内田カヲル先生と言えばガチムチとエロスがセットになっている作風と思っていたら、まあなんということでしょう。まさかのエロなしピュアピュアBLという新たなる領域にチャレンジされました。
康平くんがかわいすぎる!なんだこれは。内田先生ってばこんな引き出しもあったんですね。あまりの愛らしさにニヤニヤを通り越して拝みたくなってきました。
康平くんのような子がおかえりとか言って駅で待っていてくれたり、電車の時間を合わせてくれていたら、さぞや通勤が楽しくなることでしょう。
正三さんがブラックになる姿もあまり想像できませんが、最高のおにいさん×ショタのほんわか癒し系BLでした。
それでは以下「おかえり電車」のネタバレ感想です。
おかえり電車 電子配信
おかえり電車 感想 ネタバレあり
満員電車で守ってあげたのは美少年
会社帰りの満員電車で苦しそうな美少年の康平をかばってあげたリーマンの正三(攻)は、それ以来康平に懐かれて内心嬉しい日々を送ります。
電車内で自分の姿を見ては無邪気に寄ってきて、あいさつをしてきたり別れ際に手を振ってきたり、電車の時間を合わせてきたりとかわいらしい康平。
正三はそんな康平を見て「連れて帰りたいな」とか心の中で思っていますが、まだまだこのあたりでは少年と大人の心温まる交流という感じで微笑ましいです。
こんなに一生懸命ですぐ赤面して純粋でかわいい子に懐かれたら、癒しを求める疲れたリーマンはいちころでしょう。
康平の言動にきゅんきゅんする正三は、しかし大人としての節度を持って康平と接しています。このあたりが良識的な大人のお兄さんという感じでとても好感がもてました。
良識的で大人な正三
康平が健気に「好きです」と伝えたとき、悲しい顔をさせたくないからと弟ができたみたいな感覚でOKの返事をした正三。
この時はまだ自分がこんなにも康平にハマっていくとは思いもしなかったのかもしれません。
2人きりのデートや家での温かい時間を過ごすうち、正三は少しずついいお兄さんでいることが辛くなってきました。
康平はまだ中学生で、正三は立派に働くサラリーマン。健全な20代の成人男子ならキスもそれ以上のことももちろんしたいですよね…。
家で会っているとき、正三は康平の細い首筋を見て思わず噛みついてしまいます。
常識的で良識的な大人であるがゆえに、恋も愛もまだ知らない若い康平とこのままの関係でいてもいいのかと思い悩みはじめる正三。
自分が康平のことをもっと欲しいと思ってきたことにも罪悪感を覚えるようになってしまいました。
うーん確かに大人としては難しいところで悩みますよね。康平はまだ中学生の未成年。出会うならもっと後でも良かったと正三が思っているところが切ないです。
ただただ一生懸命に正三を好きな康平
正三の悩みは深刻さを増していきますが、康平のほうは好きな気持ちでいっぱい。一生懸命会おうとするし一緒にいたいと思う気持ちが溢れ出しています。
おウチデートで気を使って家からにゃっぽろ一番ラーメンを持参したり、正三の作ってくれたシャケおにぎりに感動したり、ピュアピュアな康平。
か、かわいい。かわいすぎてこんなの絶対好きになるやつだ…。中学生にしては顔立ちも身体つきも幼いけど、康平はまだしばらくこのままでいいなーと正三には悪いけど思ってしまいます。
まっすぐに正三を好きな気持ちをぶつけてくる康平は、大人の正三の考えることは分からないなりに、キスやお泊りなども背伸びして正三に嫌われないようにふるまったりととても健気です。
使い捨てカートリッジだぞ!
康平には学校に同じく美少年のお友達・翔一がいました。この翔一がなかなかの曲者で、いやいや一番の常識人で危機管理能力も高く賢い子です。
康平の恋人が男でサラリーマンと聞いて驚いて、康平を護るべく帰りの電車にくっついてきた翔一。
「だまされていやらしいことされて使い捨てカートリッジだぞ!」という名言を残してくれたりと、なかなか見どころのある友達思いの少年です。
確かに話を聞いただけでは何も知らない純真無垢な康平が、悪い大人の男に騙されているというふうに見えてしまいます。
世の中にはそういう趣向の人がいて悪いことをする人も普通に存在している。翔一にはそういう知識がちゃんとあるんですね。
康平の成長をゆっくり見守りたい
翔一が大騒ぎしたら康平と正三はいったんお別れということになってしまいますが、康平を絶対守るマンの翔一がいい子で良かった。
とりあえずお泊りなどはなしということで翔一は引き下がり、親や学校に言いつけるという騒ぎにはなりませんでした。
正三が、翔一にも康平にも落ち着いた大人な対応をしていたのも良かったのでしょう。
いったん離れても大人になるまで待つ姿勢も見せた正三は、康平の成長をゆっくり見守りたいと思っているしコトを急ごうともしていません。
正三のそういった温かな人柄は翔一にも伝わったに違いありません。
ブラック正三さんは降臨せず
少しずつ少しずつ康平と近づこうとする正三は、キスだけでもしてみようかと康平に提案します。
それを聞いてからは意識しすぎて正三が近づくだけで「キスがきた」とか真っ赤になって顔を上げられなくなってしまう康平がかわいくてもういっそ尊い。
そんなかわいさMAXな康平を見て、理性が木端微塵に砕け散らないように自分自身を自制してコントロールする正三さんが偉い(笑)
結局、無事にキスをすませブラック正三さんは出てこないまま。ちょこっとだけでもブラックな正三が見て見たかったなーなんて悪い大人の私は思ったりなんかしたりして…いえ何でもありません。
清潔感に溢れた気持ちの良いほんわかBL
あとがきの手前のおまけの4コマ漫画では、高校生に成長した康平の身長が伸びて正三と並んでいたのでびっくり。でも大きくなっても中味はかわいい康平のままのようです。
100ページ近くが表題作なのですがもっともっと続きが読みたいと思いました。また表題作以外にも短編が4本とそれぞれ楽しく読めました。
読む前は「エロがない内田先生なんて…」とか思っていた過去の私の頭をスリッパで思いきり叩きたいです。スパーンと。
ガチムチ筋肉系もガツガツ男らしいエロもちょっとなーと思っている人にも、BL初心者の方にもおすすめできる作品です。
ショタが苦手な人でもエロはないしほわっほわの萌えキュンばかりなので、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
悪い人も出てこないしシリアスにもギャグにも偏らず、表題作は特に良識的でほのぼのしていて温かい気持ちと幸せをたくさんもらえました。