夏目イサク先生の新刊BLは歌舞伎界を舞台にした御曹司2人の成長記です。まだ1巻ではBがLしているとは言い難い2人ですが、一方でどう見てもいちゃついている高校生御曹司を優しく見守りたいお母さん願望にかられました。
チューもしていないのにもうYOUたち付きあっちゃいなよ!と言いたくなるような、こちらが赤面するようなじわじわっぷりが微笑ましくて、さすがの夏目イサク先生、安心安定の面白さです。
私のような庶民からは計り知れない歌舞伎という特殊な芸事の世界で、お家柄という大きな看板を背負い、幼少期から厳しい稽古を積んできた2人が良きライバルとして影響し合って生きていく姿には、素直に観客席に座るモブとして応援したい気持ちになりました。
歌舞伎用語も出てきますが難解な言葉も極力削られていて、解説もくどくないので歌舞伎の素人にもすんなり入っていきやすかったです。
花恋つらね 電子書籍
花恋つらね1巻 感想 ネタバレあり
歌舞伎役者の御曹司×御曹司
若手女形役者の惣五郎(受)は歌舞伎の名門・玉乃屋の御曹司。家柄だけでなく容姿にも恵まれ通っている高校にもキャーキャー言ってくれるファンもたくさんいます。
子どものころから歌舞伎役者として稽古を積み雑誌やテレビで取り上げられるなどそれなりに人気も知名度もありチヤホヤされてきましたが、ある舞台の大きな役でいま一つ良くない評価を受けてしまいます。
行き詰まってしまいひと皮むけない自分に対して凹む惣五郎。自分の評判をネットでエゴサーチをして凹んでしまうとか、さすが現代っ子ですね。
名門の息子という期待もあって芸には厳しい世間の声。伝統芸能の世界は特に見る目が肥えている人が多そうです。惣五郎本人としても偉大な祖父を持ったプレッシャーもかなりのものでしょう。
落ち込むピュアで素直な惣五郎
芝居を見た人の口コミを見てダイレクトに落ち込んだりはするものの、世話係の忠さんに励まされたり学校に出向いて友達と話すと少し持ち直したりと、惣五郎は基本素直でピュアです。
調子に乗るところはあっても芸と向き合い改善しようとする前向きなところはとても好感が持てます。
そんな惣五郎のお相手になるのは新井源介。こちらも名門・大谷屋の御曹司で若手有望株の高校生です。学校では2人が同級生というのも美味しい設定ですね。
惣五郎は昔、源介の芝居を見て圧倒されたという経験から一方的にライバル心をむき出しにしますが、源介のほうは最初から惣五郎に好意的です。
惣五郎のファンだと言っていますが、自分の部屋にこっそり惣五郎の幼児期の写真や雑誌の切り抜きを保管していたりとかなり筋金入り。
惣五郎に足りないものは色気
そんな2人が舞台で共演することになり、惣五郎は練習でまたも源介の芝居のすごさを間近に感じ取ります。
役に入ったときの源介についていくのに必死な惣五郎ですが、負けじと自分なりに役柄の背景を勉強したりと一生懸命食らいついていきます。
そんな惣五郎に足りないものはズバリ色気。男が女を演じる歌舞伎という世界には、そなりの色気というものが欠かせません。
色気ってそもそも出そうと思って出せるものではなく作ろうと思って作れるものではないですよね。
その人の人柄や育ち、立ち振る舞いや所作からほのかに香り立つのがいわゆる色気というもので、一朝一夕で手に入るものではありません。だからこそ難しい。しかし芝居には必要不可欠なものです。
このご時世では女遊びもむずかしい
周囲の大人たちは遊べなどと言うものの、このご時世ではそう簡単に女遊びもできません。マスコミ対策もでしょうが昔よりもずっと世間の目が厳しくなっています。
しかも惣五郎はまだ10代の高校生。週刊誌に撮られ大げさに女遊びをおもしろおかしく掲載されたら、名門の名に傷がつくどころか惣五郎の将来にも差し障るかもしれません。
もうすでに歌舞伎界の人気者ゆえに交際には慎重にならざるを得ないということでしょう。
意識し始めた途端にドキドキ
役柄の気持ちを頭で考える惣五郎に源介は心で感じることが大切だとアドバイスします。
