孫である惣五郎が源介といい仲になっていると知った菊右衛門は、同世代の立役者・雲之介に源介を託します。雲之介は源介に厳しく指導し、壁にぶつかった源介はスランプに陥りました。
落ち込む源介を恋人である惣五郎は叱咤激励します。初心を取り戻した源介は自分があるべき姿を見つめ直しました。
花恋つらね5巻28話 ネタバレ感想 夏目イサク
花恋つらね5巻 電子書籍
花恋つらね5巻30話 感想 ネタバレあり
ふっきれて迷いがなくなった源介
ふっきれた源介は、気持ち新たに舞台に立っていました。観客席で見ていた雲之介が視界に入ってもまったく動じません。まっすぐに芸と向き合う源介。
雲之介はそんな源介を見ていて、かつての源介の祖父・寿一郎を思い出していました。
雲之介がまだ10代だった頃、雲之介を「熊」と呼びだしたのは、実は寿一郎でした。
雲之介は寿一郎や菊右衛門よりも5歳下の弟分。雲之介は昔からずっと2人の姿を追って舞台に立っていました。
3人とも梨園の生まれのため、物心ついたころからずっと、雲之介よりも1歩先を歩いていた寿一郎と菊右衛門。
2人は世間から源惣コンビと呼ばれ、そのころから人気はうなりのぼりだったのです。
2人が相方役として出る舞台のチケットは飛ぶように売れ、見ている人たちを沸かせる芝居に、雲之介も憧れを抱いていました。
若い頃の寿一郎と菊右衛門と雲之介おじさん
(おれも、いつかは)
そう心に誓っていた雲之介。しかしある日を境に、寿一郎と菊右衛門が大ゲンカをしたと耳にします。それもいつもの口げんかではなく「もう今後はいっさい共演しない」というほどのもの。
驚いた雲之介は、寿一郎を問いただしました。
「どういうことだよ、もう共演しないって。嘘だよな?」
「嘘だといいんだけどなあ」
切なげに沈んだ表情でつぶやく寿一郎。ケンカは方向性の違いが原因らしく、寿一郎はそれ以上詳しくは教えてくれませんでした。
そこから菊右衛門の相手役が雲之介にまわってくることが増えていきます。
最初は寿一郎たちと肩を並べられるようになったと嬉しかった雲之介。
お客さんに自分を知ってもらうチャンスだと、気合を入れて舞台に臨みます。雲之介は、その時点では2人が共演しないのも今だけだろうと軽く考えていました。
あんたはあの人とおれ、どっちがいい?
しかしその後、寿一郎と菊右衛門が互いに襲名してからも、2人は一切共演がありません。
そのうち聞こえるようになってきたのは「やはり源惣コンビが見たい」「菊右衛門の相手は雲之介じゃ物足りない」などの声です。
あの2人のほうが良かった、雲之介はもういい、なんであの2人じゃないんだ。
あちこちから聞こえてくる雑音に、努力だけは怠らなかった雲之介も苦悩します。何をすれば寿一郎のようになれるのかが分からず途方にくれてしまいます。
ある日、雲之介が1人で10年以上前の寿一郎と菊右衛門の2人の芝居を映像で見ていると、そこへ菊右衛門がやってきました。
「おれは晃ちゃん(寿一郎)にはなれない」
「あんたは真面目すぎるんだよ。あいつとはニン(役者の雰囲気)が違うんだから、できることをやりゃあいいのさ」
「じゃあ、あんたはあの人とおれ、どっちがいい?」
思わず聞いてしまった雲之介に、菊右衛門は呆れたようにため息をつきました。
「バカなことを聞くんじゃないよ。あたしは与えられたお役をやるまでさ」
寿一郎が憎かった雲之介
菊右衛門が答えなくても、雲之介には分かっていました。2人の舞台を見れば見るほど、菊右衛門の気持ちも、お客さんの気持ちも痛いほど分かってしまうのです。
(おれにはあんたをあんなに綺麗に見せてやれないし、おれはこんなにかっこいい役者(寿一郎)を知らない)
雲之介は、若くして寿一郎には敵わないのだと悟ります。
(晃ちゃんが憎い。晃ちゃんさえいなければ、きっとこんなみじめな気持にはならなかった)
自分は菊右衛門の相手はできないと思い知らされた雲之介は、目に涙を浮かべるのでした。
(でもやっぱりあんたは、いつまでたっても俺の憧れなんだよ)
