5巻の続きにあたる34話では、美女の正体が城谷さんをかつて絶望の淵に突き落したあの女子高生・植田嬢だったことが判明しました。まさかの再登場です。
しかも植田嬢はイケメン黒瀬くんに目をつけ偶然を装ってナンパ。連れが城谷さんであることにも気づき、黒瀬くんと城谷さんのラブラブデートに割り込もうとするという肉食獣さながらのハンターっぷりを見せつけてくれました。
こんなこともあろうかと我々テンカウントファンが胸ポケットに潜ませていた銃に手を掛けそうになったところからの、最新話35話です。
前回の復習はこちら。ネタバレ注意です。
テンカウント34話ネタバレ感想
先に35話の結論から言っておきますね。ひとことでいうとスッキリした!という言葉に尽きます。今から読む方は鬱々とした気持ちで読まなくても大丈夫ですよ。ご安心を。
それでは以下ディアプラス10月号、宝井理人先生の「テンカウント」35話の感想です。コミックスの6巻に収録されるのでコミックス派の方やネタバレNGな方はお気をつけください。
テンカウント6巻 電子書籍
テンカウント6巻35話 感想 ネタバレあり
扉絵は黒瀬くんのソロです。チュッパチャップスを舐める黒瀬くんがカメラ目線ですが、イケメンは何をやってもサマになります。カメラ目線と見せかけてこの視線の先にいる人は決まってますよね。
このあと黒瀬くんが城谷さんをうまいことまるめこんで、じゃなくてなんだかんだ理由をつけてこのチュッパチャップスを舐めさせることに成功するんですよね。知ってた。
城谷さんがびびりながらも頑張ってちょっとだけ舐める絵が目に浮かびます。他人の舐めた飴を舐めるとかハードル高そうですが、黒瀬くんのだったらイケるんですよね。あ、なんか変な意味に思えてきた。戻ってこい私。そして本編。
助け舟を出してくれた黒瀬くん
結局「お茶くらいご馳走させて」としつこい、じゃなくて食い下がる植田嬢に言葉を濁していた城谷さんでしたが、結局話の流れで3人でお茶することになりました。
植田嬢に対して言葉少なになった城谷さんを見ていた黒瀬くんが、予約しているお店の時間までどこかでお茶するようのはどうかと提案してくれたのです。
城谷さんの知り合いということで、黒瀬くんは城谷さんの出方を待っていて様子を見ている感じでした。空気を読んでいるんですね。
ここでは城谷さんの知人ということだけしか黒瀬くんには情報がないから、城谷さんの出方次第という選択は正しいと思います。
まさか黒瀬くんもこの段階で、偶然再会した植田嬢と城谷さんにあんな過去があったとは知る由もないわけですから。
ちらりと城谷さんを見て「俺はどう答えるのが正解ですか」という表情で城谷さんを伺う黒瀬くんが大人の対応です。
そして城谷さんが、そんなふうに自分のことを気遣ってくれている黒瀬くんのことに気づけるくらいには2人の仲が親密になったということでしょう。
理解しあう姿勢や互いの言葉にしない部分を察する関係になるということは、身も心もお付き合いしはじめたカップルならではの雰囲気です。やっぱり合体って大きいんだな。
城谷さんとしては「あまり何度も拒否するのは不自然かも」と考えていて、でも言いあぐねていたら黒瀬くんが助け舟を出してくれて、お店の時間までカフェでお茶するということに。
これで一応、城谷さんが予約したお店でのデートの邪魔は阻止できました。が、予約の時間まで3人でお茶することにはなってしまいました。これが吉と出るか凶と出るか。
イライラMAXの城谷さん
近場のカフェに入った黒瀬くん、城谷さん、植田嬢の3人ですが、城谷さんはしょっぱな座る位置に迷ってしまいます。
結局、城谷さんと植田嬢が向かい合い、間に黒瀬くんという座り位置になりました。黒瀬くんはいわゆる王様席、お誕生日席という位置です。
カフェは城谷さんが女子力兼秘書力を発揮して、近くのビルの上にあるおしゃれカフェに。テラス席があって素敵です。
もうちょっと涼しくなったらこういうテラス席もいいなあ。都会の喧騒を離れてパラソルの下でお茶するとか、雰囲気がいいじゃないですか。
座席についたはいいものの「この席順…でいいのか!?」と青くなっている城谷さんの姿がなんだかコミカルで、あわやキャットファイトな修羅場なシーンなのにうっかり笑ってしまいそうに。
うーん、確かに席順は迷うかもしれないですね。城谷さんが両方の知り合いなので本来なら黒瀬くんの位置に城谷さんが座るのが一番自然っちゃ自然かな。
城谷さんは、植田嬢のとなりに座りたいわけじゃないけど黒瀬くんが植田嬢のとなりに座るのにはひっかってます。早めに切り上げてやる、と内心イライラMAXの城谷さん。
城谷さんそれ、分かりやすいやきもち(笑)でも城谷さんがイライラする気持ちは十分にわかります。植田嬢は表面上はすごく明るくいい人そうにふるまっていますが、妙に黒瀬くんに距離が近いのは気のせいじゃないはず。
メニューを見るのも身を乗り出す感じとか、注文したマスカルポーネのクレープも肩出しの若々しいファッションまであざとく見えてきました…。いや、クレープに非はないないですね。
マスカルポーネチーズはティラミスの材料ですが、クリームチーズってどれもおいしいんだなーやばいこんな時間なのに食べたくなってきました。くそう、これも植田嬢の陰謀だ(違)
どっちも説明し辛いわ!
