年末進行で多忙を極める蕪木と尾上。同居話が本格化した途端に、すれ違いが生じたり価値観の違いから衝突してしまいます。
しかし蕪木が寝不足で倒れたことから無事に仲直りをして、2人はついに一緒に暮らすことになりました。前回の復習はこちら。
飴色パラドックス6巻19話 ネタバレ感想
それでは以下、夏目イサク先生の「飴色パラドックス」20話ネタバレ感想です。
飴色パラドックス6巻 夏目イサク
飴色パラドックス20話感想 ネタバレあり
2人暮らしの部屋も決まりました
怒涛の年末進行がようやく終わり、冬休みに突入した蕪木と尾上。運よく目をつけていた同居物件がまだ空いていたため内見し、とんとん拍子で借りられることになりました。
バタバタしているうちに年が明け、2人は一緒に初詣を済ませがてら、同居について相談します。引っ越しまで1か月もないため正月の帰省はしませんでした。
この冬休み中にある程度は荷物をまとめておかないと、絶対に間に合わないからです。土日も全部休みがとれるとは限らないのが現状なのです。
同居にあたり冷蔵庫やベッドなどの大型家具家電は、尾上のものを処分して蕪木のものだけを残すことになりました。
おれら本当に一緒に住むんだ
「じゃあな、次は会社?」
「ああ、気が向いたら飯でも行くか」
「だな。とりあえず片付けがんばろう」
初詣を終えてからはお互い家の整理をするためにいったん別れます。
(おれら本当に一緒に住むんだ)
表面上は平静を装っている尾上ですが、蕪木と別れたとたんにニヤニヤと頬が緩むのでした。
尾上が今のアパートに住んでもう8年。大学を卒業後、会社に入ってから4年が経過しています。
今の住まいは立地もよく特に不満もないけれど、まさか蕪木と同居するために引っ越しをすることになるとは、尾上は思ってもみませんでした。
同居を考えてドキドキわくわくしながら部屋の片づけをしている尾上は、完全に浮かれモードです。
他人との同居も初めてだし、今より広い部屋で暮らせるのも楽しみです。
なによりも蕪木に「お前と一緒に暮らすのは楽しそうだと思ったから」などと言われて嬉しくて、浮かれずにはいられません。
突然よく分からないことを言い出した蕪木
年明けの初出勤でも尾上はご機嫌でした。職場の面々はみんな仕事はじめで憂鬱な顔をしているのに、尾上だけが笑顔いっぱいです。
仕事の合間に引っ越しの業者を決めたり、役所周りや電気ガス水道などライフラインなど各種の手続きをするのも、同居の楽しみを思えば負担になりません。
お昼休み時間にも食事しながら同居の打ち合わせをするなど、尾上は順調で充実した時間を噛みしめていました。
ところが。
「お前が処分するって言ってた家電、しばらく捨てずに置いておかないか?」
蕪木が突然、訳が分からないことを言い出したのです。
同居にお試し期間!?
「実際一緒に住んでみたら、やっぱ無理ってなる可能性もなくはないなと思ったんだよ」
「は?それって同居にお試し期間を設けるってことか?」
「あーそんな感じ」
急にそんなことを言い出した蕪木に焦る尾上。
「なんで今そんなこと言うんだよ!」
「俺ちょっと同居のこと軽く考えすぎてたかな…と」
混乱した尾上は、よくわからないまま流してしまいましたが、デスクでは悶々と考えていました。
(逆に重い同居とは?)
どちらかがどちらかを養うとか、例えば結婚とか、そういうものだったら確かに慎重に考えないといけないというのは分かります。
しかし今はそういう話ではなく、単純に男2人で同居するというだけの話になるはず。
(なんなんだ今になって。もしやあいつまだ俺にすごい秘密があったりすんの?)
