花恋つらね40話の感想です。ネタバレになるのでお気をつけください。

とりあえず2人でこっそりと会える場所を探し始めた源助は、高校の同級生の西田君のマンションを訪れて、事情を説明し無事に場所を確保しました。

惣五郎はなんとかして周りを納得させようと考えています。そんな惣五郎を見た菊右衛門は、若き日の自分と重ねてしまうのでした。前回の復習はこちら。

花恋つらね7巻39話 ネタバレ感想

それでは以下「花恋つらね」40話のネタバレ感想です。

花恋つらね7巻 電子書籍



花恋つらね7巻40話 感想 ネタバレあり


寿一郎には嘘がつけない菊右衛門


(あの時、違う選択をしていたら、どうなっていたんだろうと何度も考えた)

孫たちの恋心を知り、ふと昔のことを思い出す惣五郎の祖父・菊右衛門。

50年前、菊右衛門も寿一郎(源助の祖父)も、まだうら若き20代だった頃、歌舞伎界では2人の評判がうなぎ登りでした。

同い年で梨園に生まれ、幼馴染として兄弟のように育ち、将来を嘱望される名家の御曹司として一心に期待を背負ってきた2人。

成人になるにつれ、相手役として板に立つことも増えていました。

お互いに芝居の途中で意識が飛ぶような、途中からお客さんの存在が消えるような、息ぴったりの舞台を重ね、2人で経験を積み上げていきます。

「やっぱりお前と組むのはいいなあ。わざわざいろんなことを言わなくていいから、集中できるんだな。たぶん」

「長い付き合いだからね」

何も言わずとも、だいたいお互いに何を考えているのかが分かってしまう菊右衛門と寿一郎。

菊右衛門は当時、世間からは「クールで神秘的な存在」だと思われていましたが、寿一郎からすると「よく見れば全部顔に出る」ということなのです。

「あんたにしか分からない程度なら、取り繕えているってことだろ」

「かもな。でも俺には嘘はつけないぞ」

いつもそばで見ている寿一郎に隠し事はできない寿一郎なのでした。

御曹司2人に見合い話が続々と


菊右衛門は、寿一郎と一緒に舞台に立つのが楽しくて仕方がありませんでした。

こうしたい、と思えば寿一郎もそのように動いてくれるし、なにも考えなくても役としてそこにいれば、心身ともに勝手に動きだすのです。

物心ついた時から板に立っていたけれど、そんな芝居ができるのは、相手が寿一郎の時のみ。

まだまだ未熟だとは思うものの、周りからは「惣源コンビ」などと呼ばれるようになり、観客も喜んでくれることが、菊右衛門には何よりも嬉しかったのです。

自分たちの進む方向はこれでいいのだと、このままずっと寿一郎と一緒にやっていくのだろうと思っていたそんな矢先、菊右衛門に見合いの話がやってきます。

「あなたそろそろ考えなきゃいけないわよ。もう24になるんだから」

「え、でもまだ24…」

「何言ってるの!母さんが結婚したのは22の時よ!あなたはもう24!」

「でも姉さんもまだ…」

「姉さんとあなたは違うでしょ!あなたはこれから舞台も大変になるんだから先のことちゃんと考えなさい」

いっそお前と結婚できたらいいのにな。


「お前んとこもその話出たのか…。親同士で結託してるなこりゃ」

菊右衛門が寿一郎に愚痴ると、どうやら結婚の話は菊右衛門の家にだけ出ているというわけではないようです。

いつかはとは思っていたもののいまだにピンとこない菊右衛門。

「で、どうするんだよ。受けるのか?その話」

「受けたかないけど断るだけの理由がないんだよ」

ずっと彼女のいない菊右衛門。寿一郎も彼女とはなかなか長続きしないタイプです。

「なんかなあ、会ってても舞台より楽しいって思えないんだよな。芸の話とかできないし、ほかの事はよく知らないし。時間もったいないって思っちまう」

「まあわかるけど、それを言っちゃ…」

板に立つ方が楽しいと言う寿一郎に、菊右衛門はため息をつきます。すると寿一郎が真顔で口を開きました。

「おれはお前といる方がいい。いっそお前と結婚できたらいいのにな」

寿一郎の真剣なまなざしに一瞬ドキリとする菊右衛門は、思わず「何バカなこと言ってんだよ!」とつっこみます。

慌てる菊右衛門を見た寿一郎は、それ以上は何も言ってきませんでした。

寿一郎も菊右衛門も見合いを断っていた


結局、菊右衛門の見合いの話は、返事をぐずぐずしているうちに先方から断られ、なかったことになりました。

しかしそれで終わったわけではありません。菊右衛門はその後も数回、見合いをうやむやにして断ってきました。

そうこうするうちに菊右衛門は、5歳下の雲之介からも見合い話についてつっこまれます。

「まだそういう気分になれないからってだけだよ。そんなんで先方に会っても失礼だろ」

