原作は木原音瀬先生のBL小説で漫画は羅川真里茂先生という最強タッグ。花とゆめで絶賛連載中の正真正銘のBL漫画です。
1巻の時点で「あ、これ絶対好きなやつ」と思いましたが2巻で確信に変わりました。BL要素は薄めですが匂い系やニアBLが好きな人はハマると思います。
少女漫画の雑誌での連載なのでエロエロとはいきませんが、2人の距離が少しずつ近づいていく姿にドキドキ。
1巻の表紙の赤いバラの花言葉は「愛」。2巻の青いバラの花言葉は昔は「不可能」だったものが開発に成功して以来「夢かなう」になったそうです。
吸血鬼と人間という組み合わせの2人は果たして夢かなう結末となるのか。
それでは以下「吸血鬼と愉快な仲間たち」1巻と2巻の感想です。ネタバレ注意です。
吸血鬼と愉快な仲間たち 電子書籍
吸血鬼と愉快な仲間1巻 感想 ネタバレあり
昼間はコウモリ夜間は人間の吸血鬼アル
輸入牛肉の解凍庫で凍ったまま見つけられたコウモリのアル。ゴミ箱に捨てられたアルは実はできそこないの吸血鬼で、昼はコウモリの姿、夜は人間の姿になってしまいます。
人間の姿になると全裸になってしまうため不審者として警察に捕まっても、夜になるとコウモリの姿になって刑事の目をかいくぐって抜け出そうとするアル。
アルは半吸血鬼のようなもので牙もなく人間の血を飲んだこともありません。食べなければ空腹でつらいけれど死ぬこともできない。
飢えても死なないのに苦しいという地獄を味わううちアルは人との関わりもなくなっていき、いろんな感情が麻痺していきました。
慣れるのではなく慣らされるもの
吸血鬼同士はつるまずにひっそりと世界中に潜んで生きているから友達も作れません。孤独や劣悪な環境には「慣れるのではなく慣らされるもの」というドキッとする台詞も印象的でした。
こう見るとシリアスなお話のようですが、アルがコウモリになったり全裸になったり時々くすっと笑える要素が詰まっていて疲れさせません。
羅川真里茂先生の描かれる外国人のアルは骨格がしっかりしていて男性的なのに色っぽくてさすが。しかもかわいいです。
裸体も美しくデッサンがおかしいコマなどもほとんど見当たらず、ベテラン作家さんの凄味だなと思いました。
エンバーマーのアキラの家で同居することに
アルは元々は21歳のアメリカ人。知らずに吸血鬼の女の子と遊んでいて中途半端に嚙まれて以来、吸血鬼でもなく人間でもないという不完全なまま、誰にも理解されずに世捨て人のように生きてきました。
そんなコウモリ姿のアルを、刑事の忽滑谷(ぬかりや)が連れて行った先は友人でエンバーマーの暁(アキラ)の家。
エンバーマーとは遺体を衛生的に処理して修復する専門職のこと。最初はアルはアキラから血の匂いがすることで殺人鬼か吸血鬼かと疑いますが実際にはアキラは普通の人間です。
信じてくれないアキラと忽滑谷の目の前で人間からコウモリへと変身し、しばらくの間アキラのところで一緒に暮らすことになったアル。
最初はアルが催眠術をかけたのではないかと疑ったり、1度は警察に引き渡したりと至ってまっとうな反応のアキラは、ぶっきらぼうで言葉の少ない男です。
不器用なアキラの優しさ
アルとの同居が始まってからも無愛想でキツい言葉をかけるアキラですが、アルの食事になる肉を買ってきてあげたりとわずかに優しさも見せ始めます。
吸血鬼だということを信じるあたりではアキラが嫌な奴に見えてしまいましたが、でも実際こんな怪奇現象を見せられたら、にわかには信じられないし混乱してしまいますよね。
そういう意味ではアキラも忽滑谷もまだとても落ち着いていました。職業柄悲惨な遺体を見ることが多かったりして、あまり動じない性格というのもあるのかもしれません。
ともあれ忽滑谷とアキラがアルを世話してくれる相手で良かった。そうじゃなかったらきっと怪しげな研究所に連れて行かれて解剖コース待ったなしでした。
コウモリ姿でがんばるアルが可愛すぎる
日本で仕事をしたり暮らすにあたって、アキラはアルに日本語を勉強するように告げます。カタコトの日本語で必死にがんばってしゃべるアルが健気でかわいい。
コウモリの姿の時に勉強していたら自然と閉じてしまった参考書にはさまってジタバタ騒いでいる姿とか、もうかわいすぎてどうしよう。自然と頬が緩んでしまいます。
そんな頑張るアルに優しいのが、時々手土産の牛肉を持ってアキラの家に遊びに来る忽滑谷です。アルも物腰柔らかな忽滑谷には甘えてすり寄っていってほのぼのイチャイチャ。
もしかしてアルのお相手はアキラじゃなくて忽滑谷なんじゃないの?と思わせるくらいの仲良しっぷりにキュンキュンしました。
お互いに意識しはじめる2人
いちゃつく2人を見て面白くなさげなアキラも、本当は不器用なだけで何かとアルを気にかけているんですよね。
そんなアキラの優しさもアルにはちゃんと伝わっていて、アキラと2人きりになるとなんだかモゾモゾと緊張したり気まずく感じていたり。。。
アキラは無口で表情も変わりませんが、コウモリのアルに向ける視線は穏やかで優しげで甘さがあります。これは無意識なのでしょう。
人間だれしも動物に対して見せる顔はどこか無防備で、人に向けるものとはまた違ったものになりがちです。
自分でも気づかないところで表情が和らいでいるアキラにとって、奇妙な同居人の存在はうとましくもあり癒しにもなっているのでしょう。
通り魔によって刺されてしまうアル!
