まず前回22話では、城谷さんの過去編の全貌が明らかになりました。
城谷さんは小学生のころ、城谷パパに好意を寄せる女子高生植田さんの策略によって、かくれんぼと称して父親との情事を見せられてしまいます。
何も知らない幼き城谷さんは、下半身を汚してしまい、それを気持ち悪いと植田さんに言われショックを受ける城谷さん。
それ以降、思い出したくないのにそのことを思い出しては自分でシてしまい、そのたびに手を洗うを繰り返す城谷さんは、自分を汚い人間だと思いこんでいきます。
頭に触られると、汚い自分を知られてしまうのではないか。汚い自分が人にうつってしまうのではないか。そんな恐怖から、人とも深くかかわらず手を洗い続ける日々。
大好きだったパパの手も、こんな自分を知られてしまうのではと怖くなり「触るな!」と振り払ってしまう。
そして中学の頃、ネットで知った潔癖症という症状。調べるにつれ城谷さんは、このままでいいのだと自分で自分を納得させるように、人を避けて過ごし手を洗い続け、今に至りました。
参考までにこれまでのお話の感想もどうぞ。3巻の続き、テンカウント4巻収録の19話から25話のネタバレ感想はこちら。
テンカウント19話 ネタバレ感想
テンカウント20話 ネタバレ感想
テンカウント20.5 番外編ショート2本 ネタバレ感想
テンカウント21話 ネタバレ感想
テンカウント22話 ネタバレ感想
テンカウント23話 ネタバレ感想 ←今ココ
テンカウント24話 ネタバレ感想
テンカウント25話 ネタバレ感想
ちなみに現在の最新話は25話です。5巻に収録されるテンカウント26話は、2015年12月14日発売のディアプラスに掲載なので、また読んだら感想を書きますね。
それでは以下、テンカウント23話の感想です。完全にネタバレしているので、どうぞお気を付けください。
扉絵は、人のいない美しく整備された橋の上で、ひとりこちらをふり返る城谷さん。憂いを帯びた表情で、何を思うのでしょう。
夕暮れの空を無数のカラスがいっそう寂しげです。いったい、だれに追いかけて来てほしいと願っているのか。
本当はもうずっと長い間、誰かに自分を暴いてほしい、そしてそんな汚い自分でも受け入れてほしい、理解してほしいと期待しているのでは。
いつもながら、深読みが楽しい扉絵です。
城谷さんの去った黒瀬家
本編スタートは久々!黒瀬くん登場です。
「気持ち悪い」と拒絶され、城谷さんが飛び出して行った後の黒瀬くん。追うこともせず(できず)、出ていく城谷さんの背を見送るのみ。。。
静かになった部屋で突然着ていた黒いシャツを脱ぎだす黒瀬くんは、洗濯機にシャツを放り込みシャワーを浴びはじめます。
頭からシャワーを浴びながらうつむく黒瀬くん。やはりどことなく凹んでいるように見えるのは、私の気のせいでしょうか。
城谷さんの拒絶の言葉を思い出す黒瀬くんの横顔は、普段あまり感情が表に出ない黒瀬君にしてもショックを受けている・・・ように見えます。
少し前まで城谷さんのお尻を開発していた時のアレやアレでベタベタで、黒瀬くん自身も興奮して汗ばんでいたでしょうから、着替えもシャワーも不自然ではありません。
がしかし、黒瀬くんは汗を流すこと以上に、今一度、冷静になろうとしているようにも見えます。
一方その頃、城谷家では
黒瀬家を飛び出し、うずく下半身にガマンできず公衆トイレでひとりで致してしまった城谷さん。
悔しそうにつらそうに、自宅で念入りに身体を洗いシャワーを浴びています。
ごしごしと擦りながら、そうすることで全てを忘れようとするかのごとく、懸命に身体を洗う城谷さんがまた痛々しいです。
三上きゅん出た!
