ひたな達をあっさり捨てた父親が現れ、川本家3姉妹が振り回されるというつらい状況のなか、零の結婚宣言が飛び出すというトンデモ展開にもかかわらず謎の感動を読者に与えた10巻。
零は不器用ながらも、川本家を救おうと一生懸命頑張りました。あまりにイロイロとすっとばしすぎではありますが、その姿勢が胸を打ちました。
まだ10代の高校生ながらも決めるときには決めてくるのは、普段から勝負の世界に生きているからでしょうか。
零のサポートもありいったんは引いた父親ですが、11巻ではまた非常識な言動であかり達を追い込みます。後味はあまりよくはないですが、なんとかこの一件は11巻で収束。
ひなちゃんが大変なことになった3月のライオン10巻の感想はこちら。(ネタバレ注意です)
3月のライオン10巻 ネタバレ感想 零の爆弾発言でひなちゃんが大変なことに!
電子書籍化は紙のコミックスの発売から約1か月後でした。それでは以下3月のライオン11巻のネタバレ感想です。
3月のライオン11巻 電子書籍
3月のライオン11巻 感想 ネタバレあり
先生、婚約ってどうやったらいいんでしょう?
11巻の冒頭から零がまたもトンデモ発言です。案の定、目が点になって飲みかけの牛乳を吹き出す林田先生。完全なる出落ちです。
しかし零は大真面目で、ネットで婚約の仕方を検索したりしています。こういうところが本当に純粋なんですね。
先生の言葉などもろともせず、婚約指輪を贈って他の男を敬遠するとか、そもそも学校に男子生徒が半分いるのがおかしいとか、ブツブツ言いだす零。あなたの方がおかしいよ零ちゃん。気づいて(笑)
川本家ではあかりおねいちゃんとおばさまが、零に「どんなに好きでもひなたをせかさないであげて」と言おうと家族会議が開かれる中、結婚宣言の後熱を出していたひなたが登場します。
ひなたは零の「結婚宣言」を父親を追い払うためにした零の作り話だと思っていました。ひなたもなかなかの天然と言うか純粋な子です。
普通、いくら恩のある家でも他人がそこまではしないはずですが、ひなたもまだ16歳の高校1年生。結婚なんてリアルに考えられる時期じゃないのでこの解釈にも納得です。
川本家のおいしそうなごはん
ある夜、おばさまとあかりおねいちゃんはお店を常連に任せて、林田先生たちを招いて手巻き寿司パーティをします。
常連の偉い人たちが完全に仕切って店を盛り立ててくれているのも、これまでのおばさまやあかりおねいちゃんのおもてなしがあったから。にしても会長の営業がすばらしくて笑えます。
相変わらず川本家のごはんは美味しそうで飯テロです。食卓風景もほんわかしていて、こんな雰囲気ならあかりおねいちゃんが食べ過ぎてしまうのも分かるなあ。
婚約者にストーカーがつきまとってるんです
零は大阪での対局中に、急いで東京に帰ろうとしていることを雷堂見抜かれつっつかれてしまいます。また面倒な人につかまったなあと思っていたら、雷堂さんがいろいろとやらかしてくれました。
対局中にシーンとする最近の風潮が嫌なようで、おしゃべりな雷堂さんは「若くて気に入った子をいびる」という愛情表現でここまで上り詰めてきたプロ棋士。
その顔面だけでなく、なにかと暑苦しい愛すべき棋士です。雷堂さんいいキャラしてるなー。個性豊かな棋士の中でも外見と内面のぶっ飛びっぷりが潔くて、隠れファンも多そう。(いや隠れてないか)
なんで急いでいるのか吐くまでは返さないと勝負を挑まれ、新幹線の時間を気にしながら焦る零。とうとうひなちゃんのことをしゃべってしまいます。
ショックで倒れる島田さん
しかも島田さんがそれを聞いてショックで倒れるっていう、なんて苦労性な人なんだ島田さん。零ちゃんや二階堂のお兄さん的ポジションなのに「婚約者がいる」だなんて寝耳に水でしょうから驚くのも無理はありません。
