーが儚く美しく雨上がりの青空を期待させます。雨が上がれば――2人の関係もいっそう深まると捕えてよさそうです。そうであってほしいな。
本編では黒瀬くんの過去回に入りましたが、城谷さんと合体している真っ最中の回想です。そういえば2人が黒瀬家でにゃんにゃんしてる今も外は大雨で、雨の中あの城谷さんが黒瀬くんを追いかけて濡れて走ってきたのでした。
初エッチに突入してもう雨なんか超どうでもよくなりましたが、この2人は数時間前まで大雨と雷のための停電でエレベーターに閉じ込められてたんだった。忘れてた。
この扉絵で城谷さんが前を向いて黒瀬くんたけが背後を振り返っているのは、本編が黒瀬くんの過去回であることを象徴しているのでしょうか。
復習用に前回29話の感想はこちら。がっつりネタバレしているのでご注意ください。
テンカウント29話ネタバレ感想 ディアプラス4月号
それでは以下30話、黒瀬くんの過去回の続きからのネタバレ感想です。テンカウント5巻の内容になりますのでどうぞお気をつけください。
「俺が居るじゃん」
黒瀬くんの言葉に驚いたような表情を見せつつも、軽く笑って流す西垣さん。黒瀬くんの言葉を深く受け止めてはいない様子です。弟が居たらこんな感じなのかも、と黒瀬少年のことを兄弟のように思っています。
西垣さんは、黒瀬くんがただのいたずら好きな悪ガキではないことは気づいているようですが、なんで自分の家になど入り浸るのか、どんな家庭環境にいるのかなどはよく分かっていません。
西垣さんからすれば、家政婦さんがいるような家庭で育ち、身なりも持っているものも上品な黒瀬くんのような子供は、一見幸せで恵まれた子どもように見えるのかもしれません。
黒瀬くんも自分のことをペラペラしゃべるタイプではないし、西垣さんは黒瀬くんがなぜ窓ガラスを割ったのか、両親との関係なども何も聞いていないようです。
しかし自分の家に入り浸る黒瀬くんを引きこもりにするわけにはいかない、と考えている西垣さん。
自分と一緒にいると黒瀬くんが外に出なくなり、自分と同じように閉じられた世界に籠ってしまうと危惧する西垣さんですが、当の黒瀬くんはそんなこと微塵も感じていません。
不器用ながらも自分を拒否せずにそばにいてくれて、自分を受け入れてくれる西垣さんとのこの密室の関係が、黒瀬くんにとっては何より心地よくて失いたくないものでした。
家庭では得られない幸福感を感じていた黒瀬くん。この場所を、この人を、失いたくない。「今のままでいい、外にいいことなんかないよ」とポツリ。
そしてチラ見せの通りに「俺だけが『特別』なんじゃないの?」と重ねる言葉の重さに、西垣さんは怪訝そうな顔を見せます。
すると突然、黒瀬くんに押し倒される西垣さん!そのままシャツをたくしあげ身体を舐める黒瀬くんに驚愕した西垣さんは、当然のように黒瀬くんを押しのけます。
大人の力と子どもの力ですからね。馬乗りになったところで簡単にどかされてしまう黒瀬くんの少し傷ついたような表情が哀しいです。
ただその瞳はまっすぐに西垣さんを捕えており、そんな黒瀬くんの眼差しに一瞬ゾクッとして怯む西垣さん。
黒瀬くんを家から追いだした後、西垣さんは部屋で頭を抱えます。生意気な弟がなぜか懐いてきた、くらいに思っていた子どもに、まさか襲われかけるという衝撃は計りしれないものがあったでしょう。
翌日、懲りずに西垣宅を訪れる黒瀬くんですが、窓にカーテンが引いてあるのを見てチャイムを押さずに立ち去ります。
西垣さんには以前から「カーテンが閉まっている時は寝てるから来るな」と言われていて、黒瀬くんはそれを律儀に守っているんですね。言いつけを守るあたりは、黒瀬くんの小学生らしいところでもあり育ちの良さを感じさせます。
しかし自宅に帰っても母親は家におらず、テーブルにはお金と出前を取るように書いたメモがあるだけ。大きな家でひとり出前をとり食事する黒瀬くん。外にいてもいいことなんて何もない、と再びひとりごちます。
学校帰りに行くところもなく、本屋さんで西垣家で読んだ小説家の新作が出ているのを見つけた黒瀬くんは、買って帰って読み始めます。
すると深夜0時を回り、母親がようやく帰宅。どうやら息子を放置して友達と遊んだ帰りの様子。そんな母親ですが、黒瀬くんは今読み終えたばかりの小説を「おかあさんが読むかも」と母親に声をかけます。
