新たなチャレンジとしてドラマ出演した惣五郎。しかし撮影では、歌舞伎役者特有のセリフ回しになってしまい、何度も撮り直しを食らって凹んでしまいます。
うじうじ悩む惣五郎は、源介に会って励ましてもらううち元気になるのでした。いっぽう蔦丸さんは相変わらず2人の交際には反対で…。前回の復習はこちら。
花恋つらね7巻43話 ネタバレ感想
それでは以下「花恋つらね」44話のネタバレ感想です。
花恋つらね7巻 電子書籍
花恋つらね44話 感想 ネタバレあり
幼少期から女形に興味をもっていた蔦丸さん
小さいころからずっと、きれいなものが好きだった蔦丸さん。舞踊も男踊りより、断然女踊りのほうが得意でした。
舞踊の先生にもしょっちゅう「繊細な表現が上手」「将来女形の役もたくさんやってほしい」などと褒められていました。
ますます女形に興味を持つようになった蔦丸でしたが、成長するにつれ、自分が目指さないといけないのは女形ではなかったと思い知らされます。
なぜなら蔦丸は、歌舞伎界の宗家である大谷屋・新井寿一郎の後継者。
しかしその名前を引き継ぐだけの能力がないことは、早い段階で蔦丸さん自身、なんとなく気づいていたのでした。
「どうにも頼りない」「あれじゃ喧嘩に説得力がない」「身体も小さいし線が細すぎる」「将来はお家芸の荒事をこなさないといけないのに…」
自分の芝居を観た人が口々にそう言っているのを、幼い蔦丸は知っていました。
どんどん募っていく立役への苦手意識
稽古の時も、父親はいつでもしかめっつらで「もうちょっとどうにかならないものか…」と困惑顔。
子役を卒業してからは立役が圧倒的に増えたこともあって、女形の時は褒めてくれていた舞踊の先生にも、まっっったく褒められなくなりました。
祖父である寿一郎さんには鬼のように叱られる日々です。
「お前そんななよっちい姿をお客さんに見せる気か!ふらふらするの直るまで稽古場から出るんじゃねえぞ!」
実際にこんな風に言われ、その時は倒れるまで稽古をし続けた蔦丸は、ついには腰を痛めてしまいました。
蔦丸の評価が低いのは、同世代の役者たちの体格が良いのもあるのかもしれません。人はどうしても同世代同志で比べてしまうからです。
(むりやり大食いしても吐くだけで太れないし)
別にガタイがいいことが立役の条件ではないのに、もともとも貧相な身体のコンプレックスと、まわりの反応もあって、どんどん立役への苦手意識は膨れ上がっていくのでした。
なんで僕、長男なんだろ
疲れ果てた蔦丸は、菊右衛門さんの出ているDVDを見ては心を慰めていました。
細身だけど存在感も迫力も満点で、昔から蔦丸の憧れの役者だった菊右衛門。
(いいなあ。こんな役者になれたらなあ)
女形のほうが向いていると感じている蔦丸は、体格も顔立ちも母親似です。今でも女形をやった時だけは、お客さんの反応もいいのです。
(なんでうち、女形の家系じゃないんだろう)
口に出すことはなくとも、寿一郎の名前は弟の源介が継げばいいと思っていました。実際、源介は幼い頃から祖父に似ていると言われており、将来も身体が大きくなりそうです。
(なんで僕、長男なんだろ)
宗家の長男に生まれてしまったことを鬱々と考えながら板に立っても、うまくいくはずはありません。
「下手くそだな」「いつまでたっても成長しない」「声も踊りも安定しない」「役に負けてる」「なのに寿一郎の孫だから良い役を与えられて」「いいね御曹司は」
聞きたくないと思えば思うほど、周囲の人たちの不満の声は耳に入ってきます。これでも蔦丸は精一杯やっているのです。
でも上手くない。そんなことは自分が一番よく分かっています。
(僕は絶対、その名にふさわしい役者にならなきゃいけないのに)
宗家の長男だからこそ、祖父も父親も必死になって稽古を付けてくれるのです。でも蔦丸はもう立役が怖くなってしまっていました。
(このままだと歌舞伎が嫌いになってしまう)
昔はもっと舞台に立つのが楽しかったはずなのに。膝を抱えて悩む蔦丸は、ある日思いきって祖父のところへ行くのでした。
女形への転向を祖父に告げました
「ねえじいちゃん、僕立役じゃなくてもっと女形のお役がやりたい。将来は女形になりたいんだ」
「それだと寿一郎の名は継げねえぞ」
「うん、わかってるよ」
「…そうか。ならいい。わかった」
あっさりとOKする寿一郎。蔦丸は自分から言い出したことに、反対もされず、理由すらきかれなかったことにショックを受けます。
(やっぱり僕、ずっとダメだと思われてたんだな…)
祖父の反応にがっかりはしたけれど、自分でも向いていないと思っていた土壌でもう戦わなくていいと思うと、少し気が楽になった蔦丸。
いずれは世間も女形しかやらない蔦丸を見て、寿一郎を放棄したのだと気づくはずです。
(その時残念がる人はいるだろうか。それまでにちょっとでも良い役者になっていれば、逃げた僕をみんな許してくれるだろうか)
菊右衛門さんの言葉が心の支えに
女形でやっていきたいと祖父に告げてしばらく経ち、蔦丸は稽古場で菊右衛門さんを見かけます。
寿一郎との不仲説もあり、菊右衛門とは一度も同じ座組になったことはありません。憧れの人を目の前にして緊張している蔦丸は、挨拶しようと頭を下げました。
「蔦丸さん、あなたこれから女形をやっていくんだってね。いいね、あんたには女形が向いてると思ってた。楽しみだよ」
頑張ってね、と温かい言葉をかけてもらった蔦丸は、その背中を見送りながら大粒の涙を流します。
(ずっとその言葉が聞きたかった。僕はずっと誰かに期待してほしかった)
誰よりも憧れていた人が自分の芝居を見てくれていたこと、そして応援の言葉をかけてくれたことが嬉しくてたまらない蔦丸は、この選択を決して後悔しないと誓うのでした。
あとはみんなに、そして菊右衛門に認めてもらえるような立派な役者になるだけです。
おれが良い役者になるには惣五郎が必要!
