囀る鳥は羽ばたかない32話の感想です。コミックス6巻の感想になるのでネタバレにお気をつけください。

追いつめられながらも、ギリギリのところでかわし続けてのうのうと生きる平田。今度は矢代を仲本殺しの犯人として仕立て上げようと目論みます。

平田は三角さんの前でも芝居を打ち、平然と嘘を並べたてました。平田に嵌められた矢代は、急いで影山病院を出ようとします。そこへ矢代に置き去りにされた百目鬼がやってきて…前回の復習はこちら。

囀る鳥は羽ばたかない6巻31話 ネタバレ感想

それでは以下、ヨネダコウ先生の「囀る鳥は羽ばたかない」32話の感想です。(※ネタバレ注意です)

囀る鳥は羽ばたかない6巻 電子書籍


囀る鳥は羽ばたかない32話 感想 ネタバレあり


あなたの側を離れるつもりはありません


銃で狙われたところを百目鬼がとっさに動き、車に乗せられた矢代。2人とも運よく無事なまま、とりあえず百目鬼は車を発進させます。

助手席では矢代が甘栗くんに電話をして、部外者の百目鬼に車を渡したことを非難しています。「もう一仕事してもらう」矢代の言葉に甘栗くんは「もう関わらない」ときっぱり。

「そう言うなよ。甘栗100年分やるからさあ」

「いらねーよ!」

甘栗くんは、こんなときに冗談を言う矢代にイラつきますw

「平田を引きずりおろさないと、お前もこの先面倒だろ」

矢代にそう言われてしまうと、甘栗くんも黙ってしまうしかありませんでした。甘栗くんにとっても平田はやっかいな存在です。

電話の後で、百目鬼が口を開きました。

「病院を離れたのは景山先生のためですか?」

それもあるがそれだけじゃない、と矢代。もう部外者の百目鬼には多くを語るつもりがないようです。

「俺がクビだからですか」

「元々組員じゃねえっつったろ。なんだよその態度は」

矢代は百目鬼の質問責めや、食い下がってくる態度にイライラして、車を停めさせました。出ろ、と命ずる矢代に、嫌ですと返す百目鬼。

「あなたの側を離れるつもりはありません」

百目鬼はまっすぐに前を向いたまま告げました。

俺は俺という人間を手放さなきゃならない


自分のことを特別な人のように「あなた」と呼ぶ百目鬼に、矢代の苛立ちはピークに達します。

「お前となんかやらなきゃよかったよ」

後悔の言葉を矢代から直接聞いた百目鬼は、伏し目がちに口を開きます。

同じ想いじゃなくてもいいから、部下でなくてもいいから、ただ側に置いてほしい。そう苦しげに懇願する百目鬼。しかし矢代はクールでした。

「しつこいんだよ。だから切ったのが分かんねえ?お前、こうなるって分かってたんじゃねーのかよ。分かっててヤッたんだろ?」

あの時確かに「百目鬼を失くすのが怖い」そう言ってくれた矢代。しかし矢代は、セックス中のことは全部芝居だとうそぶきます。

百目鬼を「綺麗だ」と言ってくれたことも、「父親とは違う」と言ってくれたことも。

「部下でいるなら可愛かった。それだけは本当だ」

運転席の百目鬼は、傷ついた表情でうつむいてしまいました。百目鬼の気持ちを代弁するかのように、外は雨が降り始めてきました。矢代は煙草をふかしながら思います。

(こいつを受け入れたら、俺は俺という人間を手放さなきゃならない)

しばらくの沈黙の後、百目鬼は黙って静かに車を出て行くのでした。

KYな番犬を貫く百目鬼


(あいつがバカでよかった)