こんな家庭にいても、どれほど親が自分に関心がなくても、子どもは親を求める生き物です。こっちを向いてほしい、かまってほしい、認めてほしい、愛してほしい。
いじらしくて健気な黒瀬くんに、ほんのわずかでもお母さんが関心を向けて温かく関わってあげてほしいところですが。。。
しかし母親は、この本の作者の話を以前食卓で黒瀬くんがしたことすら覚えていませんでした。せっかくの本も突っぱね、黒瀬くんのことを理解しようともしない母親。
そこへ父親も遅い帰宅をはたします。父親の方は黒瀬くんの持っている小説がベストセラーであることに気づき、大人びた本を持っていること、誰かに借りたのかと問いかけますが――。
というところでテンカウント30話が終了です。
表情さえもうあまり大きく変わることはありませんが、またお母さんに関心を持ってもらえなかった、また真剣にとりあってもらえなかった。。。そんなふうに感じているであろう黒瀬くんの寂しさや孤独は、暗く黒瀬くんの心を蝕んでいることでしょう。
今まで何度も何度もこんなふうに絶望してきたであろう黒瀬くんが不憫で、なのにまた親を求めてしまういじらしさも併せて辛いです。
両親ともに息子に手を挙げるでもなく特別に当たりが強いわでもないため、周囲には見えにくい崩壊したいびつな親子関係。
父親のほうは、この号のラストでは黒瀬くんに少しは関心を持っているような雰囲気ですが、しかしこの父親に対する黒瀬くんの返事次第では嫌な予感しかしません。
もし黒瀬くんがちらっとでも西垣さんのことを話してしまえば、世間体を気にする父親は引きこもり青年の西垣さんと息子の関わりを阻止しようとするでしょう。
黒瀬くん、ここは黙っているべきだよ!と祈らざるをえません。賢い黒瀬くんだから大丈夫かな。それとも父親との会話が嬉しくて、つい西垣さんのことを話してしまうかな。ああもうハラハラします。
この父親からしたら、西垣さんのような得体のしれない引きこもり青年の家に息子が出入りしているという噂が流れるだけでも嫌がりそうです。
ひと悶着あって引き離されるか、西垣さんのほうから離れるか。まあこのまま何事もなくフェイドアウトして離れるハズはないですね。
西垣さんと黒瀬少年の間に、黒瀬くんの歪みの決定打になるような大きな(不吉な)何かがあるはず。黒瀬くんの今後を大きく左右するような何かが。ガクブルですが。。。
いやあああ西垣さんっ今もどこかで生きていておくれよおおおお!
また、30話ではは西垣さんを押し倒す黒瀬くんの勇姿も拝めました。小学生にしてすでにいい大人の男を押し倒せる黒瀬くんのポテンシャルに驚愕。まさかのショタ攻めが眼福でした。
黒瀬くんはどこでそういう知識を得たのか、はたまたもともと素質があったのか、小学生にしてすでに仕上がったいい攻めしてます。西垣さんが抵抗しなかったら最後までやっちゃってたでしょう。
親からは「特別」であると大切にされていないことから、自分だけが「特別」であることを西垣さんに求める黒瀬くん。
確か城谷さんにも「歪みながら自分だけを受け入れてくれる城谷さんが好きです」とか言っていたし、自分“だけ”を受け入れてくれる人を幼少期から求めていた黒瀬くんの歪みは根深いものがありますね。。。
まさかのショタ攻めする黒瀬くんの姿を見ることができた30話でしたが、この後ふたたび西垣さんが黒瀬くんと会うとき、どんな会話をするのか。西垣さんはどう出るのか。
今まさに城谷さんとエッチ中に西垣さんのことを思い出すということは、西垣さんとも一度はそういう関係になったという可能性は高いです。
西垣さんとしちゃう黒瀬少年か。。。ごくり。怖いようなワクワクするような変な気持ちです。見たいような見たくないような。いや見たい。
展開として西垣さんが不潔恐怖症になるに至った経緯も描かれるでしょうか。さすがにそれは話が広がりすぎるかな。軽くは描かれても良さそうな気がします。
ドラマCDの4巻が2016年6月30日に発売決定しましたし、次号2016年5月14日(土)発売のディアプラス6月号もまた楽しみです。
ではまた31話の感想でお会いしましょう。
追記)31話の感想を書きました。
テンカウント31話ネタバレ感想 ディアプラス6月号
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