そんな昔があって、今憧れの菊右衛門に稽古を付けてもらっているという奇跡に、蔦丸は改めて感動するのでした。
とはいえそのご縁を作ってくれたのが、弟の恋人である惣五郎。2人が付き合っているという事実は、大谷屋にとっても大問題です。
いずれは菊右衛門にまで迷惑がかかると、蔦丸は悩むのでした。
悶々と考えていると、そこへ源介がやってきます。稽古のためのDVDを借りに来た源介は、気になっていたことを兄に聞いてみました。
「兄貴、寿一郎を継げるならそうするって言ってたじゃん。あれって本当なら自分が継ぎたいってこと?」
「は?全然そんなこと思ってないし思ったこともないよ」
「え!?そうなの!?」
「もし次の候補がいなかったら、あんなに簡単に自分の希望を聞いてもらえることはなくて、今もみっともない姿であがいてたかもしれない。だからあたしはあんたが寿一郎になるためなら、なんだって協力するって決めたんだ」
厳しい表情の蔦丸さん。
「だからこそ、その足かせになるってわかってることに賛同はできない」
「じゃあ俺と惣五郎のこと応援してくれよ」
即答した源介に、蔦丸さんは一瞬ポカンとしてしまいます。
「おれはいつか寿一郎の名前を継げって言われたら、喜んでそれを受ける。でもまずおれが良い役者になるには、惣五郎が必要なんだよ。お守りみたいなもん!」
まっすぐに目を見て言い放つ源介。
「だから別れる気は1ミリもない。それを邪魔するっていうならそれこそ足かせだから!よろしく!」
キッパリ言って、さっと部屋を出た源介の表情には覚悟がありました。
花恋つらね44話 感想まとめ
うわー蔦丸さん…。宗家の長男に生まれたばかりに、女形としてやっていくと決めるまでは、なかなかハードモードな時期を過ごしていたんですね。
あきらかに適性に合わないことでも、宗家の長男だというだけで寿一郎の後継者として立役として見られ、しかし舞台では今ひとつパッとせず、周りの大人たちも困惑するばかり。
悪口も当然耳に入ってくるし、やりたいこととやれることと望まれることが噛み合わずちぐはぐだった蔦丸さんは、苦しい時期を過ごしました。
「女形でやっていきたい」と告げた時、寿一郎さんがあっさり受け入れたことにショックを受けていた蔦丸さん。
でも本当は、寿一郎さん自身も孫の適性に悩んでいたのではないでしょうか。蔦丸さんの華奢な体格、線の細さ、やわらかい表情。そのどれもが明らかに女形向きです。
長年歌舞伎の舞台に立っている寿一郎さんなら、孫の蔦丸さんに立役の適性がないことは、薄々分かっていたはずです。
だからといって立場的に後継者となりうる孫に「女形を目指せ」とは言えるはずもなく、大谷屋の大人たちの間でも、この問題はどうにもできず暗礁に乗り上げていた感じだったのでは。。。
だから蔦丸さんから言い出してくれたことは、祖父である寿一郎さんだけでなく、両親や近しい親族たちにっとっても、ほっとした部分があったかもしれません。
鬱屈とした複雑な気持ちのまま、女形を目指すことになった蔦丸さんを支えたのは、女形のレジェンド菊右衛門さんでした。
憧れの人に期待されているという事実は、若い蔦丸を奮い立たせるには十分です。
立役としての自分へのダメ出しや不満ばかりを耳にしていた蔦丸さんにとって、菊右衛門さんの言葉は宝物となりました。
「立役から逃げた」と、自分の選択に罪悪感すら感じていた蔦丸さんは、菊右衛門さんのおかげで歌舞伎を嫌いにならずにすみました。
そして今、女形に邁進する一人の役者が出来上がったんですね。菊右衛門さんに稽古を付けてもらって、さらに役に磨きをかけることでしょう。
蔦丸ストーリーに感動していたら、源介もまた、この兄にしてこの弟あり!というかっこよさを見せてくれました。きらっきらしてて本当にいい男です。
惣五郎のことを「良い役者になるために必要な人」とキッパリ言い切った源介に拍手!
「別れる気はない」とはっきり言いきったのも素敵でした。兄に惣五郎への気持ちの覚悟を見せたんですね。
こうなると、後継者問題について、まずは源介が寿一郎を継ぐ。そして蔦丸さんが誰かと結婚して男児が生まれたら、その子が源介の次に寿一郎を継ぐ。
こんな感じなら大谷屋の血筋が途絶えることもないと思うのですがどうでしょうか。蔦丸さんが長男なんだし、長男の子ならお血筋的にも何の問題もなさそうです。
ただしそうなると、蔦丸さんへの結婚&妊娠のプレッシャーがすごいことになってしまいますね。
代々続く伝統芸能の世界の宗家の血を絶やせないというのは理解できるのですが、うーん根深い問題ですね。
源介が兄への宣戦布告(?)をして、菊右衛門さんは知っていて知らんふりのスルー状態。どう決着するのか、まだまだ源惣コンビから目が離せません。
次回は5/14発売のディアプラス6月号です。
それではまた「花恋つらね」45話の感想でお会いしましょう。
追記)45話の感想を書きました。
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