零に人生の先輩として「結婚したらもう遊べないんだぞ」とアドバイス(?)をする雷堂さんは、実はキャバ嬢に入れ込むも奥さんが別れてくれず、多額の生活費を支払っているという複雑なご経験がおありのようです。
ネチネチ言う雷堂に婚約者に会わせろと迫られ、なぜかひなたを鹿児島へ連れて行くということになってようやく零は解放してもらえました。新幹線にも間に合ったようで一安心です。
雷堂さん本当にいいキャラしてるなあ。何回でも言いたくなるくらい、ライオンの中でも個性際立つ棋士のひとりです。
もういい黙れ、ふざけんな。
零が大阪にいると思って、また川本家に近づこうと近所の店にいた父親。ですがこんなこともあろうかと川本家3姉妹たちは銀座のお店に避難中でした。
大阪から最終の新幹線に飛び乗って急いで東京に帰って来た零は、父親の居場所を予測して店を突き止め、どこまでもゲスい父親に引導を渡すべく冷静に警告します。
今後のことも考えていること。こんなことが続くようならこちらも前向きに面倒な方向(裁判)へ持っていくこと。家庭裁判所ではなく普通の裁判所で戦うことになるであろうこと。
自分には資金(稼ぎ)もあり将棋連盟などのコネ(警察官や弁護士など専門家との繋がり)もあること。そして死ぬまで戦う意思があること。
いつまでも逃げて自分で努力もせず、娘の良心につけ込んでたかろうとする父親の態度にはほんとうにイライラさせられますが、この零の発言(援護射撃)があるのは大きな支えだなあと素直に思いました。
読者みんなが言いたいことを全部零ちゃんが言ってくれてスッキリ。さすが子どもの頃から厳しい将棋の世界で、クセのある大人たちと闘ってきただけはある。ここぞという時は、零の落ち着きは頼りになります。
「お前ってほんとクズだな」捨て台詞のように零に言う父親ですが、ここは読者全員が「お前がな!」とつっこんだことでしょう。
3姉妹と一緒にひと休み
さすがに雷堂との勝負に大阪往復、父親への対応で体力気力の限界に来た零は、川本家で倒れ今夜は3姉妹と一緒に眠ることに。
川本家に零ちゃんがいてよかった。まだ完全解決ではありませんが、三姉妹+零ちゃんの4人で寄り添って眠る姿になんだかうるっときてしまいます。
翌朝、無邪気に自分の隣りで眠る(零の一方的な思い込みの)婚約者のひなたに動揺する19歳の零。こんな日もあっていい。零はあんなにがんばったし、あかりおねいちゃんもひなたも頑張ったんですもんね。
その日は皆でモフバーガーへ。幸せな時間すぎて、またうっかりうるっときそうになります。しかし…。
父親問題は決着
モフバーガーの帰り道、夜は餃子パーティにしようと幸せいっぱいで話していると、そこへ父親がまた待ち伏せしていました。しかも今度は幼い娘を連れて。
腹違いになる妹を連れ「最後のお願いに来た」と言う父親に、あかりおねいちゃんとひなたが意を決して告げます。
「おとうさんとは一生一緒に暮らせない。私たちは3人でいい!」
零が「僕が入ってない!4人でしょう!」とかなんとか、ここで!?というタイミングで入ってきますが、娘にそこまで言われてようやく去って行く父親の後姿にあかりもひなたも泣きながら帰宅します。
その後はコトの顛末を聞いて慌ててかけつけたおばさまと一緒に皆で食卓を囲みました。
あの娘さんも可哀想な気がしますね…この時のことはきっと大人になっても記憶の片隅に残るのではないでしょうか。まっとうな父親として今度こそあの幼い娘さんを泣かさないでほしいところです。
あかりおねいちゃんがダウン
が、ここまで川本家の長女としてひっぱってきたあかりおねいちゃんが体調を崩してしまいます。しっかりしているというよりは、しっかりしなきゃでここまで気を張ってきたあかりおねいちゃん。
