「憂鬱な朝」最終話の感想です。コミックス8巻の感想になるのでネタバレにお気を付けください。

暁人のイギリス行きを目前にして、石崎家を訪ねた桂木。息子の見合いの件で苦い思いをした石崎ですが、その息子の成長に態度が軟化していました。

自分を慕う工員たちの姿を見た桂木は、暁人に誘われた渡英を断ることを決断します。暁人の出港までの束の間、一緒に過ごす2人は…。前回の復習はこちら。

憂鬱な朝8巻45話 ネタバレ感想 日高ショーコ

それでは以下日高ショーコ先生の「憂鬱な朝」最終回の感想です。※ネタバレ注意です。

憂鬱な朝8巻 電子書籍


憂鬱な朝8巻最終回の感想 ネタバレあり


暁人と桂木の違いが久世家を改革した


暁人と桂木が出港直前のホテルで盛り上がりかけた矢先、扉をノックする音が響きました。暁人が「大事なものを渡すから取りに1くるように」と呼んでいた、桂木の兄高之がやってきたのです。

邪魔されたことで不機嫌な暁人は、高之をクールに追い返します。しかも、出港ギリギリまでホテルに籠るから、雨宮にもじゃましないように伝えてほしいと、高之を伝言係にする始末ですw

暁人の態度にイラつく高之は、雨宮にぶつぶつ。雨宮は、そんな暁人の態度を知り、桂木が日本に残ることにしたのだと感じとりました。

「智之が行くわけがない」

憮然としながら、しかし冷静に分析している高之。

暁人は常に自由で、ただ先に進むだけで人を従える力があります。しかし桂木は、人を使うことに長けていて、足場を固めて采配をふるう姿にこそ人が集ってくるタイプなのです。

まさに動と静。どちらも違ったタイプのリーダーであり、どちらにも当主の資質があるからこそ、これまでモメていたのでしょう。しかしその違いが、結果的には良い方向に進みました。

高之の態度も若干マイルドに


高之としては、あの二人の主導権争いに巻き込まれたのは不本意でしたが、そのねじれこそが久世家の旧体制を変えたと評価しています。

また、書生のなかには、たびたび暁人の口から出てくる桂木について疑問を感じている者もいました。しかし、そこは高之がぴしゃりと口添えします。

「智之は戸籍上は私の義弟だ。それなりに礼を尽くせ」

暁人を教育したのが桂木であること、石崎家との縁も深いこと、久世家の元家令で名代も務めていたことなどを高之は書生たちに説明します。

「性格は悪いが仕事だけはできる男だ」

嫌味を言うのも忘れませんw高之としては、思うところはあるけれど、久世家の改革に桂木が役に立ったのは事実。気に食わない義弟ではあるけれど、認めざるをえないのでしょう。

桂木は現在、家に関するしがらみもないので、何かあっても身軽に動けます。雨宮は、幼かったあの桂木が、今どの家にも属していないという事実がこの上なく嬉しく、そして少し寂しくもありました。

桂木の本当の父親とは


暁人は出港前に、英国でお世話になる屋敷や、書生たちが学びに行く先々にまで、手紙を送ろうと準備していました。大学や世界最大の繊維機械メーカーで学ぶ書生がいることに驚く桂木。

「今からでも間に合うよ。行かない?」

「行きません」

軽口のように英国行きをまだ誘ってみる暁人ですが、桂木は軽くスルーしました。暁人としても、桂木の意思が変わらないのは、よく分かっている様子です。

「じゃあこれを渡しておかなくちゃ」

暁人は、自分に何かあればすぐに開封してほしいと、桂木に遺言状を手渡します。当主だから一応やっておかないといけないことです。

それとは別に暁人はもう一通、桂木宛ての封筒を用意していました。高之には読ませないようにと慎重に口を開きます。

「この中にはお前の父親が誰だったのか書いてある」

暁人は、何もかもを終わらせたくて、鎌倉に入る前に、桂木高正に会いに行って聞き出したのでした。

「表には出さない方がいいと思う。僕とお前だけが知っていればいいことだと思ってる」

桂木の実の父は、暁直ではなく高之の祖父。勘のいい桂木は薄々気づいていたものの、気づかないふりでひとり静かに苦しんでいたのです。

「僕はすごいなと思ったんだ。今こうやってお前と2人でいることが、本来ならありえないことだったのだとしたら、生まれてきてくれてありがとうって、それだけしか思わなかったよ」

「それは私が言うべき言葉です」

暁人の英国への旅立ちを目前に、名残りを惜しむように何度も抱かれる桂木は「好きです」と、気持ちが溢れだします。

本当はずっとこうしていたい。しかしそれは、叶わぬ夢なのです。

朝が来なければいいと思いました


翌朝、暁人が目覚めると、目の前に桂木の寝顔がありました。初めて見る桂木の寝顔に、暁人は驚いて照れながらも思わずじっと見入ってしまいます。

そっと頬にふれた瞬間、桂木が目を覚ましました。今日、暁人は出港です。

ここ数日、暁人は誰にも会わず、来ても追い払っては、桂木との甘い時間を過ごしてきました。

「疲れ果てて夢も見ませんでした。朝が来なければいいと思いました」

幸せな時間は終わりを告げようとしています。支度を急ぐ暁人は、ベッドから起き上がってくれない桂木に、視線をチラチラと投げかけます。

「私はこの部屋に残ります。行けば、耐えられず乗船してしまいそうですから」

桂木は結局見送りはせず、暁人だけが乗船場に向かいました。妙に明るいテンションで乗船し、別れを告げる暁人に、見送りに来ていた雨宮と高之は、いぶかしげな表情ですw

ところが、出港を遂げた船の上で暁人は「少しだけひとりにして」と、書生たちと距離を置きました。

一人だけ一等船室をもらっていた暁人は、みんなには見えないところで、うずくまって泣き出してしまいます。強がっていても本当は離れたくなかった。これはもらい泣きしてしまいますね…。

