ARUKU先生の新刊BLはこれぞARUKU節炸裂の世界観で、じっくりじっくり1歩ずつ近づいては離れる2人距離感がたまらなく甘酸っぱくて身悶えしてしまいました。
全体の1%にあたるといわれる恋愛感情や性的欲求を抱かない「無性愛者」を主役の受けにもってきたため、なかなか攻めとくっついてくれません。
しかし何か起こるたびに描かれる微妙な心理描写が丁寧で、切なさや戸惑いなど心境の変化が余すところなく伝わってきます。後半で思いがつながるまでの流れは、静かなのに一気に押し寄せてきて胸に迫りました。
少女漫画のような大きな瞳に長いまつ毛といった絵柄の美しさに加えて、誌的な表現も多いのが特徴です。なのにギャグちっくな軽さもあり最後まで一気に読み終えてしまいました。
上司と部下として2人きりのセキュリティルームで仕事をする中、日夏は蘇芳に対して好意を隠さずにぶつけてきます。毎日毎日好きだ愛してると猛烈に迫ってくる日夏にうんざりする蘇芳。
実は日夏は10年以上前の男子校時代にフッた後輩で、蘇芳のほうはそんなことはすっかり忘れていましたが、日夏はずっと覚えていて蘇芳のことを長年想っていたのでした。
日夏の告白に対して蘇芳は「おえっ吐きそう」という酷い一言を放っていました。うわあ…好きな人に思い切って告白したら嫌悪感丸出しでこんな言葉をぶつけられたら誰だってトラウマレベルに傷つきますよね。
でも高校生の日夏はめげずに自分を鍛え、身長も伸び男らしく成長した姿で蘇芳に再会。情熱的に、ストーカーのように蘇芳を追いかける日夏ですが、蘇芳には無性愛者なのでちっとも響きません。
しかし同じ社宅に住んでみたり好みを完全に把握していたりと熱烈にアプローチされるうち、いつしか蘇芳は日夏の言動を気にし始めるようになっていきます。
他のとこと話しているとおもしろくないと感じたり、クリスマスのプレゼントを選んでみたり。日夏のペースに巻き込まれるうち、自覚のないままに少しずつ日夏との生活に馴染んでいく蘇芳。
日夏は多少やり過ぎなところもありギリギリを攻めていますが、あまりにもまっすぐに蘇芳に向かっていくものだから何だか許せてしまいます。
プレゼントしたぬいぐるみにGPSを仕込むとか、結局それが2度も蘇芳を救ったからギリOKですが本当はアウトですからね(笑)
蝶のくだりでロマンチックな一面をのぞかせ、ホテルでは一緒に眠るも紳士にふるまったりしていた日夏が、蘇芳への本気の気持ちをバカにされてブチ切れ「俺のフル勃起したペ○スを見せてやろうか!」「抱くぞ!」と蘇芳にダイレクトにぶっこんできたりと、その落差はなかなか素敵でした。
部下に怒られて涙目になる蘇芳もかわいいですが、結局蘇芳の心が欲しいと手を出さない日夏はやっぱり爽やかな紳士です。
蘇芳の鉄壁のガードがほころび始め、はたから見たらいちゃついているカップルか夫婦のような距離感になっても相変わらずツンな蘇芳。そんな冷たい態度にもめげずに、一途に蘇芳を想い続ける日夏の姿勢もかっこよかったな。
あんなにツンツンされてもまだ情熱を失わないというメンタルが強すぎますね。腹をくくっているような感じがいっそ潔いです。
日夏が実はバツ3という離婚歴があるという過去にはびっくりしましたが、これには納得の日夏らしさが隠されていました。
ARUKU先生の絵柄だと目が大きくてキラキラしてるからよけにそう思うのかもしれませんが、蘇芳も日夏もまつ毛がついつい見入ってしまうくらい長くてキレイです。特に下まつ毛。いいなー。
マスカラが必要ないとかうらやましいです。リアル男性で下まつ毛が長い人なんてそうそう見かけないですが、二次元だと本当に王子様っぽくなりますね。
細かいところではスーツのしわや服のしわまでしっかり書きこまれていて、手抜きがないなあいう印象です。200ページ超えと読みごたえもありました。
エロはちょこっとだけなので、2人の関係がうまくまとまるまでのストーリーをじっくり楽しむ作品としてお勧めしたいと思います。
もうセフレとか肉便器とかとにかくハードなガツガツエロスにはちょっと疲れた人や、誌的な表現やロマンチックな世界観を好む人にはぜひおすすめです。
ARUKU先生のその他BLコミックス。
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