夫婦役を演じるということもありぎゅっと抱きしめて実践する源介に、役を掴みながらもドキッとする惣五郎。それ以降、惣五郎は源介の言動を何かと意識し始めます。
2度目の舞台に合わせて一緒に練習したり学校でもつるむようになり少しずつ親しくなっていく2人。
惣五郎は源介の言動に対して何かにつけて初々しい反応を見せますが、まだ自分の気持ちに自覚はありません。少し戸惑うという程度です。
源介のほうはというと惣五郎が慕う武兄に嫉妬心をむき出しにしたり、思わず「惣五郎の一番になりたい」という本音を言いかけたり(未遂)こちらはもう最初からダダ漏れ状態です。
こんなに惣五郎に執着するということは、源介も昔惣五郎の舞台を見た時のインパクトが相当大きかったんですね。
俺のこと好きすぎるだろ
源介の家は亡くなったお祖父さんは人間国宝クラスで歌舞伎界の中でも屈指の名門。源介は惣五郎以上に厳しい環境で育ち、だからこそ半歩先を歩いている。
源介は自分が大変だったときに刺激をくれた惣五郎と肩を並べて芝居がしたいという気持ちから、惣五郎への好意を隠そうとしないのかもしれません。
しかし惣五郎のほうは、源介の気持ちを「俺のこと好きすぎるだろ」とどストレートに指摘するも、ファン心理の延長くらいに思っている様子です。
惣五郎は消してニブチンではないと思うんですが、このアンバランスが絶妙で萌えます。特に後半だんだん惣五郎の赤面が増えていくのがかわいくて見ていてニヤニヤ。
この危うい均衡とラブに関しては惣五郎が自分の恋心に気づくと同時に動いていくんだろうな。
若い頃から偉大な先人たちに囲まれ伝統芸能の世界で己の芸を磨き、一人前になろうと切磋琢磨する関係にある高校生の成長物語としても秀逸だなあと思いました。
ところで御曹司の2人が学校で浮かないのは、通っているのが芸能コースでクラスメイトも俳優やモデルなどの芸能人だからなんですね。
芸能科って想像でしかありませんが華やかで売れっ子かどうかはともかく今をときめくイケメンと美少女しかいない学校とか、もういろんな意味ですごそうで妄想を掻き立てられます。
まとめ
芸能界がらみのBLでは、くっついてからスキャンダルとして写真誌に撮られたりしないかといつもハラハラするのですが「花恋つらね」はどうなるでしょうか。
火消しが大変だし伝統を重んじる梨園の世界って特にそういうのに厳しそうだし、ご贔屓筋の顔色も窺わなきゃいけないし、カミングアウトなどしようものなら周りの大人たちが2人を引き離そうとするんじゃないかなあ。
高校生なんて、お金を持っている大人のやることには歯が立たないですもんね。ましてや上下関係やしきたりに厳しい世界のことです。
晴れて恋人同士になった後は、惣五郎と源介は細心の注意を払って当面は静かに芸事を極めるべく修練に勤しんだほうがよさそう。
打ち明けるにしても成人して名門の看板に恥じぬ役者となり、名実ともに文句のつけられない立場になってから…などといろいろ考えてしまいます。
ああでもそうなると今度はお世継ぎ問題が…。余計なお世話ですね。知ってる。その前にこの2人まだくっついてもいませんでした。
個人的には武兄のビジュアルがなかなか素敵な点と、最後のシャチのぬいぐるみの取りあいをする男子高校生2人がかわいかったです。今後は惣五郎の世話係の忠さんがさりげなく2人をフォローしてくれたりするといいな。
まだ2人とも高校生ということもあり今後は未知数ながら、良い刺激を与え合いつつ厳しくも奥深い芸事の道を突き進み、納得の舞台を作り上げていってほしいと思います。
役者としてはもちろん、10代の男の子たちのひとりの人間としての成長記としても楽しみにしています。ラブのほうももちろん、早いとこあんなことやこんなことをできる関係にまで進展しますように。
追記)2巻の感想も書きました。
花恋つらね2巻 ネタバレ感想
夏目イサク先生のBLコミックス
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