飴色パラドックス15話の感想です。コミックス5巻の感想になるのでネタバレにお気をつけください。

蕪木の地元の高校の同級生・三条くんが、卒業以来久しぶりに蕪木に会いにやってきました。御曹司の三条くんは蕪木を自分の会社にスカウトします。

しかし実のところ、三条くんは会社で厳しい状況に置かれていました。一旦は冷たい態度だった蕪木ですが、尾上の言葉を聞いて、三条くんを手助けすることにします。前回の復習はこちら。

飴色パラドックス5巻14話 ネタバレ感想 夏目イサク

それでは以下、夏目イサク先生の「飴色パラドックス」15話のネタバレ感想です。

飴色パラドックス5巻 夏目イサク



飴色パラドックス15話感想 ネタバレあり


裏切り者の存在にショックをうける三条くん


三条くんの会社を訪ねた蕪木は、会社の裏切り者を調べたメモを手渡します。立派な応接室で詳細を聞く三条くんは、内部者の裏切り行為にショックを受けていました。

「週刊誌の記者はこんなことまでわかってしまうんか」

探偵のような動きで会社の事情を把握する蕪木に、三条くんは驚きながらも感心していました。蕪木たちも、いつも芸能人のお尻をおいかけているだけではないのです。

情報が漏れていることには気づいていたものの、まさか身内からだとは思っていなかった三条くん。でも心のどこかで、やっぱりと思っていました。

蕪木のメモに名前のない社員たちも、行動は起こしていないにせよ、悪事を知っていて黙っているという状態です。

高校卒業から10年たって変わった蕪木


「つまり、味方はおらんってことか」

「味方、そんなに必要か?」

頭を抱える三条くんに、蕪木は真面目に声をかけました。昔から厳しい家族のプレッシャーに耐えて、今まで逃げずに来た三条くんのことを、蕪木は高校3年間見てきたのです。

「負けず嫌いでずっと自分でどうにかしてきたろ。ひとりでも戦える」

三条くんは子どものころから一族の期待を背負って、何でも一番になるべく陰で努力してきました。高校時代に仲良くなった蕪木の前では弱音を吐いたりもしましたが、ずっと逃げずに向き合ってきたのです。

蕪木に再会したときにすぐに「助けてほしい」と言えなかったのは、蕪木が引き受けてくれるわけがないと思っていたから。

三条くんの知る蕪木は、めんどくさがりで他人のために労力を使うなんて絶対にしない人だったのです。どうしてこんなに調べてくれたのか問う三条くん。

「おれは隠したいことが多すぎて、それがちょっとイヤになった。だからお前とのことだけでも状況が変わればいいかなって」

高校時代とは違い、自分と向き合っている蕪木に、三条くんは驚きます。10年もあれば人は変わる。蕪木は関西弁になったことで、少しだけ素を見せ始めました。

これまで関東人になりきって関西弁も使わないようにしていた蕪木。「関西人っぽくないとかつっこまれて、何かとめんどくさい」から、関西弁は伏せていたようです。

「悪かったな、ずっと連絡せんで」

再開してからのクールだった当初の態度を詫びてから、蕪木は静かに三条くんのもとを去って行くのでした。

クラスメイトやまわりから「生まれながらにして何でも持っていて何でもできる」と思われていた三条くん。しかしその裏では、相当な努力をしてあがいてきました。

蕪木はそんな三条くんに一度も「いいな」と言いませんでした。それは、自分も持っているからではなく、何にも興味がなかったからです。

だからこそ三条くんは、そんな蕪木が選んだ唯一の友達が自分であることが嬉しかったのです。そう思うと、どこに行っても負ける気がしなかったのです。


お前そのとき三条くんがいてよかったな


話し合いを終えて帰宅した蕪木を、尾上は待ち構えていました。三条くんのピンチが気になって仕方がなかったのです。心配する尾上に「そんな簡単にへこたれる奴じゃない」と蕪木。

