冥花すゐ先生の「イトウさん」のネタバレ感想です。

殺し屋と娼夫というダークな世界観なの、好みが分かれる作品かもしれません。キター!って思う人と、うーんって思う人に分かれそう。私はキター!のほうで大興奮でした。刺さりました。

冥花すゐ先生のBLデビューコミックですが、お名前すらなんてお読みするのか分からず思わずググった私の国語力。「クラカスイ」先生とお読みするそうです。

デビュー作がこの作品だなんて最近の新人さんはほんとすごい。また実力のある人が現れたなという印象です。

恋するインテリジェンスの丹下道先生などもそうですが、デビュー作から話題騒然になったりヒットを飛ばしたりとかすさまじい才能がまだまだ世の中には眠っているかと思うとワクワクします。

イトウさん 電子配信


イトウさん

イトウさん

イトウさん


イトウさん 感想 ネタバレあり


残酷な世界に咲き乱れる恋の花


感情を持たない殺し屋のI(イトウさん・攻)と、娼夫のキョウスケ(受)が出会うところからお話は始まります。

闇社会の中で選択肢も何も与えられず絶望的な環境の中、ただただまわりの大人たち利用されるだけの人生を送ってきた2人。

毎週決まった曜日にキョウスケのところに通ってくるイトウさんは、キョウスケと話をするだけで手も足も出さずに帰って行くという不思議な客でした。

殺し屋「I」はこれまで殺戮に明け暮れ多くの人を手にかけてきましたが、キョウスケに「イトウさん」という名前をもらい、キョウスケの存在が日に日に大きくなっていきます。

キョウスケのほうも他の客とは違うそんなイトウさんに心惹かれていきます。お互いが出会ったことによって、これまで持つこともなく持つことすら許されていなかった「人間らしい感情」というものを感じ始める2人。

ある時イトウさんが娼夫をやめて好きに生きるようにとキョウスケに大金を渡しますが、キョウスケはそんなものが欲しいわけじゃない。

ただイトウさんが欲しい。イトウさんのそばにいたい。

娼夫として子どもの頃から大人たちに弄ばれてきたキョウスケが、イトウさんをただただ純粋に欲するこの気持ちが2人の愛をいっそう困難なものにしていきます。

これまでの暗黒の世界に生かされ人形のように操られ、自分自身の意思や想いが尊重される機会などなかった2人の不器用さがすれ違いを生んでしまって切ないです。

その男の名は「イトウ」さん


男娼のキョウスケが危険な客を相手にした際、イトウさんがその相手を殺したことから2人は逃亡を図ります。

愛の逃避行といえば聞こえはいいですが、古今東西、愛し合う2人の逃避行には哀しい終着点があるのが世の常。幸せはそう長くは続かず2人ともイトウさんのボスに捕えられてしまします。

絶望的な状況の中、ボスに記憶を操作されたイトウさんがキョウスケを手にかけようとしてしまいます。しかし狂気の中でも愛情に勝るものはありませんでした。。。

そして5年後。

バーテンダーのキョウスケは記憶を無くし、そこへひとりの男が通ってくる。彼の名イトウ。

この2人なら記憶を無くそうとも何度でも巡り会えばまた愛し合える。そんなふうに信じてみたくなる終わりかたでした。

バッドエンドではないですがハッピーエンドかも分からない、しかしはっきりとした描写はありませんでしたが希望の持てるラストです。

1本の映画を見終えたような満足感でした。

札束の上のエロス


イトウさんが本気を出して(?)ようやくキョウスケと結ばれるところで、札束の上というシチュエーションでヤるんですがこれがまあエロい。

男とヤることなど日常だったキョウスケが、はじめて好きな人とヤることに戸惑ったり恥じらうのがかわいいわ妖艶だわなまめかしいわエロいわで大変!イトウさんもきっと大変だったでしょう。

下まつ毛が長い男とかどうなの?とか思っていましたが(失礼)男になったイトウさんは色っぽくてかっこよかったです。

イトウさんはどやら自分の組織のボスとも関係があったようなので、そのへんはスピンオフとかでちょっと読んでみたいかな。あのボスが下になってたのか。どきどき。

同時収録の短編「Cage」は、教師と生徒の歪んた病み系SMです。こちらは痛々しくひりつくようで、しかも最後にひっくりかえる(!)という展開で、こわっと思いながらもニヤリと読めました。

感想まとめ


経験者といっても娼婦とか殺し屋ではありません(あたりまえ)。これまで病み系やダーク系のお話をいくつか読んできてそういう暗黒世界のお話もいけるクチという人ならぜひ勧めたいと思います。

「闇社会から生まれた純愛」という謳い文句に偽りはなし。ぐっとこの世界に引きこまれるお話しでした。

バイオレンスで流血や殺人などありますが絵柄のためかそこまでエグいという感じでもなく、お話としておもしろかったです。

さすがにはじめてBLを読む人にはアンダーグラウンドすぎておすすめはできませんが、ほどよくBLを読んできた人ならきっと楽しめるのではないでしょうか。

裏稼業モノ独特の後味の悪い暴力や流血がありながらもブレないドラマ性や、最後までバッドエンドなのかそうでないのかが微妙なラインが保たれていて読みごたえがありました。

傾向としてはらだ先生の病み系のような世界観が大丈夫という人とはとても相性がよさそうです。

こうなると冥花すゐ先生の2冊目が気になりますね。次も同じようなダークな路線で攻めてくるか、意外とピュアッピュアBLで引き出しの多さを見せるかラブコメ系で意外性を見せてくるか。

次回作も超絶楽しみな作家さんになりました。

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