城谷さんは黒瀬くんのことは「友人の黒瀬さん」、植田嬢のことは「小さいころ地元で交流があった植田さん」とお互いに紹介します。
が内心どっちも説明しづらい!!と絶叫しています。そうですね同感です。どっちにも本当のことをこの場で話すのは誰得?状態です。ここは城谷さんも大人としてふるまいました。
黒瀬くんはいつも通りの無表情で、城谷さんに「友人」と紹介されようが微動だにしません。城谷さんが内心「友人、でいいんだよな?」とか考えているのを知ってか知らずか、ポーカーフェイスの黒瀬くん。
当然ここは無難に「友人」で正解でしょう。それに植田嬢のこともうまいこと説明した方なんじゃないでしょうか。「地元で交流があった」というのは嘘ではないし、まあ当たり障りのない紹介です。
植田嬢は、城谷さんが小学生のころに城谷パパが講師をしていた塾の生徒だったことも話します。ちょっとハラハラしつつも、さすがにこちらもこの場で変な話はしないだろうと考えている城谷さん。
まあここでいきなりはしないでしょうね植田嬢も。でもまっっっったく油断できないのは植田嬢の目がハンターの目だから。なんかこわいよう。
植田嬢が自分よりも黒瀬くんに興味がありそうなことにも城谷さんは気づいています。
黒瀬くんと城谷さんの関係についても聞いてくる植田嬢ですが、ここは黒瀬くんが「城谷さんの会社の人と自分が知り合いで」と無難にまとめます。
確かに最初は城谷さんの会社の社長を助けたところから始まったわけですから、かなり要約してますがこちらも嘘ではありません。
黒瀬くんは余裕のほほえみ、城谷さんは張り付いたような営業スマイル。うん、黒瀬くんがついていれば対植田嬢は大丈夫だなとちょっと安心ですね。
もう昔の城谷さんじゃない
黒瀬くんの仕事についても説明しますが、ここでチラ見せにあった城谷さんのドリンクがしょがしょなシーンです。黒瀬くんに食いつきのいい植田嬢にまたイライラしてる城谷さんが何だかかわいいです。
かわいい、とか言っていられるのは黒瀬くんが落ち着いているからでしょう。黒瀬くんがポーカーフェイスというのもありますが、城谷さんにはできないところを黒瀬くんが補っている感じがもう立派なカップルで見ていて安心します。
昔城谷家にも心療内科系の本があったことを持ち出し、城谷パパが買ってたのかなと無邪気を装ってじわじわと城谷さんに攻めに出る植田嬢。
城谷パパも息子のことが気がかりで、本を読んだりしていろいろ調べていたのかもしれません。植田嬢とのことはアレですが、父親として息子を想っていたのは本当のところです。だからこそ城谷さんも父親のことが大好きで懐いていたのですから。
が、ここではそんなお父さんの話題を持ち出して植田嬢が城谷さんを動揺させようとしているのが透けて見えます。計算してますよね植田嬢。
父親のことがもっとも城谷さんの弱点となるであろうことも分かっています。なぜなら昔そこにつけこんで小学生の城谷さんを追い詰めた張本人だからです。
久しぶりに吐きそうな気分になる城谷さんですが、もう昔とは違う、黒瀬くんに出会って少しは前に進めたことで、もう昔のようには戻りたくないと覚悟を決めて口を開きます。
あの頃よりは俺も少し大人になったのでと、うつむきながらも懸命に言葉を紡ぐ城谷さん。そして…
今はいつも黒瀬くんが支えてくれますから。
よ、よく言った城谷さん!そうです、城谷さんはもう黒瀬くんという人と支えあって生きているのです。うわあうわあ、これは感動です。まさか城谷さんの口からこんな言葉が聞けるなんて。
植田嬢の目を見て言うことはできませんでしたが、目を見て言う相手は植田嬢じゃなくていいの。今度黒瀬くんに言ってあげよう城谷さん!
