MODS

MODSの感想　ネタバレあり

黒服バイト信虎×売り専シロ

妹の作った借金を返すため、高い日給につられて売り専シロ（受）の黒服として働くことになった信虎（攻）

シロをホテルに送り届け無事回収し、客からお会計をきっちりとむしりとる。

金のためにそんな日々を送るうち、信虎はシロの孤独な姿を目の当たりにして内心ハラハラしたりもやもやしたりと複雑な感情を持ち始めます。

違反客に酷い目に遭わされることもあるシロ。信虎は何度かそんなシロを救い出したり傷の手当てをしたりしながら、少しずつ距離を縮めていきました。

踏み込まれると臆病になるシロ

シロも売り専などではなく別の人生が選べるのではないか。信虎がそんなことを考え始めた矢先、わざわざ客とのプレイを見せつけてきたシロ。

シロ自身はもう何もかもをあきらめたような、どこか虚無感に満ちた表情で売りの仕事をこなしているだけの状態です。

最初は信虎の存在をおもしろがってちょっかいをかけたりもしましたが、いざ踏み込まれそうになると心を閉ざしてしまう。

大切にされそうになると途端におびえて逃げ腰になる臆病なシロの心には、昔の苦い思い出が今なお大き暗いく影を落としているのでした。

居場所を与えてくれた時雨

かつてシロは親の借金を背負わされこの世界で働き始め、まだ15歳という若さで父親に逃げられたという過去がありました。

その時に居候して面倒を見てくれたのが、元やくざの時雨です。

何のメリットもないはずなのに、シロと食事をしたり互いを抱きしめて眠ってくれたりと、一緒に暮らして買える場所を作ってくれた時雨に、シロも少しずつ心を開いていきます。

ある日、時雨は2人でこの街を出ようとシロを誘います。時雨は、まだ若いシロには犬のような自分とは違う人生を歩んでほしいと考えていました。

時雨もシロに救われていた

しかし待ち合わせに来なかった時雨。来る途中で事故に遭い還らぬ人となってしまった時雨に、人生にも絶望してしまったシロ。

そのままずるずると売りの仕事にすがるように流されるままに今まで生きてきたのでした。

時雨との思い出が温かいものであるほどに、別れが辛くてあまりにも非情で胸が締め付けられました。

シチューのくだりや冷え性のくだりには、救われていたのはシロだけでなく時雨のほうもだったんだなと切なさに苦しくなってきます。

あの事故さえなければ…と思わずにはいられません。

MVPは密かに春さんかも

時雨のときのように期待して、また不意に失うのが怖い。臆病にならざるを得なかったシロは、信虎の告白に答えもせずに売りの仕事を辞めて突然消息を絶ってしまいます。

しかし結局は「抱いてくれ」と懇願するように信虎を呼び出したシロ。温かいのも優しいのも失うのも好きになるのもすべてが怖いと、泣きながらようやく信虎にだけは本音をぶつけることができました。

仕事を抜けることができたのも、オーナーの春さんのおかげなのかもしれません。そう思えば春さんの影ながらのナイスアシストに拍手！

2人で暮らし始めて初めてのエッチは愛にあふれていて、シロが信虎に出会えてよかったとほっと安堵できました。

幸せになって見たシロの夢に時雨が出てきたのもぐっときました。きっと時雨も天国から温かく見守ってくれていることでしょう。

MODS 感想まとめ

シロがあんなにハードな過去や経験を経ていたとは、抱えるものが大きすぎて幸せになれるのかとハラハラ。

普通すぎるくらい普通にいい男だった信虎のまっすぐさも、シロを救いだすひとつのキーになったのではないでしょうか。

見ていられない程にあぶなっかしいシロを連れ出してくれたのは信虎ですが、背中を押してくれたであろう春さんもきっと見えないところでシロのために動いてくれていたに違いありません。

実は春は、むかし時雨をほんのり想っていたのかなと感じましたがどうでしょう。

ハードな設定だとバッドエンドにならないかとドキドキしながら読みましたが、きちんとハッピーエンドを迎えてくれて心底安心しました。

シロが今後何を生業として生きていくのか、何ができるのかは分かりませんが、ゆっくりと信虎と一緒に人生を謳歌してほしいなと思います。

ナツメカズキ先生の3冊目も楽しみにしています。

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