あーもう好きだあ!尊い!生きる!と叫ばずにはいられない傑作です。「ふたりの熱量」に収録されている「右か左か」の続編ですが、40代のおじさまとはいえ容姿もボディも若々しく、かといって無理のない若さなのが絶妙なさじ加減です。
お約束のベッドポジション争いもじゃんけんで決めるとか、何事も深刻すぎないのがこのカップルの良いところで、20年という長い期間の親友という強みが存分に生きた楽しいお話でした。
ラブコメと見せかけてストーリーもぐいぐいと読ませるという、肩の力の抜け具合と落ち着きのバランスが一級品で作家の実力を感じさせます。いやあまいった!好きすぎる。橋本あおい先生バンザイ。最高のおじさまBLをありがとうございます。
しかし「どっちがどっちに突っこむか問題」いわゆるベッドでの上下に勝負はついていません。(「ふたりの熱量」のラストで気になっていた勝負は引き分けだった)
お互いに入れられる方は考えていないため、結局じゃんけんで決めることになり、初回は北條の勝利。頭を抱えて打ち震える南海が必死で笑えます。
指だけだぞ!とビビる南海に、きちんとほぐして気持ちよくさせようと大人の対応の北條は、殺し文句も忘れません。北條ってこんなキャラだったんですね。最高。
じゃんけん2回戦も北條の勝利で、俺こんなにじゃんけん弱かったっけ!?と絶叫して崩れ落ちる南海がツボです。しかし3回戦はまさかの北條の負け。往生際悪くなんとかごまかそうとする北條を逃すまいと、変なハイテンションになっている南海がまた笑えました。
もしかしてリバかなと思わせておいて、北條は後ろで感じることができず形勢逆転。これにてベッドでの上下関係は北條×南海に決定しました。めでたしめでたし。「右か左か」を読んでからずっとどっちが右か気になっていたので、これでようやくすっきりしました。
「ふたりの熱量」のあとがきに、どこかでこの2人の決着をつけたいと描かれていましたが読めて良かったです。あの終わりかたに悶々としていたので、あの後こんなことになっていたとはもう頬がゆるみっぱなしです。
ベッドポジションばかりに目が行きがちですが、一緒に暮らすにも同じ会社の同僚なので会社に届け出が必要でそのあたりをどうするのか、親や家族や友人へのカミングアウトなど考えなければいけないことが山積みの2人。
しかし若さゆえの行き過ぎた情熱から哀しい別れを選んでしまったり、募る想いをもてあまして自分のたちを追いつめすぎるということなく、40代という大人の男として落ち着いた対応を見せるのもこの世代のBLの醍醐味だなあと思いました。
それなりに経験値が高い40代同士、淡々としつつもコミカルで、軽妙なのに軽すぎないというこのバランス。もともと北條も南海もリア充でしたが、生涯のパートナーを得た今さらなるリア充となって末永く爆発し続けていただきたいです。
北條の両親へはカミングアウトも顔合わせも無事に済みましたが、南海のほうはどうなるかなあ。こちらはちょっと手こずりそう。同居問題もまだ残っているし、このあたりもまた続編があってもおかしくないですね。
エロはきちんとエロいですが、美麗な絵柄のおかげかどこか上品なのが橋本クオリティ。身体の線も美しく肉体のバランスもきちんと男性的です。
作家さんによっては、デッサンどうした?と思わずにはいられないケースもありますが、橋本先生はちっとも崩れないから安心して読めます。
BL初心者にもBL猛者にも万人に自信を持っておすすめでます。コメディ要素もお話の要素も両方とも欲しい人、美麗な絵柄でエロも欲しい人、くすくす笑えるのに大人なBLをお探しの人にもぜひおすすめしたいです。
橋本先生の安心安定のハイクオリティな絵柄にハイセンスなコメディと、文句のつけようがない最高の萌えが詰まった1冊でした。
橋本あおい先生のその他BLコミックス。
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