父親の代替品ではない黒瀬くんの存在
そんな城谷さんの言葉に植田嬢は「すごく仲がいいんだ。素敵」とか言ってますが、素敵なんて微塵も思っていませんよね絶対。
その手のお祈りポーズはぶりっこというか今どきもう古いんじゃ…あっごめんなさい。ついつい植田嬢にはトゲのある言葉になってしまいます。
なおも城谷さんへの攻撃、いや口撃を緩めず「黒瀬さんが今は城谷くんのお父さんみたいな感じなのかな」などと失礼なことを平然と口走る植田嬢。
これには城谷さんも動揺します。が、まさかの注文したアイスブレンドを一気飲みして勢いをつけ言ってくれました。
黒瀬くんは父の代わりじゃありません。
勝利!全国のテンカウントファンのみなさんと同じくガッツポーズな私。
一気に言い放ち、お手洗いに向かう城谷さん。そんな城谷さんを追いかけようと立ち上がりかけた黒瀬くんの手を抑えたのは、植田嬢でした。
キター!まさか植田嬢はこうなること(=城谷さんがテーブルを離れる)を予測して城谷さんをわざと挑発したんじゃないかと勘ぐりたくなるような素早い行動。ひいい恐いよう。おかーさーん。
黒瀬くんは超イケメンだった
昔からああいうところがかわいい、と魔性の笑みで黒瀬くんを座らせる植田嬢は、城谷さんが小学生のときも父親にべったりだったこと、そしてそれがちょっと怖いくらいだったことも笑顔のままに黒瀬くんに告げます。
「ちょっと怖いくらい」と黒瀬くんに向けた横顔はまさに悪意に満ちた悪女の微笑み。真っ黒な背景は、黒瀬くんの目にこう映ったということですよね。
つやつやの唇も整えられた爪も手入れが行き届いた美しい髪も、すべてが人の体温を感じさせないような怖さが漂っている植田嬢。
むしろここまでの人生どうやって過ごしてきたのか、幸せだったのかそうでもなかったのか、家庭環境の詳細なども含めて怖いもの見たさでその悪女っぷりをまるっと知りたくなります。
黒瀬くんの目の前では城谷さんを「城谷くん」と呼ぶ常識人ぶっていますが、城谷さんがいなくなった途端に「ただくん」呼びになるのもあざとさを感じてしまいます。
黒瀬くんに対して「私は城谷さんの昔を知っている親しい存在なの」と思わせて油断させて近づこうとしているのか。あるいは「城谷さんの友人でいるのは疲れるでしょ。私も昔から知ってるからその気持ち分かるわ」というアピールか。
植田嬢の言う「(城谷さんが)かわいい」は「キュート」の意味ではなく「気持ち悪い」という意味でしょう。「かわいい」に違う意味を内包させているのが見え隠れします。
そんなことを考えていたら、さらに植田嬢はアグレッシブに動きました。「もしそういうのに疲れたら、いつでも飲みに誘ってくださいね」と黒瀬くんにぴたっとくっつきます。ひいい。
今度は大人二人で、などとその美しい顔でささやく植田嬢に、黒瀬くんはその整った顔立ちのままににっこりと微笑みます。思わずドキッとする植田嬢に黒瀬くんは言ってくれました。
俺、会ったその日に股開きそうなビッチは好きじゃないんですよね。
耳元に顔を近づけて植田嬢にだけ聞こえる声でキッパリはっきり伝える黒瀬くん。うわ、オブラートに包まず直球できましたね。
黒瀬くんの綺麗な顔で「ビッチ」とかいう言葉を聞くと植田嬢じゃなくてもぞわっとします。
先日、城谷さんに「俺のこと捨てないでくださいね」なんて不安げな顔でお願いしていた人とは別人のようです。嘲笑には嘲笑を、というのが黒瀬くんのやり方なのでしょう。
リアルの仕事では、嘲笑に対してもほほ笑みを返さなければいけないシーンが哀しいことにあったりますが、プライベートにおいては、何もこちらを嘲り笑う人にまで優しく微笑む必要はない。そう言われているようで、なんだか心強いです。
黒瀬くんの好みは警戒心バリバリのビクビクしている小動物系の人。打算的な人は好みじゃないんだぜ。「警戒心バリバリ&ビクビク」は誰かさんを彷彿とさせますが、植田嬢は黒瀬くんの思わぬセリフに引いてしまいます。
相手が悪かった植田嬢
