蔦丸と、個人の部屋以外では仕事の同僚に徹すると約束した惣五郎と源介。お互いの祖父同士の昔の共演映像を見て改めてそのすごさを実感します。
両家ともに名門であり後継ぎという立場から、親しい友人以外自分たちの味方はあまりいません。そんな中、惣五郎は、これまでにない大役を任されました。前回の復習はこちら。
花恋つらね8巻52話 ネタバレ感想 夏目イサク
それでは以下「花恋つらね」53話のネタバレ感想です。
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花恋つらね53話 感想 ネタバレあり
菊右衛門からダメ出しを受ける惣五郎
8月になり弁天小僧(弁天娘)の稽古が本格的に始まりました。とはいえ全体の稽古は直前だけなので、それまでは南郷役の武市兄とともに身内だけでの稽古です。
惣五郎は懸命に稽古に取り組みますが、祖父である菊右衛門からはダメ出しの嵐。
「今のあんたはいつも通りのただの娘役だよ。弁天のよさがまったく出てない」
(研究したつもりだったんだけど…)
叱られっぱなしは想定内と考えているとはいえ、やはり惣五郎は凹んでしまうのでした。
「ごめんね、武兄。俺の注意ばっかであんまり稽古にならなかっただろ」
「いやおれも南郷久しぶりだし。じいちゃんの弁天の解釈聞けて勉強になったから」
弁天と南郷は役の上では兄弟っぽいため、武市とのやりとりのところくらいはそれっぽくできると思っていた惣五郎。しかしそう簡単にはいきませんでした。
今回の菊右衛門はいつもの10倍は厳しいようです。なんといっても「大歌舞伎」での初主役。
大歌舞伎というのは、若手が中心の花形歌舞伎とは違って、ベテランの役者が中心の公演なのです。
菊右衛門を目指している惣五郎なら、避けては通れない道です。
いくらダメ出しをされたとしても、これは女形が主役の作品を数々演じてきた立女形・松川菊右衛門になるための第一歩。
役者としてこれを乗り越えれば、きっと次につながるのです。つまりそれは、源介の一番の相方になるための大きなチャンスでもあるのでした。
惣五郎の弁天は悪党っぽさが弱すぎる
(ここは何が何でもやるしかない)
決意を新たに、改めて関連書籍やビデオを見て研究をする惣五郎。弁天は、12歳の時から悪の道に染まり、盗みはするけど非道はしない、今は17歳で妙に大人なキャラクターです。
そして稽古にも励み、また菊右衛門から厳しい指導を受ける日々です。それだけではなく、過去に何十回も弁天を演じている先輩役者にも稽古をつけてもらいました。
「あなたの弁天は悪党っぽさが弱すぎるね。実は男だってバラすときギャップがなければ面白くないだろ?」
先輩の目にも、惣五郎の弁天はいまひとつピンとこないようでした。菊右衛門に至っては、もうどうしようもなさげに大きなため息をつかれてしまいます。
「立役がここまで下手とは思わなかった。そんなお上品な弁天はいらないって言ってんだろ」
呆れながら困惑しているような菊右衛門には、さらには根本からを見直すように言われてしまいます。
「あんたは1回女形のことは全部忘れな」
物心ついたころからずっと女形をやっているのに、なかなかハードルの高いことを言われてしまい惨敗のまま帰宅する惣五郎なのでした。
(悪党とのギャップ、やってるつもりなんだけどな。弁天はもっとオラオラ系で…でも大げさにやっても違うって怒られるし。キャラ設定もまだ不安定って大丈夫なのかな…)
煮詰まった惣五郎は源介を頼ってマンションに遊びに行きます。
源介とスキンシップで充電
「充電しに来た。ぎゅってして」
「なになに!?なんのご褒美?めっちゃかわいいんだけど!」
要望通りにぎゅっと抱きしめる源介に、惣五郎は甘えるのでした。
ソファに座って弁天に苦戦していることを話す惣五郎。源介は惣五郎をバックハグしながら惣五郎の話を聞いてくれます。
「大役ってやるって決まった時はうれしいけど、実際稽古がはじまるとすげーしんどいよな」
源介も勧進帳の富樫の時に熊じいにめちゃくちゃしごかれていたので、惣五郎の気持ちがよく分かるのです。
ふと惣五郎は、その時のことを思い出しました。
三文芝居に皆を付き合わせるんじゃないよ!
あの時は源介が珍しく落ち込んでいて、そんな源介に惣五郎は「気にすんな!」とか「これで終わりじゃないし」などと言ったのです。さらには「もっと俺のことを見てろ!」などとも言ったような…。
(今そんなこと源介に言われたらちょっと嫌いになるかも…。よく怒らなかったな源介)
あまり思いやりのある言葉をかけられず、自分のことばかりだったことを密かに反省する惣五郎。
(源介はあれを乗り切ったんだよな。弱音吐いてる場合か)
「今日泊まれる?」
「うん、親には言ってきた。役作りの相談に乗ってもらうからって」
ラブラブな2人は甘い夜を過ごすのでした。
そして翌日。気分転換ができて、改めて気合も入った惣五郎。とはいえ稽古ではあまり進歩がありません。菊右衛門も真顔で厳しい言葉を並べます。
「あんたが主役である以上、作品の良しあしはあんたにかかってるんだ。あんたの三文芝居に皆を付き合わせるんじゃないよ」
花恋つらね53話 感想まとめ
菊右衛門さん厳しい!孫でも当然のように容赦ないダメ出しですね。これが芸事の世界なんですよね。
しかも今回はベテランに囲まれての主役ですから、周りの見る目もこれまでとはまた少し違ってきます。
惣五郎は、もともと幼少期から女形としての素地が身体に定着しているため、やんちゃな立役を演じても、根っからの荒くれモノ!に見えるかは難しいところです。
頭ではキャラクターを理解しているつもりでも、これまでの女形として演じてきた歴史が、惣五郎を見えないところで縛っているということなのかもしれません。
煮つまりきってスランプに陥る前に、源介という恋人のところに充電に行けたのはナイスチョイスでした。頼り合って、慰め合って、癒し合って、刺激を受けながら成長する関係っていいものです。
そういう意味でも源介が一人暮らしを始めて、気兼ねなく会える部屋があるのは大きいですね。自宅以外に、安心できる居場所がひとつあるだけでも大きな支えになります。
三文芝居、とまで菊右衛門さんに言われてしまい、さすがの惣五郎もショックを受けていました。だからといって簡単に諦めることはないと思いますが、どうやって乗り切るのかとても気になります。
どんなことがあっても、その舞台の評価は主役の出来次第です。失敗したり、いまひとつ主演がパッとしなければ、決して次につながりません。
仕事でも源介の最高の相方になりたいという夢は、この舞台の出来によっては遠ざかってしまいます。
皆の前で強い叱責を受け、ずっと俯いてしまっている惣五郎が、どうやってこの大役を演じきって乗り越えるのか、ハラハラしながら見守りたいと思います。
次回は4/14発売のディアプラス5月号です。
それではまた「花恋つらね」54話の感想でお会いしましょう。
追記)54話の感想を書きました。
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