今日お前の家に泊まりに行こうかな
菊右衛門から源介を頼まれたときに「あんたほど寿一郎の芸を見てきた奴はいない」と菊右衛門に言われていた雲之介。
なぜか源介のふっきれた舞台を見ていると、そのことが頭をよぎりました。
舞台が終わり、雲之介は裏で源介に会います。もうビクビクしない源介は「目標がはっきりしたので」とまっすぐに雲之介を見つめ返しました。
「惣五郎の隣りに立つために、寿一郎のような役者になりたい」というのが源介の目標です。
迷いのない源介の言葉に、雲之介もどこか納得の表情をしていました。
「雲之介さんと祖父はライバルなんですよね。祖父がいつも言ってました。あなたがいるから一瞬も気が抜けないって」
はっとする雲之介。ライバルだなんて、いつも口だけで相手にもされていないと思っていたのです。でも本当は違った。寿一郎も、雲之介がいたから必死になれたのです。
思わず笑いだす雲之介に、源介は驚いてしまいました。
(こいつは晃ちゃんと同じ目をしてる。お前なら心臓をつかまれるような舞台をいつか見せてくれるかもしれねえな)
源介はいつになくご機嫌な雲之介に、驚きながらもお礼を言って見送りました。後ろで偶然見ていた惣五郎も、雲之介の態度の変化に驚きます。
舞台が終わって安堵した源介に、惣五郎は爆弾発言を落しました。
「おれ今日お前の家に泊まりに行こうかな」
花恋つらね30話 感想まとめ
ご、ご褒美ターンくるか!?とうとうですかね。でも家族がいるのはどうすれば?またお風呂で慣らすところからでしょうか。あーもうじれったいなあ。
ところで今回は、菊右衛門さんと寿一郎さんと雲之介おじさんの若かりし頃がメインでした。みんなイケメンじゃーん!雲之介おじさまも、普通に爽やかな青年だしモテただろうな。
特に寿一郎さんは源介に似てイケメン!そして菊右衛門さんは惣五郎に似て美青年!当たり前だけどやっぱりDNAってすごいですね。
2人が舞台にいる絵がなんとも色っぽく美しくて、絵だけでこれを表現できるって、夏目イサク先生ほんとすごいなあと思いました。
特に今は亡き寿一郎さんの色男っぷり。そしてそれに負けない妖艶さをかもしだす菊右衛門さん。2人が人気者だったのもよく分かります。
私は祖父母の若い頃のターンが好きなのですごく楽しめました。菊右衛門と寿一郎のケンカって絶対色恋沙汰ですよね。この2人は想いあっていたっていうことなのかな。
しかし芸のため家のために、菊右衛門が寿一郎に対して一方的に断った…とか、そういう感じなのでしょうか。
寿一郎さんが雲之介に「共演しないって嘘だよな?」と聞かれたとき、かなり落ち込んでいたし。
もしかして気持ちが急いて、つい菊右衛門さんを押し倒してしまったとかだったりして?さすがにそれはないか。
寿一郎が亡くなるまでほぼ絶縁状態になっていたようですが、孫たちは公私ともにパートナーになれるよう祈りたいです。
雲之介おじさんの嫉妬心もすごく理解できました。若いときからいつもいつも優秀な寿一郎と比べられて、さぞつらかったでしょう。菊右衛門の相手として認められず、さぞ悔しかったことでしょう。
ライバルがいたからお互いに成長できた。とはいえ、その当時は若さもあり、かなり悩んだはずです。
彼にとっての救いは、それでも寿一郎をとても尊敬していたこと。尊敬できる役者として、いつも寿一郎がそこにいてくれたことでした。
今は昔のことも乗り越えて、立役者の重鎮になっている雲之介おじさまですが、熊だった(違)若い頃は、いろんな気持ちを抱えながら、日々努力を惜しまずに舞台に立っていたのでした。
もちろんそれがあってこそ、今の歌舞伎界でのポジションがあるのです。
次回は9/14発売のディアプラス10月号です。
それではまた「花恋つらね」31話の感想でお会いしましょう。
追記)31話の感想を書きました。
花恋つらね5巻31話 ネタバレ感想 夏目イサク
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