そして2か月後。
一気にとんだような気がしますが、リアルでは2か月なんて本当にあっという間に過ぎていきますよね。
会社で三上くんが城谷さんを見かけ、気軽に声をかけます。気づかない城谷さんの腕をつかむ三上くん。その腕を冷たい目でふりほどく城谷さん。
城谷さんにとって三上くんだけは、まだ気安く関われる「同僚以上友達未満」のような存在だったはず。ですが、どうも三上くんに対しての態度も、今までとは少し違っていて・・・
自分のことはそんなに気にかけなくていい、と淡々と伝える城谷さん。どことなく儚げなような、危うさを感じさせます。達観しているように見せて、その下ではどす黒いマグマがうごめいているような。
そんな城谷さんに、三上くんも心配顔です。三上きゅんいいやつ。知ってた。
2か月間の放置プレイ
あの日から2か月間、黒瀬くんから城谷さんには全く音沙汰なしのようです。
オフィスで仕事をしながら、黒瀬くんを思い出す城谷さん。さすがに2か月も何事もなければ、少しは冷静になれるでしょう。
黒瀬くんが、自分を理想の人だなどと言っておきながら、追いかけてこないことを自嘲気味に笑う城谷さん。
自分の言動は棚に上げて、黒瀬くんを嘘つきだと責めているような、だけど失望しもうどこかあきらめているような、そんな表情です。
やっぱり自分を理解してくれる人なんていない、と自分自身に言い聞かせて、心の平穏をなんとか保っているようにも見えます。
しかし失望は、期待の現れ。
親しい人間関係を誰とも築かず31歳になった城谷さんですが、それでもやはり、心のどこかで黒瀬君に期待してしまっていたのではないでしょうか。
もしかしてこの人なら、本当の自分を理解し受け入れてくれるのではないか、と。
エレベーターでバッタリ
社長に、ある会社に書類を届けるようにおつかいを頼まれた城谷さん。
大型台風の接近中、カッパに傘という完全防備でも濡れてしまうような大雨の下、ある雑居ビルにまで書類を持って行きます。同じビルには心療内科も入っています。(フラグ)
無事におつかいを終えて帰ろうとする城谷さんですが、運悪く、階段が清掃中。仕方なくエレベーターを使います。
エレベーターの中で、黒瀬くんと買い物に出かけたときのことを思い出す城谷さん。しかし、途中で乗り込んできた男性の姿に驚愕します。
入ってきたのは、まぎれもなく黒瀬くん。もちろん偶然ですが、心療内科のあるフロアから乗ってきたので、黒瀬くんも仕事がらみでこの雑居ビルにいたのでしょう。
城谷さんは入り口に背を向けて、エレベーター内の鏡を見ているという状態。黒瀬くんはうつむきがちですが、城谷さんに気づいていないというには不自然です。
密室で2人きり
内心うろたえる城谷さん。まさかの2か月ぶりの黒瀬くんの登場に、動揺し緊張感MAXで早く1階に着け!と祈るように思います。
しかしそのとき、エレベーターが2階になったあたりで激しい雷音が!よくやった雷。グッジョブ雷。
全読者がこのまま2人がすれ違うなんて許せないので、ここはもう逃げられない状況を作ってしまいましょう。そうしましょう。
ふっと周囲が暗転し、唐突に止まってしまうエレベーター。そして暗闇の中から「停電?」という黒瀬くんの声。
というところでテンカウント23話は終了でした。
「城谷さんは理想の人」なんていう、大告白をした後の拒絶なので、一見クールに見える黒瀬くんですがそこは26歳の青年、普通に傷ついていてもおかしくないと思います。
そして2か月間の空白。
お互いにクールダウンする期間になったのだとは思いますが、城谷さんは相変わらず黒瀬くんを引き寄せる運を持ち合わせているようで。よしよし。
エレベーターに閉じ込められるだとか、現実にはほぼありえない漫画のような展開ですが(漫画だけど)、こうでもしないと城谷さんはもう自らは動かないでしょうし、物語としては必要な事故ですね。
なにかしらの外的要因が働かないと、城谷さんは自己完結してしまう。これまでもそうだったように。
三上くんが出てきたので、その外的要因は三上くんが作り出してくれるのかと思っていましたが、今回は雷という自然現象が背中を押してくれました。
というか、2人がまた近づく機会を作ってくれました。
また、まだ現段階では黒瀬くんという存在が、城谷さんを突き動かす原動力には成りえていないという解釈もできます。
こういう外的要因が働かない限り、城谷さんは今まで通り、そつなくドライに仕事をこなし、親しい友達や恋人も作らず誰にも理解されないまま淡々と生きていくでしょう。
自分をさらけだすことなく、感情をむき出しにすることもなく、何度も何度も必要以上に手を洗いながら。なぜなら、そうすることが一番安全だから。
だけど本当は誰かに受け入れられたい。本当の自分を知って、その上で自分を愛してほしい。
こんな自分であっても、そのままを受け入れて肯定してほしい。そして自分も、かつて父親を無条件に愛していたように、誰かを愛したい。
でも、それは怖いことなんですね。
自分のありのままをぶつける(いわゆるぶっちゃけること)というのは、誰でも怖いことです。なぜなら、拒絶されるかもしれないから。
ましてや城谷さんは、小学生の時に父親を拒絶して以来、ずっと誰にもぶつかっていくことなく、自分の中でだけ完結させてきた。それが一番安全だから。
自分の手を洗うことを、まるで拠り所のようにして、人との関わり合いを避けてきた。自分はこれでいいんだ、と思い込ませるように。
狭いエレベーターというとっておき密封された空間の中で、2人はどんな会話をするのか。
雷を怖がる城谷さんの乙女っぷりもかわいいですが、何事にもさほど(表面上は)動じないであろう黒瀬くんが、この後どう出てくるか。
絶対気づいているはずなので、すっとぼけるってことはなさそうです。ここで2人は和解するのか。それとも決裂するのか。
次回テンカウント24話も楽しみです。
テンカウント24話 ネタバレ感想
またも長い感想におつきあいいだだきまして、ありがとうございます。誰かの萌えのお役に立てれば幸いです。
追記)4巻発売されました!
その他各電子書籍サイトはこちら。ご利用の状況に応じてどうぞ。
テンカウント1巻から3巻の感想はこちら。すべてネタバレしています。しつこいようですが念のため。
テンカウント1.2巻 ネタバレ感想
テンカウント3巻 ネタバレ感想
宝井理人先生のその他のBLコミックスはこちら。
実写映画になったセブンデイズは「このBLがやばい2010」で5位受賞作です。
BLではない漫画も発売されています。2014年11月発売の、宝井理人先生の意欲作。
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