世話になっているアキラのために何かをしたいという気持ちが日に日に強くなっているアル。「洗濯や掃除をしてくれたら助かる」と、アキラもなんだかんだアルの気持ちをくみ取ってくれました。
しかし事件は突然にやってきます。アキラと買い物の練習に出かけた時、コンビニで自分が何も欲しくないことに気づいて切なくなってしまったアル。
何ひとつ必要とせず、吸血鬼でも人間でもない自分。アルは、何も欲求のないままに死ぬことすらままならず永遠に生き続けるしかないのでしょうか。
切なくなり生きるのが虚しくなってしまったアルは、アキラのそばを離れて公園で佇みます。するとそこに連続通り魔が!無残に刺されるアル。
羅川真里茂先生の画力によって残虐なシーンがいっそう辛いものになっていて、しかもまさかのここで1巻が終わるというドSな展開に唖然としてしまいました。
コウモリのアルとアキラのほのぼの同居生活にニヤニヤしていたら、ラストでとんだ痛い終わりを迎えました。鬼だわ…!
実は私、1巻を読んだ後でどうしても続きが気になってしまい「花とゆめ」を買ってしまいました。続きの1号だけですが我慢できなかった。。。
もうコウモリ姿のアルに夢中
最初アルのコウモリ姿があまりにもリアル寄りで、もうちょっとデフォルメした姿のほうがいいんじゃないかなと思っていました。
でもあら不思議、ページをめくるたびにどんどんかわいく見えてくるんですね。
イライラしていたり焦っていたり嬉しそうだったり誇らしげだったり、うわヤベって顔だったりとかムキーって顔だったりとか、コウモリの顔でもはっきり分かるという。
喜怒哀楽がちゃんと伝わってきてギューっとしたくなりました。
2巻ではそんなコウモリ版のアルが皆にかわいがられて頑張ります。
吸血鬼と愉快な仲間2巻 感想 ネタバレあり
瀕死の重要からの回復
とんでもないところで終わった1巻。通り魔に刺されて雨の中倒れているアルを、アキラが探しにやってきてくれました。
まだ日本語もうまく話せないのにアルを外に放り出したまま別れてしまったから気になったのでしょう。
アキラがあのままアルを放置するような冷血な人でなくて良かった。捜しに来てくれてよかった。
吸血鬼だから死ぬことはなくても痛みや苦しみは感じます。そばに知っている人がいてくれるだけでも心強いもの。
傷の治りは早いものの力が回復せずにいるアルに、食事の肉以外に特別に自分の血を与えるアキラ。
しかし400CCだけのはずでしたがアルは自制できず吸い続け、アキラはとうとう貧血と脱水症状で倒れてしまいます。
病院に運ばれたアキラと付き添って落ち込むアルをゲイカップルだと勘違いした医者は、アキラのお尻を検査したりとすったもんだがあったりw
2巻では人間の姿のアルとアキラの関係を誤解する人もチラホラ出てきたりして、重たい事件だけではなくコメディ要素がふんだんに盛り込まれていて楽しいです。
忽滑谷の捜査に協力することに
アルは誰かの役に立ちたいと、自分を刺した犯人を追う忽滑谷の捜査に協力することになりました。
人の姿になって覚えている限りの犯人の情報を提供したり、コウモリの姿になって犯行現場から血の匂いを探って犯人の居場所を突き止めたりと動くアル。
しかし犯人の自宅のめどはつくものの、決定的な証拠がないのでしばらう様子を見ることに。。。
そこへアルがコウモリの姿で犯人宅に潜入、異常者である犯人はアルを殺虫剤で弱らせた挙句痛めつけてベランダから投げ捨てるという猟奇的な行動に出ました。
このアルが酷い目に遭わされるシーンが本当に残虐で、こんな人がどこかに潜んでいるかもしれないと思うと背筋が凍ります。
甘くて美味しいアキラの血
ちょうど張り込みをしていた忽滑谷の部下の柳川がマンションの上階から落ちてくるアルに気づき、アルはアキラの家に運びこまれました。
人間の姿になっても怪我をした酷い姿のままで、仕事で遺体には慣れているはずのアキラも絶句するしかありません。見ている方も辛いアルの変わり果てた苦しそうな姿。
痛みと苦しみを感じてもがくアルを見て、いてもたってもいられないアキラはまたアルに自らの血を与えます。
アルはアキラの血は美味しくないから飲まないと言っていますが、アキラの血はアルにとっては初めて飲む人間の血で、しかもかなり甘くて美味しいもの。
特別な人だから甘く感じるのか、吸血鬼だからそう感じるのか。
甘美な誘惑に負けず、いつかアキラを死なせてしまうまで血を飲んでしまうのではないかと恐れるアルは、やはり人の心を持っているのでしょう。