実家がお金持ちだという以外にも何か秘密があるのかと、尾上はあらぬ方向での勘違いをし始めます。
そこへ笠井が外回りから帰ってきました。笠井には蕪木との同居の話もしてあります。つまり笠井は、尾上にとってはちょうどよい相談相手。
「お前この後予定ある?」
ある意味、家族になろうとしてるってことでしょ
食事ついでに飲みに行く尾上と笠井。尾上はさっそくお試し期間を設けるなどと言い出した蕪木のことを愚痴りました。
「もしかしたらそれ、俺のせいかもしれないす」
「なんで?お前あいつになんか言ったの?」
尾上は笠井の口から出た言葉に驚き問いかけます。実は笠井はおととい、蕪木と一緒に移動している車内で、尾上との同居について触れていました。
「おめでとうございます」
「なにが?」
「尾上さんと一緒に住むことに決まったって」
「なにがめでたいんだよ。同居するだけだぞ」
「いやだって、その年で一緒に住むってちょっとゴールみたいな感じあるじゃないですか!」
蕪木たちは27歳。普通に考えたら、友達同士ではなく恋人同士がこの年齢で同居するということは、男女なら結婚ルートという流れです。
「一緒に生活するってことはある意味、家族になろうとしてるってことでしょ」
蕪木は笠井のもっともな言葉に驚いて固まってしまいました。
あの時のことを思い出した笠井は、尾上にこの流れを説明します。「必要以上に重く考えたのかも…」と笠井はちょっぴり責任を感じていました。
家族っていうのにビビっただけ
「でもなんでだ?いーじゃん家族。おれがそれ言われたら嬉しい気がする。もっかい考え直そうとは思わねえよ別に」
「おれもそんなプレッシャー与えようと思って言ったんじゃないんですけど」
特に家族ということに不満も疑問もない尾上は不思議そうでした。すると横に座っていた女性が突然口をはさんできました。
「いやそれ家族っていうのにビビっただけやと思う」
驚いたことに、となりに座っていたのは蕪木の妹のノリちゃん!笠井とノリちゃんはマサやんの店で何度か会っていて知り合いのようです。
「ていうかいつからここにいたの?」
「1時間くらいかな」
別の席に座っていたノリちゃんは、尾上に気づいてそっと話を盗み聞きしていたのでしたw
ノリちゃんによると、兄の蕪木が突然同居についてお試しなどと言い出したのは、これまで「家族」というものがどんなものか実感がないからなのだとか。
「蕪木家は、家という枠組みはあっても、昔から両親ともに浮気しててみんなバラバラで個人主義。本当の家族ってのがどんなものかよく知らないのよ」
ノリちゃんは幸いにも入り浸っていた親友の家が仲良し一家だったので、あったかい「家族」の疑似体験のようなものを経験していました。
「でもニイはそういう経験もなくて、いざそういうのになるって言われて、ほんまに自分にそんなことができるのか?ってひるんだんと違うかな」
引っ越し前に1回おれの実家に行かねえ?
ノリちゃんは、そんな蕪木家でも今とても幸せなので大丈夫なのだと微笑みます。蕪木とも普通に電話をするようになりました。
「じゃあおれ蕪木に会ってこようかな」
「なんかいい案、思いついた?」
「いや、まだ全然わかんないけど…」
尾上はどうするか決めることなく、まっすぐに蕪木に会いに行きました。蕪木は蕪木で、お試し期間などと言ってしまったことをちょっぴり後悔しつつドアを開けます。
そしてドアが開いた瞬間、蕪木に抱き着く尾上。
「お前さ、引っ越し前に1回おれの実家に行かねえ?」
飴色パラドックス20話 感想まとめ
ご実家にご挨拶キター!とか言って盛り上がっちゃいましたが、でもそういう大げさなことじゃなくて、尾上が尾上なりに「家族」というものを、自然な形で見せたかったのでしょうね。
笠井の言葉をきっかけに、同居を重く受け止めすぎた蕪木。
こちらもこちらで根がまじめというか、尾上への気持ちが真剣だからこそ、経験不足の「家族になる」ことに不安を感じて、思わずひるんでしまいました。
蕪木家の家庭環境がほぼ形だけの家族だったため、蕪木にとって尾上が人生初の自ら選んだ家族になるわけです。
いざとなると初めてのことにビビッてしまう蕪木の気持ちはよくわかります。
うまくいかなかったときのために保険をかけるのは、経験がないことへの不安や自信のなさからくる防衛本能のようなもの。
とくに蕪木のように、ひとりで何でも器用にこなしてきた人にとっては、他人を巻き込み、さらに仕事と違って感情次第でどうとでもなることについて、やや腰がひけてしまうのは無理もありません。
失敗に対する恐怖心や緊張感が高すぎて、過敏にならざるを得ないんですよね。ひとことで言えば「気負いすぎ」になるかな。
蕪木は2人の今後を含めた関係性を深く考えすぎて、尾上のようにただ単純に好きな人と過ごす「今」を楽しめないのでしょう。
人との関係性なんて時間とともに変化していくものだし、家族という集団の捉え方も人によって違うものです。
同居するから家族になるのだと重く受け止めすぎず、今の同居を楽しみながら、気づいたらいつの間にか家族になっていた…というのが自然な形だと思うのですが。
蕪木の気持ちの問題ですね。思いきって前進できるのかどうか、蕪木の人としてのさらなる成長はそこにあるとも思います。さてどうなるでしょうか。
尾上のあったかい実家の雰囲気に触れたら、また蕪木の考え方も変わってくるんじゃないかな。同居生活って2人で作っていくものですからね。
次回は3/30発売のシェリプラス2021年5月号です。
それではまた「飴色パラドックス」21話の感想でお会いしましょう。
追記)21話の感想を書きました。
飴色パラドックス6巻21話 ネタバレ感想
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