桂木には「2年は短い」などと言ってしまいましたが、覚悟していたとはいえ、暁人にとって、桂木のいない2年は気が狂うほど長い時間です。

僕たちが共に生きていくために、どんな朝も超えて、もっと先に進まなければ。

直継の息子・直矢が久世家の次期当主に


2年後の冬。桂木のもとには、暁人からの手紙の束が山積みになっていました。まだ読んでいない手紙のようです。

そこへ総一郎が暁人を迎えに行くためにやってきました。封も開けていない手紙を手にする桂木を見て、総一郎は呆れます。

船で帰国の途につく暁人は、髪が伸びて、少しだけ精悍な顔立ちになっていました。船室から出て、ぼうっと遥か先の海を眺め続けています。

手元にはあの懐中時計がありました。これは実は桂木のものです。出港直前、桂木のものと暁人のものを交換して「互いの2年を共に過ごそう」と約束していたのです。

この2年で、久世家の使用人たちにも大きな変化がありました。まずは女中頭の千代野が見合いをして、結婚したのです。

いくら暁人が「久世家にとらわれずに好きなように生きろ」と言ったところで、みんな萎縮して動こうとしませんでした。

それを見た暁人は、まずは女中頭の千代野を促したのです。本当はそういう芝居を打つだけのはずが、お相手が素敵な人だったようで、とんとん拍子にうまくいったのでした。千代野さん、良かった!

千代野をきっかけとして新しい道を歩む人も増え、久世家はまたひとつ変化が訪れたのです。その千代野が、雨宮のところに小さな男の子を連れてきました。

まだ幼いその子は、久世直継の息子・直矢です。直継が亡くなった後、その遺言に従って、暁人が養父となることとなったのです。

直矢を受け入れるべく、久世家でデキパキと働く桂木。桂木は今は、きくの家に引っ越して暮らしているようです。

生前、直継は、暁人に「息子に何者にもなれる機会を与えてほしい」とお願いしていました。直継が久世家に戻らなかったのは直継の意思です。しかし息子が同じ選択をするかは分かりません。

久世家に入れば暁人がいま。血筋や身分にもこだわらず、常に新しい道を選ぼうとする暁人を、直継は信じていたのです。

「僕は楽しみで仕方ない。これから2人で、久世家の新しい当主を育てるんだから」

若く幼い直矢を受け入れ、優しく養父として接する暁人。直矢もそんな暁人を見て安心したようです。

暁人と桂木は静かに互いの手を握り合うのでした。

感想まとめ


最終回を読み終えて、感無量でなんだか胸がいっぱいです。幸せを噛みしめています。

前回の冒頭の短い回想シーンで、暁人に「息子をお願いします」と頭を下げていたのは、存命していた頃の直継だったんですね。

息子を暁人に託した直継の目は確かなものでした。暁人にとっても、嬉しい久世家の跡継ぎができたことになります。

養父になった暁人と桂木に育てられるのなら、直矢くんも将来、立派な当主になることでしょう。

英国で鍛えた書生たちも育っているでしょうから、久世家が朽ちることはなさそうです。

ようやく、暁人と桂木の激動の恋に、ひとつの区切りがつきました。

ずっと追いかけてきた作品をリアルタイムで、ラストシーンの結末までしっかり見届けられて本当に良かったです。

2008年から10年という長い連載で、失速することなく、萌えとキュンを継続的に提供してくれた日高ショーコ先生には感謝しかありません。

読者のほうも、シリアスな時代物で、耳慣れない言葉や風習やお家制度を理解し、ストーリーを追うのにある程度頭を使う作品だったと思います。

みんなよく食らいつきましたよね。私もそうしていましたが、新刊コミックが出るたびに、前までの巻を読み直す人も多かったはずです。

そうしてでも、当初あれほど暗雲立ち込めていた久世家の行く末と、暁人と桂木の想いを、2人の覚悟と選択を、最後まで見届けたかった。

もう次からのキャラセレクションには「憂鬱な朝」が載ってないのかと思うとやっぱり寂しいです。コミックス「憂鬱な朝」8巻は10/25に発売です。これをもって本当の終わりですね。。。

10年間全8巻というBLでは長丁場な連載はいろいろと大変だったことでしょう。日高ショーコ先生、本当にお疲れ様でした。

一般漫画にも進出されたので、この先BLの執筆はやや抑えめになったりするのかもしれません。

また美麗な絵柄で、美しいBLストーリーを追えるのを楽しみにしています。

次回のBL作も首を長くしてお待ちしております。

日高ショーコ先生先生のBLコミックス


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