ゆき林檎先生の「グッドバイライラック」ネタバレ感想です。

大正BLの至極の名作「玉響」で名を馳せたゆき林檎先生の新刊BLは、教師と元生徒という定番のジャンルです。

元生徒で現同僚という関係から、静かに淡々と動く日常の一部を切り取ったような大人向けの恋のお話です。健気で一途な想いや同性であることに戸惑う姿が妙にリアルなのは、愛と情について区分けがしにくいものだからでしょうか。

ゆき先生は作家買いする先生のひとりですが、今作もしっとりと落ち着いた雰囲気に佇む、切なさや愛しさや情というものが染み入るように伝わってきました。マイルドな絵柄とよく合うふんわりした作風が大好きです。

タイトルにあるライラックの花言葉は「初恋の思い出」果たして教師と元生徒のこの初恋は実るのか…。


高校の時にケガで思うようにバレーができなくなった加藤(受)に優しい声をかけてくれたのは教師の笠井(攻)

これをきっかけに加藤は立ち直り、笠井に好意を持つようになりますが、勉強を教えてもらうという口実を作ったりタバコを吸って気をひいたりするものの、笠井は加藤をあくまで生徒としてかわいがるのみ。

決して一定以上の優しさや期待を持たせない教師笠井に何もできないまま、加藤は高校生活を終えて卒業していきます。

笠井は教師という立場もありますが、大人としてのモラルを持ち合わせた常識人という感じがしてとても好感が持てます。力で恐怖政治を敷くような教師よりも、こういう落ち着きがあって真面目な先生は生徒にも人気がありますね。

卒業前に加藤が告白めいたことをしても、男同士ということは否定したりせず淡々と、でもキッパリ「公私混同はしない」と伝えるところがすごく教師らしいと思うし、高校生相手にすべき大人の対応だなと思いました。

そして数年後、加藤は母校に新任教師として赴任してきます。教師と教え子という関係ではなく同僚になった2人。加藤は彼氏と同棲していますが、実はずっと笠井のことを想っていました。

もう教師と生徒という縛りはなくなりましたが、笠井はノンケ。加藤の一途で切ない片思いが始まります。押しかけ女房のように毎日ごはんを作りに来ては泊まって行く加藤に、だんだん情が移っていく笠井。

こんなに自分に懐いてくれて、まっすぐに好意を向けられたり甘えられたりしたら、ほだされるのも無理はありません。しかし笠井は、元々の生真面目さや、これまで異性しか愛してこなかったという意識、何より恋愛に対してそこまで熱くならない性格ということもあり加藤の態度には戸惑うばかりです。

笠井が加藤に対して強く拒絶しない態度は、教え子だからという以前に「嫌いじゃないけど好きかと問われると答えに窮する気持ち」というよく分からない感情が少しずつ積もっているから。

ある日、加藤は元カレのリベンジポルノのために、退職を余儀なくされてしまいます。いつも冷静な笠井が管理職に感情をむき出しにして抗議して頭を下げる姿は、男らしくてかっこよかった!こういう人だから加藤も好きになったんでしょうね。

それにしてもこんなことで教師を辞職に追いやるような職場(管理職)ってどうなのかなあ。加藤は被害者だしいくら生徒たちの噂になったりしても、本人や周りの教師たちが毅然とした態度でいれば問題ないと思うんですが…甘いかな。

退職後、ふっきろうとして旅に出た加藤を追いかけて「加藤に起こる不幸を半分持ってやることはできる」と覚悟を決めて伝える笠井の落ち着きにはジーンときました。情が愛に変わることもあるんですね。ほろっときてしまいます。

自分の気持ちが変わっていったことを自覚して、それを自分自身できちんと受け止めた笠井の器の大きさ。ノンケとはいえ腹をくくった笠井のような人と一緒にいられるなら、きっと加藤も今までの分まで幸せになれることでしょう。

好きかと聞かれて「愛しいよ」と答えられる笠井は、さすが包容力のある大人の男でした。

長年の片思いが報われた加藤の健気で一生懸命なところもぐっときます。私は受け攻めのどちらかの片思いが時間をかけて成就するという展開が好きなので、1冊を通してじっくりとその過程を楽しめました。

速攻でくっついてあっちこっちでヤリまくるエロにはちょっと距離を置きたい人、しっとりとした大人の恋バナを読みたい気分の人には特におすすめです。

ゆき林檎先生は一時期作家を辞めよう(!)と考えておられたそうですが、こうして書き続けてくださって嬉しいです。

次回作もまた楽しみにしています。






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