まさかの計算違いをした植田嬢。こんな反応が返ってくるとは思いもよらなかったはずです。これまでにもその美貌を武器にさんざん男漁りをしてきて百戦錬磨であろう彼女。
チヤホヤされてきて女としての自信も大いにあったことでしょう。何せ高校生のころから大人の男を思い通りに動かし、家族関係を崩壊させていたというツワモノです。
あの後、城谷家以外にも植田嬢の毒牙にかかった家庭も少なからずあったのではないでしょうか。
植田嬢が小学生の城谷さんにしたことを思えば、この人は他人を追い込むことに快感を覚えるタイプの人。
おそらくこの植田嬢は、他人のものを奪うことや他者の関係を壊すことで自分が満たされるという、ある意味病的な人のように思えます。
30代半ばになってもこの美貌を保ち、男の人にこんなふうにコケにされたことなどなかったに違いありません。
なのに黒瀬くんのバッサリっぷりたるや、ああそうだ黒瀬くんってそもそもこういう人なんだったと、いつもの城谷さんに向ける言動ばかりに気を取られていた我々に思い出させるにふさわしい「ビッチ」発言でした。
あっけにとられる植田嬢の焦り顔で35話はおしまいです。
感想まとめ
あー良かったすっきりした。胸に潜ませた私のワルサーP38の出番はなくてすみそうです。みなさんそれぞれ隠し持った武器はいざという時のために押し入れにしまいこみましょう。平和的解決(違)
植田嬢はちょっと目を付けた相手が悪かったとはいえ、性格に難ありすぎてせっかくの生まれ持った美貌が台無しです。同性の友達とかいるのかな。女子グループとかでも、それはそれでうまくやっているのでしょうか。
ただ34話で城谷さんが言っていた「また電話します」の謎は明かされずでした。まだ城谷家とつながっているのでしょうが、そこはスルー。
今回の35話で植田嬢は黒瀬くんに対してハンターの本能で「敵う相手ではない」と認識したと思うんですよね。ということは今後植田嬢の矛先は城谷さんに向かうはず。
この後、植田嬢とは別れて城谷さんの予約したお店に行き、そこで城谷さんが植田嬢のことを隠さずに話せばこじれることはないと思います。
が、城谷さんがそうスンナリと話せるかというと難しそう。お父さんのことは鬼門というか、そこまで自己開示するにはまだ黒瀬くんとの関係が未熟と言わざるを得ないかなあと。
おそらく城谷さんの10個めの項目も父親がらみの何かなのでしょう。少なくとももう一度城谷さんと植田嬢が対峙するときが来ます。
その時にこそ、城谷さん自身が植田嬢に引導を渡す番です。自らの過去を乗り越えるのは辛くてしんどいことですが、黒瀬くんがそばにいてくれたら大丈夫です。
あーとにかく今回は城谷さんも頑張ったし、黒瀬くんもズパッと言ってくれたしいろいろとすっきり!気分よく読み終えることができました。
書きそびれましたが、城谷さんが一気飲みしたアイスブレンドは黒瀬くんの飲みかけのものだったので回し飲みもクリアしました。
黒瀬くんのだと分かって勢いをつけるため、覚悟を決めるのために飲んだんだと思いますが、その覚悟は自分に対してでもあり黒瀬くんに対してでもあったのではないでしょうか。
それくらい城谷さんのセリフはガツンと響きました。父親とは違う自分で選んだ大切なあなた(黒瀬くん)と一緒にこれからは生きていくんだという覚悟。
このメッセージを黒瀬くんがどう受けとったかどうかは定かではありませんが、言葉そのものは素直に嬉しかったはず。
城谷さんの「黒瀬くんが支えてくれる」「父の代わりではない」などは植田嬢が出てきたからこそ聞けたセリフだと考えると、植田嬢の存在も意味があったと言えましょう。
次号ディアプラス11月号は2016年10月14日(金)に発売です。11月号はテンカウントが表紙、志水ゆき先生の「花鳥風月」が連載再開します。
ではまた次回テンカウント36話の感想でお会いしましょう。
追記)36話の感想も書きました。
テンカウント36話 ネタバレ感想
宝井理人先生のBLコミックス
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