百目鬼のいなくなった車内で、どこか安堵したように顔を覆った矢代は、ふと車の外を歩く親子連れに目をとめます。

小さな子供の手を引いて歩く母親。本当はこの親子のように愛し愛されたかった。しかし今まさに、矢代はその手を自ら離してしまいました。

矢代がしばし感傷に浸っていると、そこへ百目鬼がしれっと戻ってきます!んん!?この空気のなかで戻ってきたああ!いいぞおおおお。

百目鬼はどうやらコンビニで傘と水を買ってきたようです。今の!この!流れで!!コンビニとは!!!ww

矢代もさすがにこれには引き気味で、ぼんやりと百目鬼をただ見つめるしかありません。

矢代は、ペットボトルの水を差し出してきた百目鬼の手を払いのけます。しかし百目鬼は、まったく動揺しませんでした。

「側を離れる気はないと言いました」

あくまでも冷静な番犬を通す百目鬼に、怒りが頂点に達した矢代は、足で百目鬼を蹴飛ばします。

「お前のそういうところがイラつく。降りろ」再度車から降りるように命じますが、百目鬼はもう耳を貸しません。

「あの時もあなたはそう言って俺にキスした。あれも全部演技ですか?」

百目鬼に足を掴まれたまま、矢代はさらに不機嫌さを募らせていきます。しかしふと伸ばされた百目鬼の手に、思わず口を閉ざしてしまいました。

矢代にとってかわいくない百目鬼


百目鬼の顔が近づき、伸ばされた手は矢代の頬をかすめます。がしかし、甘い雰囲気になるわけもなく、実際は百目鬼が矢代のシートベルトを締めただけでした。

このときの矢代が若干ビビッてる感!く~~矢代にこんな顔をさせるのは、やはり百目鬼しかいません。

「俺からはもう何もしませんから安心してください」

「誰が不安がってるって?」

「たぶん、簡単にあなたを抑えつけられるので」

ふたたびハンドルを握った百目鬼は、矢代以上に冷静なのでした。矢代にとってかわいくない存在になりつつある百目鬼。

内心百目鬼を「可愛くねえ」と思いながら、抱かれた時の力強さを思い出した矢代は、早くも身体がうずくのでした。

影山の勘違いがひどくて和むw


影山医院では、矢代に逃げられた七原が、罵詈雑言をくりかえしていました。クソビッチ、クソ淫乱、クソドエム、クソネコなどと言いたい放題です。

撃たれた治療を受けた杉本は、言い過ぎの七原をたしなめつつ「クソヤリマン」とか言ったり。七原はそれがおもしろくありません。

自分が矢代の悪口を言うのは良くても、他の誰かに言われると腹が立つんですね。2人のやりとりを見た影山は呆れていました。

「お前ら2人ともあいつの下でよくやってるよ」

「まーあの人かっけーっすから。その辺足しても」

七原よ、足してどうするw速攻でつっこむ杉本が、ここにいる3人の中で一番の常識人でしょう。影山は意外そうに口を開きました。

「かっこいいか?あいつ」

「先生は付き合い長い割に全然分かってないっスよね、頭のこと。案外それが腐れ縁の理由かもっす。カタギに近すぎると迷惑かかりますから」

影山には見せない矢代の顔というものがあり、その距離感があってこそ、腐れ縁としての友情が続いているのでしょう。七原の分析は正解なのかもしれません。

さっき矢代を狙って撃ち込まれた銃声のせいで、影山医院にももうすぐ警察が駆けつけます。七原は、景山に自宅に帰るように促しました。

七原と杉本がこんなに落ち着いていられるのは、撃たれた血痕もなく、見知ったレクサスが走り去るのが見えたから。つまり矢代は無事だということです。

七原たちは、車を運転しているのは甘栗くんだと思っていました。

「百目鬼とうとう捨てられちゃいましたね」「あいつバカ正直だからなあ」杉本と七原が百目鬼を労わって(?)いると、影山が衝撃発言をくりだしてきました。

「矢代もフラれたからって何も捨てることねえよな」

はい!?w影山先生渾身のマジボケです。あの2人をそう捉えたんだww鈍いというかトンチンカンというか、七原&杉本もポカーンとしているのがじわじわきますw

七原たちで和んだところで、諸悪の根源の平田はというと。護衛を殴り飛ばした甘栗くんが、平田に銃を突き付け車に乗り込んでいました!

はじめて甘栗くんがかっこよく見えたところで32話は終了です。

囀る鳥は羽ばたかない32話 感想まとめ


百目鬼があの雰囲気のなかで、コンビニに傘を買いに行っただけっていうのがじわじわきますwだけどこれこそが百目鬼らしさであり、あっぱれだなと思いました。忠犬・百目鬼はこうでなくちゃ。

任侠の世界とは、忍耐に次ぐ忍耐の上に、入念に根回ししながら空気を読んでうまく立ち回らないと、簡単に足元をすくわれてしまう世界です。

少なくとも矢代クラスの上に立つ人は、いわゆるKYな人では渡って行けない世界なのです。だから、百目鬼の空気の読めなさって、矢代にとっては救いになるはずです。

これまでこうやって、矢代が大切だからという理由で、矢代にここまでズカズカと踏み込んでくる人は、残念ながらいませんでした。矢代のほうも、誰にもそうさせなかったのでしょう。

矢代に近づく大抵の人は、カラダが目当てだったり、何か見返りを求めてだったり、他意があったはずです。もしくは影山先生のような、あくまでも一般人の立場からの腐れ縁としてのみでした。

百目鬼のように純粋に、矢代を心から尊敬して、ただ愛してそばにいたいと望んで踏み込んでくる人がいなかった。

本当は矢代だって、大切にしてくれる存在を、愛してくれる存在を欲していたのに。

そこへ百目鬼が現れて、かわいい部下以上の存在になってしまいました。涙を見せて、身体の関係も持ってしまいました。

矢代は今の自分の立場も鑑みて、逃げるしかありません。

百目鬼を受け入れたら、これまで被ってきた仮面が剥がれ落ちてしまうから。自分が自分でいられなくなってしまうから。アイデンティティが崩壊してしまうから。

矢代のほうからは突き放すことしかできない以上、百目鬼がこうして空気を読まず、どこまでも粘着質につきまとうくらいでないと、矢代は救われる術がないのです。

今回は、七原&杉本&影山の3人の会話が楽しくて和みました。影山の勘違いもwきな臭くておじさま臭しかしない囀るのなかで、唯一の清涼剤でした。

簡単にズドンとヤッてしまうわけにはいかないと思いますが、甘栗くんが平田をどうするのか、次号が待たれます。

次回は9/29発売のイァハーツ2018年11月号です。

それではまた「囀る鳥は羽ばたかない」33話の感想でお会いしましょう。

追記)33話の感想を書きました。

囀る鳥は羽ばたかない6巻33話 ネタバレ感想

ヨネダコウ先生のコミックス




NightS

NightS

NightS



関連記事