商業BLのデビューコミックスにしてかなり好感触な1冊を世の中に送り出してくださったみちのく先生。ギャグもいけるしシリアスもいけるとか、引き出しの多さに感服。
女に不自由していない遊び人のチャラ男攻めが、純情で一途な男に惹かれていってもう切羽詰まる表情も、親友に対して叶わぬ恋に胸を焦がす受けの切ない表情にもぐっときました。
「腐男子高校生活」で知った人も多そうですが、今後もBLコミックスをたくさん出してほしい作家さんのひとりです。
こっちむいて、愛 電子書籍
こっちむいて、愛 ネタバレ感想
親友に恋する純情な鈴原
ゲイで大学生の鈴原は親友の中山に秘めたる恋をするも、今の良い関係を壊したくなくて気持ちを抑えて友達関係を築いています。
ある日安アパートの薄壁を通して隣からアレな喘ぎ声が響き渡り、我慢の限界に達する鈴原は壁ドンして脅かしますが、隣に住んでいたのはチャラ男で有名な西原でした。
同じ大学でも女がらみでトラブルを起こしたりとお盛んな西原。大学構内でメガネをしているのは女が乗り込んできたときの身バレを防ぐためのものだったりします。
中山に彼女とするから部屋を貸してほしいと頼まれOKした鈴原は、ひょんなことからこの西原と勢いで関係を持ってしまう。
西原の家で隣の自分の部屋にいる中山を意識しながら抱かれる鈴原。これは切ないですね。
好きな人がとなりで彼女と、しかも自分の部屋であれこれしているのを知りながら、自分は別の男に抱かれている。西原の考えていることが今一つ分からないからこちらもモヤモヤ。
お前のいう普通ってなに?
友達にヤり部屋として自分の部屋を貸していることを西原にも勘付かれた鈴原。
こんなふうに部屋を貸すことは普通のことだと自分に言い聞かせるような鈴原に、西原は冷たく問い返します。「お前のいう普通ってなに?」
鈴原なりの処世術でもあるのでしょう。ゲイであることで面倒事に巻き込まれないよう、いつも「普通」を装って生きてきたことの影響で、もはや普通が何か分からなくなっている鈴原。
中山と彼女が去ったあと、冷たい部屋でひとりで中山を想って涙する鈴原が痛々しくて切なすぎて泣ける。。。
抑え続けてきた親友への気持ち
告げられない片思いを抱えたまま、平然と何食わぬ顔で親友をし続けるってかなりつらいですよね。中山は彼女持ちのノンケ。なによりも失いたくない親友でもあります。
中山はすごくいいやつなんですが、親友とはいえ何度もヤり部屋として借りるのはうーん、ちょっと甘えすぎかなあ。
でも鈴原に対して差別なく普通に友達付き合いをしてくれたり、学校でも浮きがちだった鈴原の救いとなってくれたのも事実です。
鈴原の頭から中山を追い出したい
西原のほうは平静を装う危なっかしいお隣さんの鈴原に少しずつ惹かれていきます。自分でもなんで男の鈴原が気になるのかは分からない。
だけど放っておけなくて、好きになったことも告げ女性関係も全て清算して鈴原にぶつかっていきます。遊び人の本気っていいな。
なのに鈴原は頑なで、西原の気持ちを認めようとしません。自分だって西原に惹かれ始めているくせに、またも自分を抑えてしまう鈴原。
「鈴原の中にいる中山を追い出したい」なんて西原の殺し文句も素直に受け入れようとしません。
傷つくのが怖くて逃げていたけれど
西原の本気を目の当たりにしても拒絶してしまった鈴原。
お隣なのに会わなくなってしまい、このまま関係も風化するかと思っていた矢先、鈴原は中山と話していてふと自分の本心に気づきます。
片思いの苦しさから逃れるようにぬくもりを求めて西原に甘えて、なのに彼と向き合わずに逃げ出してしまった自分。
追いかけてきてくれた西原に、いっぱいいっぱい好きだとやっと本音を告げられた鈴原の表情は、切なくて愛しくて健気でとても綺麗でした。
こっちむいて、愛 感想まとめ
身体の関係から始まって惹かれていくという王道ながらどうやってくっつくのかと途中ハラハラしましたが、鈴原が幸せになってくれて良かった。
西原がめんどくさいと思いながらも男である鈴原を受け止めてくれてホッとしました。これだからモテ男は。決めるときは決めてくれるぜ。
お付き合いがはじまったらもうラブラブだし甘いしエロいし、あっエロは付き合う前からしてましたが、でも西原は遊び人らしく男相手は初めてながらも鈴原が気持ちよくなれるようにしたりと、これだからモテ男は以下略。
今作のタイトルは「あっちむいてホイ」からきているんですね。「いやよいやよもキスのうち」もそうですがみちのく先生のダジャレタイトルは密かに好きなので、ずっと続けてほしいな。
綺麗な絵柄、たっぷりなエロ、肉体関係から始まる切ない王道展開といろいろと揃った作品です。BL初心者の人にもおすすめできる良作でした。
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