「晃ちゃん(寿一郎)もこないだの見合い断ったって」

雲之介はしれっと寿一郎のことにも触れて、菊右衛門の様子を伺うのでした。

いっぽう「源惣コンビ」は、いつも歌舞伎を見ない若い層にもじわじわと人気が広がっていき、その人気に目を付けた歌舞伎界の上の人たちもそれに目を付け始めます。

これは売れる、と確信した上層部の人たちの働きにより、菊右衛門と寿一郎はさらに共演が増えていきます。

おれはごまかせねえよ。


菊右衛門は寿一郎との舞台や練習を重ねるにつれ、どんどんと違和感を覚えるようになっていきました。自分の鼓動が激しくなっていく違和感です。

菊右衛門にとって、寿一郎との舞台は本当に楽しくて、この時間がずっと止まればいいと思うこともあり、こんな相方は唯一無二だと思っています。でも、だからこそ…。

練習中、あからさまな好意を向けてくる寿一郎の手を思わずはねのけてしまった菊右衛門。

まわりへは「静電気に驚いただけ」だとごまかしてやり過ごしますが、寿一郎には嘘はつけません。

その日の練習後、2人きりで残ったとき、寿一郎が声をかけてきました。

「俺があからさますぎた。ごめん」

「なんのことだよ」

「おれはごまかせねえよ。もう気づいてるんだろ、俺はお前が」

寿一郎の告白を途中で遮った菊右衛門。

「お前もそうならいいじゃねえか」

「いいわけないだろ!」

菊右衛門の手にキスをする寿一郎。菊右衛門は動揺しながらも、自分たちの置かれた立場をぐるぐると考えます。

寿一郎の手を取れなかった菊右衛門


歌舞伎の名門に生まれた宿命。今まで脈々と何百年にもわたって受け継がれてきた芸と血を、歌舞伎の世界を次の世代に残していかなければならないのです。

今この瞬間の自分たちの気持ちだけで、それらを放棄することなど絶対に許されません。

さらに手を払いのけうつむく菊右衛門に、寿一郎はきっぱりと告げました。

「大丈夫だよ、なんとかなる。なんとかするから」

真剣なまなざしと、差し出された手。その手を握り返したくてもできない菊右衛門は、気持ちを押し殺して寿一郎から背を向けました。

「わたしたちは外の世界を知らないから、きっとこれからいい相手が見つかるよ」

菊右衛門は、寿一郎の元を去ってから、ひとり涙を流します。

(気持ちを認めたらきっともう戻れなくなる。だってあたしはあんたとここで生きていきたいから)

花恋つらね40話 感想まとめ


祖父たちもまた、お互いに想い合っていたのに、叶わぬ恋に胸を痛めていた人たちだったんですね。

歌舞伎の名門という家に生まれた重圧や、跡取りを残さなければいけなというプレッシャーは、かなりのものだったでしょう。

しかも50年前の話だから、今よりずっと封建的で保守的な雰囲気の中での話です。

寿一郎が力強く「なんとかする」と言ってくれても、どうしてもその手をつかむことができなかった菊右衛門。しかし、これは誰も責められないことです。

あまりにも重いものを背負いすぎていた、若き日の菊右衛門と寿一郎。どうしても気持ちひとつで突っ走れなかった、昔の苦くて悲しい恋の思い出。

叶わなかった菊右衛門と寿一郎の恋が切なくて、なんだかやるせない気持ちになってしまいました。

自分たちの若かりし頃と重ねて見てしまっていたからこそ、菊右衛門さんは孫たちの恋に対して特に動かなかったんですね。

寿一郎さんは源助にそっくりで、菊右衛門さんの若いころのルックスは、惣五郎と似ていて(当たり前か)、でも惣五郎よりもクールビューティ系で、これはこれでかなりのイケメンです。

ただ、菊右衛門さんと寿一郎さんが今の惣五郎と源助に似ているなーと思うにつれ、思うことがひとつあります。

もし50年前に2人が一緒にいる道を選んだら、菊右衛門さんが寿一郎さんの手を取っていたら、惣五郎と源助はこの世にいなかったわけです。

それを思えば、今はもうこうなってよかったのだと思うしかありません。

おそらく菊右衛門さんが寿一郎さんの手を取らずに去ったこの後から、両家はずっと絶縁していたんですよね。

寿一郎さんは現段階ですでに亡くなっているわけですが、最期の時は菊右衛門さんと会えていたらいいなと思ってしまいます。

50年の時を経て、最期だけでも2人の気持ちが通じていたら…。

寿一郎さんの最期の時に、菊右衛門さんがこっそり病室に会いに行ったりしていることを祈りたいです。

次回は12/14発売のディアプラス1月号です。

それではまた「花恋つらね」41話の感想でお会いしましょう。

追記)41話の感想を書きました。

花恋つらね7巻41話 ネタバレ感想

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