利用していただけのわりには三条くんのことをよく分かっていることを、尾上は不思議がりました。3年もつるんでいたから、どういう男なのかはだいたい知っているのです。

「それって世間では友達って言うんじゃねえの?」

高校生の頃はかなりこじらせていた蕪木は、不仲だった親のことが嫌いすぎて、人間不信になっていたのです。

それならいっそ最初から誰の事も信用しなければいい。そんなふうに考えて過ごしていました。

「お前そのとき三条くんがいてよかったな!」

蕪木は尾上に指摘されて始めて、当時三条くんに逃げ場を作ってもらえていたことに気付きます。2人でいろんなところへ遊びに行ったり、家で過ごしたり。

うらやましがる尾上を見た蕪木は、昔、三条くんと一緒にいたときのことを思い出します。再会してからもずっと後ろめたかった三条くんとの高校時代。

尾上によって、そのもやもやしていた気持ちに光が差し込みました。過去のすべてが悪かったわけではありません。尾上と一緒にいるだけで、蕪木にはいろんなものが違って見えてくるのでした。

突然スイッチが入った蕪木は、尾上にキスをしてその気になります。

「なんか今日お前いつもと違う。ねちっこいっていうか、いつももっとすぐ入れるくせに」

尾上は、やり返すべく蕪木に乗っかります。しかし「自分でする」と言っておきながらモタモタする尾上に、蕪木は再びあっさりと立場逆転するのでした。

(昔の自分に教えてやりたい。あと何年かすれば毎日楽しいと思える日が来るってことを)

持ち前の根性で乗り切った三条くん


1か月後、満面の笑顔で蕪木と尾上の前に現れた三条くん。すっきりした顔をしているので、事業がうまくいったのでしょうか。

三条くんは尾上にも態度が軟化し、先日余計なことを言ってしまったと謝罪します。

あのあと三条くんは、蕪木のメモをもとに大幅な人員整理をしました。めんどくさいオヤジ連中は本社に帰ってもらい、同年代のメンバーで信頼できそうな人には残ってもらうことになったのです。

一から出直しのため大変だけど、そのおかげでオフィス内の風通しがよくなり、職場の問題は解決したと告げに来たのでした。

三条くんは再会してからも、やはり蕪木のことを友達として大好きなようで「また連絡する!」と軽やかに去って行きます。

そして本当にさっそく蕪木に連絡がありました。ラインや個人メールだけでなく、会社のメールや自宅の現住所まで事細かに「登録しておくように!」と若干の前のめり感です。

蕪木は若干引き気味になりながらも、どこかすっきりしていたのでした。

飴色パラドックス15話 感想まとめ


三条くんが引っ掻き回すかと思えば、蕪木がうしろめたかった過去を尾上のおかげで昇華するという良いエピソードでした。

尾上のまっすぐでストレートな性格は、蕪木にはない魅力です。

家庭事情が複雑だった蕪木は、身近な人を信じられずに壁を作って無難に生きていたのでしょう。

蕪木にとっては、都合よく利用するだけの友達だったはずの三条くんでしたが、決してそれだけではありませんでした。

苦しかった高校時代、三条くんのおかげで自分の居場所がひとつ確保されていたのです。

尾上に言われてはじめて、お互いに意味のある存在だったのだと気付かされ、過去への薄ら黒い気持ちが晴れた蕪木。

うがった見方をしていただけで、2人は普通に友達同士だったのです。

否定していた自分の過去を、時間が経って大人になった今、尾上によって肯定され救われたのでしょう。

ずっと心の奥底でくすぶっていたうしろめたい気持ちにも、靄が晴れるのように光が広がっていってホッとしました。

これからは三条くんとも、飲み友達くらいになれて、たまに会ったりできるといいですね。多少ウザがりながらw

次回は7/30発売のシェリプラス2019年9月号です。

それではまた飴色パラドックス16話の感想でお会いしましょう。

追記)16話の感想を書きました。

飴色パラドックス5巻16話 ネタバレ感想 夏目イサク

夏目イサク先生のBLコミックス



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