妹たちの世話を焼き三日月堂を手伝い、銀座のクラブでも働いて川本家の母親となって生きてきたあかりおねいちゃん。少しは休息が必要です。
零はそんなあかりおねいちゃんを見て、皆が離れずに暮らす方法を考えて「二世帯住宅」とか「リフォーム」についての専門書を読み漁ります。またひとりで脳内暴走する零ちゃん(笑)
しかもそれをスミスさんたちに見られるという痛いオチつき。そして閃いたのは、あかりおねいちゃんにも生涯のパートナーが必要だということ。棋士たちのスペックをグラフにしたりとがんばる零。
11巻はここまででした。
「ファイター」は零の過去話
そして11巻の最後には零が小学生の頃の短編「ファイター」もついています。1巻より前のお話です。零ちゃんの過去話は重くてつらいものが多いですが、過去があって今がある。
今は同じ光の方向へ進んでいく仲間に恵まれている零の成長に、その努力とトライ&エラーの繰り返しに、じんわりとくるものがありました。
人はいきなりは変われない。少しずつ少しずつ地道な努力の積み重ねによって、ふと顔を上げたらまわりに仲間がいるものなんですね。きっと将棋界のみならず、どんな勝負の世界にも言えることでしょう。
3月のライオン11巻の感想まとめ
本編だけでもなんだか胸がいっぱいです。とにかく今回でもうあの捨男、じゃなくて父親問題も一応のケリがつきましたし、それだけでもヨシとしたいと思います。
あかりおねいちゃんは心配ですが…。雷堂さんとの約束は果たされるのかな。あかりおねいちゃんの休養のためにも、雷堂さんのいう鹿児島へ皆で行ってリフレッシュとか、いいんじゃないでしょうか。
11巻の最後で零ちゃんがまた暴走していましたが、あながちこれは間違ってはいないかもしれません。
今まで家事育児に追われて恋人を作るどころではなかったでしょうが、あかりおねいちゃんだってまだまだ若いしこれから恋だってもちろんできます。本人はモモの母親業に専念するつもりのようですが。。。
でもモモが成人してそのことに気づいたら、モモだって罪悪感というか自分のために姉の幸せが犠牲になったとかで悩んじゃうと思うし、ここはきっちりあかりおねいちゃんにも幸せになってもらいたいです。
別に生涯の伴侶を得るとかでなくても、年相応のおしゃれとか青春とか遊びとか勉強とか、あかりおねいちゃんがやりたいことが自由にできるようになっていくといいな。
私はあかりおねいちゃんには棋士の誰かよりも、林田先生なのかなと思いますがどうでしょう。というより今のところそれっぽいのは林田先生しか見当たらないような。(追記:と思ったら12巻で思わぬ伏兵が出てきました!あの人です)
今まで漫画の中で棋士の誰かであかりさんと面識があっていい感じな人っていましたっけ?二階堂はそういう対象とはちょっと違いますよね。
林田先生は36歳独身ということだし、あかりおねいちゃんにソワソワしてたし流しそうめんでも手巻き寿司パーティでも面識はあるし、似合いそうだなと思うのですが。
誰であってもあかりおねいちゃんが幸せになるならそれでいいので、そのあたりの大人組の恋模様もとっても気になります。
12巻もまた楽しみです。
追記)12巻の感想を書きました。
3月のライオン12巻 ネタバレ感想 あかりさんのお相手は島田さんか林田先生か考えてみた
羽海野チカ先生のコミックス
前作のハチクロも名作中の名作です。
海羽野先生の初期の頃の短編がつまった作品集。ひなちゃんのもとになったとされる女の子も登場する短編集です。
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