今は自制心も持ち合わせているアルですが、必死になった時にアキラの腕を離さなかったりするので、この先もしかすると暴走することもあるのかもしれません。そのあたりはちらりと不安も感じさせます。
血を欲する欲求と大事な人を傷つけたくないという葛藤の狭間で思い悩むアルの姿が遠からず描かれるのでしょうか。
人外と人間となると大きなハードルがあるのでハピエンになるのかどうか心配です。
お前が吸血鬼で良かった
献身的に世話をするアキラのおかげで、アルは順調に回復していきます。人間だったらとっくに亡くなっていたアル。
お前が吸血鬼で良かった。
穏やかな顔で告げるアキラの言葉に、アルは初めて吸血鬼になってからの自分を認めてもらえた喜びでいっぱいです。
アルの嬉しそうな表情と涙に思わずもらい泣きしそうになりました。
ぶっきらぼうで職場の部下にも誤解されていたアキラも、アルの助言によって少し態度が軟化して人間関係が良くなったり、お互いに良い影響を与えあっている2人。
最初はぶつかってばかりでしたが、不器用ながらもお互いに理解しながら少しずつ心の距離が近づいていく姿には感動しました。
忽滑谷は意外とやんちゃな問題児だった
アルがマンションの落下地点に放置されなくて良かったですね。見つけてくれた柳川のファインプレイでした。
一課の中ではどうやら問題児らしい忽滑谷の部下でいるのは大変だと思いますが、がんばれ柳川さん!
アキラやアルの前では穏やかな忽滑谷が、仕事では無茶したり警察の中でははねっかえりだというのも意外性があっておもしろかったです。
ただし一気に老けて見えちゃうので無精髭は剃った方がいいかな。
津野君の受難は続く…のか?
アキラの助手の津野君のラッキースケベっぷりと勘違い暴走(?)には笑ってしまいました。
バイトとして出入りし始めたアルの全裸にバッタリとか、アキラの無理のある言い訳にドン引きして激しく誤解したり、これからも津野君の苦難は続くことでしょう。
津野君いわく「アキラはS」だそうですがそうなの?w
ツンデレだとは思いますがあまりSっ気は感じられないので、今後に期待しちゃっていいのかしら。
木原音瀬先生の原作BL小説
ところで続きが気になって調べたら
しかしまだ完結していません。しかも5巻の発売は2011年。ちゃんと続きが出るのか心配になるくらい期間が空いています。
完結していない生殺し状態なら様子見しようかどうしようか…と悶々としています。
ああでも気になる!
暁×アルかアル×暁か
仏頂面のアキラとは正反対に、まっすぐでピュアなアルが「あきら、すき」「ほんとう、すき」とか覚えた日本語で一生懸命伝える姿にキュンとしました。
アキラの役に立とうとするアルは健気ですが、アルがアキラをソファに微妙に押し倒した「きらい、ならないで」とか、おでこをくっつけたりする姿を見て実はちょっと「おや?」と思いました。
2巻でもそこまでBLというほどの絡みもないわけですが、なんとなーく1巻の時点ではアキラ×アルなのかなというのが私の予想でした。
でも2巻を読むともしかしてアル×アキラなのかな?とも思うようになったり。はっきり分からないのが余計に妄想を掻き立てますね。
最初の印象だとアキラのツンデレ攻めが濃厚かと思いきや、案外アルの天然ヘタレ攻めもありかも。うーん悩ましい問題です。
まとめ
アキラの職場の人たちが皆いい人でアルをかわいがってくれて、いつの間にか会社のマスコットみたいになっているのが微笑ましかったです。
言葉を理解する小動物で肩に乗るというのもポイント高いなあ。コウモリなんて動物園でしか見たことがありませんが、アルなら頭を撫で撫でしてみたいものです。
相変わらずカタコトのアルですが、どんどん日本語が上手になっているのもすごいですね。違う文化にも適応していて、人間から吸血鬼になった経験から環境への順応力が高くなっているのかもしれません。
アルの気持ちはもうダダ漏れで明白ですが、アキラの気持ちは今一つ分かりにくいので、3巻以降でアキラの方もデレてくれるといいな。次巻も楽しみです。
美しく安定したベテラン作家の作画で、くすっと笑えるほのぼのコメディとサスペンスのバランスが絶妙なメリハリのある展開。
エロエロBLを求める人以外のすべての人におすすめしたい作品です。
羅川真里茂先生のコミックス
木原音瀬先生のBL小説
その他各電子書籍サイトでも発売されています。