みちのくアタミ先生の新刊BLは高度経済成長期の60年代を舞台にした人間×吸血鬼のシリアスストーリーです。
アタミ先生の初の人外もので時代物ということで、まず表紙がかっこよくてうっとり。
表紙の彼が元人間で現吸血鬼の受けです。イケメンばかりのキャラクターや吸血シーンの妖艶な色っぽさにゾクゾクしました。
タイトルにある「レッドベリル」とは別名「赤いエメラルド」ともいわれる希少価値の高い宝石のこと。
赤い血(レッドべリル)との決別(さよなら)とは何を意味するのか。永遠の命とは、果たして幸せなものなのか。
それでは以下みちのくアタミ先生の「レッドべリルにさよなら」1巻のネタバレ感想です。
レッドべリルにさよなら みちのくアタミ 電子書籍
レッドべリルにさよなら1巻 感想 ネタバレあり
孤独な青年×不死の吸血鬼
孤児院育ちで幼少期から孤独を抱え、いつか出会うたったひとりを求めて生きてきた18歳の青年・昭彦(攻)
勤め先のキャバレーを同僚のせいでクビになり、絶望しかけていたところで上から鉄骨が崩れ落ちてきます。
もう人生がどうなってもいいと投げやりだった昭彦ですが、ギリギリのところで飛び込んでかばってくれた和重に助けられました。
心臓を鉄パイプが貫き重症に見えた和重ですが、なぜか生きていて命に別状はない様子です。
自分を必要としてくれる人が見つかるまで笑顔で強く生きていこうと子供ながらに思う昭彦がいじらしいですね。。。
本当はわがままを言ったり大人に甘えたりしたかったはずの幼少期に、笑顔という処世術を覚えたことで何とか辛いことを乗り越えてきたのかと思うとやるせない気持ちになってしまいます。
子供が子供らしくふるまえない反動は大人になってやってきたり、成長してからも本人が息苦しく窮屈な思いをすることになるケースが多いですから。
50年以上前に人間から吸血鬼になった和重
助けてもらったお礼として和重の家に通って掃除をしたり食事を作ったりする昭彦。しかし実は和重は死にたがっている吸血鬼なのでした。
死にたいと言うわりには輸血用のパックの血を飲んでいる和重に「飲まなければ自然と死ねるのでは?」と疑問を感じる昭彦。
実は和重が血を飲むのは、飲まなくなって理性を失い本能で人を襲ってしまわないようにするためのものでした。
吸血鬼にとって人間は捕食対象の餌。和重は決して人を襲いたくないのです。なぜなら和重は元々人間の吸血鬼だから。
人間はほんの少しくらい血を吸われるくらいでは吸血鬼にはなりません。大量に血を吸われるといったん人間として死を迎え、その後吸血鬼になってしまいます。
50年ほど前に偶然庭にやってきた吸血鬼に同情して血を与えてしまい、その油断から和重は吸血鬼になってしまったのでした。
和重は今の外見は20代ですが、実際にはもう70年以上生きていることになります。しかも人間だった頃は妻も子供もいました。
冒頭でお墓詣りに行っているのは妻子のものでしょうか。それとも…。
興味本位は危ないよ?
昭彦は和重の家に通って世話を焼くうちに、和重のことがどんどん気になっていきます。
こぼれた輸血用パックの血を舐める和重の姿を見て思わず勃ってしまい、和重の家のトイレで抜いてしまったり。
これは匂いで和重にバレてしまいますが、和重としては何をやってるんだという呆れモード。けっこう大らかですね。
実質70年以上生きている和重からすると、昭彦はまだまだ少年のようなかわいらしい存在なのでしょう。
世話をしてくれる昭彦のことを拒むわけではありませんが、和重が昭彦に完全に心を開いているかというと微妙なラインです。
しかし昭彦が風邪をひいて寝込んでいると見舞いに来てくれたりと、ほだされている様子も見えてなんとなくいい雰囲気の2人。
そんな平穏を打ち破るように現れたのは、50年前に昭彦を吸血鬼にした張本人・将門でした。
将門は昭彦よりもはるかに長く生きている吸血鬼で、餌として半吸血鬼の師夏(もろなつ)をそばにおいています。
師夏は吸血鬼について調べていた昭彦に「興味本位は危ないよ」と忠告を送りますが、これは今後の何かを暗示していそうでひっかかりますね。
漂う不穏な雰囲気に、悲劇的な結末を想像して若干凹みます。
昭彦を自分のように吸血鬼にしたくない
50年前に将門に血を与えたことから吸血鬼になってしまい、不老不死として死ぬこともできずに妻子を見送ってきた和重。
死にたくても死ねず、大切な人がどんどんそばからいなくなっていくのに自分だけが取り残されていく恐怖と孤独を抱えて生きていました。
将門の手によって重傷を負わされ緊急に血液が必要になっても、和重は近くにいた昭彦の血を飲まずに耐え続けます。
昭彦の血を飲んで吸血鬼にしてしまえば、仲間を得れば一緒に生きられてもう寂しくないはず。
なのに自分と同じ孤独を感じさせたくないからか、和重は頑として昭彦の血を飲もうとはしませんでした。
昭彦が和重を押し倒してキス
和重は昭彦を自分のように苦しませたくないのでしょう。不老不死の虚しさや孤独を感じさせたくない。
自分に懐いてくれて善良な人間である昭彦を巻き込みたくないという和重の思いが切ないです。。。
いっぽう昭彦としては命の恩人である和重が苦しむ姿は見たくありません。死んでも構わないからといって自分の血を差し出そうとします。
友情というにはあまりにも濃いお互いを想いあう姿。
昭彦は、自分の知らない和重を知っている将門という存在にザワつく心を抑えられなくなり、和重を押し倒しキスしました。
感想まとめ
ラブがメインとはいえ1巻はまだ何も動かず押し倒すまで。ここまでが序章といったところです。
お、押し倒したところでおしまいとか鬼すぎますよ~!先生早く2巻を。
冒頭の和重のお墓参りのシーンは妻子のものだと思われますが、もしかすると何十年後かに亡くなった昭彦もお墓に入ってる?とか考えるとズーンと重たい気持ちになってしまいます。
吸血鬼が人間になる方法はないと将門が語っていたので、和重が人間に戻るという展開は望めそうにありません。
また昭彦が吸血鬼になるという展開も、和重の性格を思えばなさそうです。2人は人間と吸血鬼という形のまま幸せになれるのかな。その方法をこれから2人で模索していくのでしょうか。
片方が永遠の命である場合つい悲恋を思い浮かべてしまいますが、この2人なりの幸せの在り方を見届けたいと思います。
もうひと組のカップル(?)将門×師夏(もろなつ・絶対初見で読めない)も気になりますね。
師夏は将門が作った半吸血鬼ですが不死ではありません。将門と師夏の間にも過去にいろいろあったのでしょうか。
将門が師夏を完全な吸血鬼にしないのは、吸血鬼の孤独を知っているからかあるいはただの気まぐれか。今後語られるかどうかはともかく、この2人にも物語がありそうです。
アタミ先生は「早く汁と裸体を描きたい」とおっしゃっているし、2巻ではもっと昭彦と和重の距離が近くなるそうなのでそちらも楽しみです。
どこを見てもイケメンばかりで美しい絵柄は相変わらず。今後の艶っぽい展開に寄せる期待が大きい1冊でした。
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